映画「The Mountain Between Us」:素敵な2人を惹き合わせたのは命の危機

よい映画を作るのも、やっぱり素材から

一年の季節も押し迫ってくると、ハリウッドとしては、いわゆるアンサンブルキャストによるホリデー映画の準備に余念がない事でしょう。

時代を代表する俳優を、各年代から取り揃えつつも、彼らを定型的シナリオ構造の中に当てはめて制作する、観客の脳にはストレスを全くかけないとうい映画が、こういったクリスマス周辺のドラメディになります。

言ってみれば、料理の腕試し番組で出てきたテーマが普通のネギであっても、それにバフンウニやら伊勢海老とかA5和牛まで盛り込めば、どうやってもグルメになってしまうという、その同じ原理を映画に適用したもの。

とは言うものの、その晩さんにありつくには、まだ5,6週間ほど季節が早すぎますので、今公開される映画の中での材料は、まだまだ厳選され絞り込まれたものとなります。

そして、控えめな中でも、ちゃんとお金を払っても納得できる素材を組み合わせた作品は、やはり特筆されるべき。おそらく、そんな映画の一本が、今回ご紹介する「The Mountain Between Us」です。

この映画、主演にはイドリス・エルバとケイト・ウィンスレットという、大変魅力的なキャストを用意しただけでなく、その2人の関係性が、物語のほぼ全てを支えるという一作らしいのです。 【続きを読む】 “映画「The Mountain Between Us」:素敵な2人を惹き合わせたのは命の危機”

大人の自分探しは意味深い:映画「Brad’s Status」について

何も不足はないはずの自分なのに

成人年齢の人の多くは、「いつかは取り組もうと思いながらも20年くらいお蔵入りになってる課題」を、ひとつくらい心の深い所に持っているものです。

人は、何かを手に入れるために何かを手放すもの、だそうですので、現在のあなたの幸福な生活も、遠い昔に諦めてきた何かのおかげで手に入れたと言っても、過言ではないでしょう。

でも、社会的な幸福と心の充足が必ずしも一致しないのが人の常。芸能人や国会議員といった著名人が不倫に走ったりするのは、あきらかに、失ったり諦めてきた何かにより心に開いた穴を塞ごうとするためです。

あるいは、人生についての後悔とか愚痴をこぼして過ごす場合もあるでしょうが、どちらにしても、そういった自滅的な行為は、上手くかかれたドラマのシナリオくらいでしか、満足の行くあがないへ辿り着く事はありません。

さて、今回紹介する映画、「Brad’s Status」の主演の男性は、社会的にも価値のある仕事と文句のつけようのない家族を持ちながら、自分の人生についての心残りが吹っ切れなくて困っているのだそうです。

自慢の息子が大人への扉を開けようとしている今、彼もまた、自身の人生に結論を出す必要を感じているらしいのですが、そこに辿り着くには、やっぱり一連のドラマが必要です・・・ 【続きを読む】 “大人の自分探しは意味深い:映画「Brad’s Status」について”

映画「バリー・シール/アメリカをはめた男(American Made)」の気になる評価

犯罪と陰謀と家庭生活

その男は、命をかけて娘を守る父親の顔を持ちながら、正義の秘密エージェントでもあり、同時に冷血な暗殺者でもありつつ、若手の敏腕弁護士の顔も持っています。

さらに彼は、NASCARのレーシングマシンを時速300キロで走らせたり、空軍のエリートパイロットとして、F-14トムキャットによるドッグファイトを演じて見せ、とても活動的な人物で有る事を伺わせもします。

一番最近の彼は?、と言うと、ルイジアナ州バトンルージュに美しい妻との平和な生活を維持しながら、南北アメリカ大陸をまたにかけ、大量のマリワナやコカイン密輸で大儲けしたようです。その一方で政府機関へ麻薬組織の情報を流し、その摘発にひと役買って罪を逃れたりしたとか。

まぁ、全部シナリオの上の話ですけどね・・・

そんな、ハリウッドにおけるカリスマの代名詞とも言える人物こそ、他でもありません、トム・クルーズ師匠。

そのクルーズの最新作は、「バリー・シール/アメリカをはめた男(American Made)」。前出の、密輸組織と政府機関の両方を一時だけ手玉に取って見せた伝説の男を描く、娯楽アクションといった風情の一本です。

しかし、クルーズ兄さん、どんな具合に母国を‘はめた’のでしょうね? 【続きを読む】 “映画「バリー・シール/アメリカをはめた男(American Made)」の気になる評価”

ホラー映画「フラットライナーズ(Flatliners)」:あっちの世界を垣間見たエレン・ペイジ

全ての終わりの先には何がある?

世の中で、「死」について直接的に言及する事が許されているのは、医者や、一部の学者、そして宗教家くらいのものです。

人が、その人生を終えるという事は、それほどに厳格であり、ある種、絶対的な事象だからです。

そして、この世での命が有効期限を終えた後は、本当に自分という存在は消えてしまうのか?、あるいは、その先にも続きがあるのかは、古くから続く根源的な論争でもあります。

まぁ、死後の世界の実体が誰にも確認できないものなので、諸説紛々とするのは仕方ないところですが、もうちょっとライトに、入り口の部分からこの問題を探求する事もできます。

それが、臨死体験という現象。

世界中で臨床的な事例の報告もあり、かなり現実的な調査・研究が行えそうなのが、人が死ぬ一歩手前で何を体験するかという、このテーマなのです。

同時に、「現実的」で「興味深く」て「ちょっと怖い」、そんな出来事は、そうです、ハリウッド映画の題材としても超ぴったりではありませんか。

と言う訳で、1990年には、この問題が「フラットライナーズ」という娯楽スリラーとして、映画化されました。

今回ご紹介するのは、その21世紀版リメイク作。あっちの世界を覗こうと危険な実験に臨む医学生を、「JUNO/ジュノ」や「X-MEN」でおなじみの、エレン・ペイジが演じています。 【続きを読む】 “ホラー映画「フラットライナーズ(Flatliners)」:あっちの世界を垣間見たエレン・ペイジ”

キルスティン・ダンストの幻想的ドラマ:映画「Woodshock」の評価

幻惑の森に溶けるキルスティン・ダンスト

神様、あるいは、超古代に地球を訪れたエイリアンの手によって、人類には知性が与えられました。

しかし、知恵がつくという事は、生きている限り悩みや苦しみがつきないという、宿命も背負わされたようなものです。絶対に変える事ができないと分かっている事実にさえ、人の知性は解決を求め、終わりのない苦悩にさいなまれるのです。

そして神は、そんな人間を苦しみからひと時だけ救うために、例えば、酒とかタバコ、ギャンブルやドラッグといった癒しも用意してくれました。

でも、たった一時の救いは、問題の影響をただ大きく広げるだけです・・・

さて、今回ご紹介する映画は、ファッションブランドの‘ロダルテ’を主宰する、マリービー姉妹が、脚本と監督を務めたという話題の一本。

そして、キルスティン・ダンストが、逃れようもない罪悪感の苦しみから、破滅的な癒しに手を出してしまう女性を演じているという、なかなか刺激的なストーリーなのだそうです。 【続きを読む】 “キルスティン・ダンストの幻想的ドラマ:映画「Woodshock」の評価”

男のくせに女に負けるなんてあり得ない??:映画「バトル・オブ・ザ・セクシーズ(Battle of the Sexes)」について

つぶやきアカ、停止ギリギリのテーマ!?

僕を含めた多くの日本人は、この映画のタイトルである「バトル・オブ・ザ・セクシーズ(Battle of the Sexes)」を読んだ時、倦怠期に入った夫婦を描くR指定のコメディ映画を想像すると思います。

あるいは、もっとグっとくる内容を想像するかもしれませんが、このタイトルの最後の単語に、あまり気を取られてはいけません。

この映画、実際には、現代社会の根幹をなしている性別による格差や差別を扱いつつ、さほど重くならない風に仕上がった、実話ベースのストーリーなのだそうです。

そぞれの「Sex」から代表され、この物語で文字通りの「Battle」を演じるのは、スティーヴ・カレルとエマ・ストーン。

この2人の戦いは、全米どころか全世界にも大きな話題を提供するのだそうですが、一体、その中身とは・・・? 【続きを読む】 “男のくせに女に負けるなんてあり得ない??:映画「バトル・オブ・ザ・セクシーズ(Battle of the Sexes)」について”

ダーレン・アロノフスキーのスリラー:映画「Mother!」の評価

天才監督が再び全米を震撼させる

ダーレン・アロノフスキー脚本・監督でジェニファー・ローレンス主演の映画、というだけで、ゴシップ系のニュースには十分ネタを提供し得るのかもしれませんが、そこへ、エド・ハリスとミシェル・ファイファーまで加えたら、一つの映画としても何かが起こりそうな予感が漂いはじめます。

そんな一作が、今回ご紹介する「Mother!」。

‘マザー’と言うと、すべての愛や包容力の象徴となる言葉ですが、時として映画の中では、歪んだ人格や狭量や過去のトラウマなどの象徴として使われる存在です。そしてどちらかと言うと本作では、後者のイメージが近いのかもしれません。

とにかく、2017年のヴェネツィア国際映画祭でプレミア上映された時点から、色々な所でバズられている話題作が、この「Mother!」だという事ですね。

アロノフスキー監督はこの新作によって、再び米国映画界を震撼させる事になるのでしょうか? 【続きを読む】 “ダーレン・アロノフスキーのスリラー:映画「Mother!」の評価”

ピーター・ディンクレイジが探す記憶の鍵:映画「Rememory」について

記憶は消すものではなく見直すもの!?

この宇宙に、「記憶」というものほど神秘的なものはないかもしれませんね。

それは、新聞とか辞書のように情報を平面的に並べただけのものではありません。日常的に機能している僕らの意識とは、また別の次元に一種の格納領域があって、その領域には、僕らが生まれてから体験したすべての事象が、相互に連結して登録されているのです。

それは、複雑に絡み合い影響しあって、僕らの人格までも形成しています。だから、人にとって正しい経験を積み重ねる事は、実に大切なのです。

一方、それが過ちの記憶であっても、死ぬまで永遠に消える事がありません。もし、その記憶を物理的に取り出して検証する事ができたら、人間は秘密を持つことも出来なくなり、人生の意味も変わってしまうでしょう。

そんな話をモチーフにして展開するSF系スリラーが、今回ご紹介する「Rememory」。主役を演じるのは、「ゲーム・オブ・スローンズ」のピーター・ディンクレイジです。 【続きを読む】 “ピーター・ディンクレイジが探す記憶の鍵:映画「Rememory」について”

リース・ウィザースプーンの離婚コメディ:映画「Home Again」の評価

映画製作、最良の語り口がベストではない!?

映画でもなんでも、それが成功するためには、より多くの人からの共感を勝ち取るのが大切、なのだそうです。

ただ、一つのストーリーが十分な集客力を発揮するには、そこに一定の驚きも必要。マジョリティの人が無条件に受け入れるアイテムを1から順に並べるだけでは、新たに執筆するという意味が無くなってしまいますからね。

かくして、作家の方達は、次の作品に新鮮なスパイスを聞かせようと頭を捻るのだと思いますが、その味付けが受け手側の大衆にどう解釈されるか、というのも運任せな訳で、能力や才能がすべて備わったプロフェッショナルの方であっても、時として的を外す事があるのです。

さて、その‘解釈のされ方’という意味において、意図した以上に高いハードルが設定されてしまい、その作風以外の部分で解釈・評価されているのが、ここでご紹介する「Home Again」という映画かもしれません。

映画監督ハリー・マイヤーズ・シャイヤーのデビュー作である本作は、リース・ウィザースプーンが人生と恋愛のやり直しを模索する姿を軽やかに描く、明るいロマンティックコメディ、との事です。 【続きを読む】 “リース・ウィザースプーンの離婚コメディ:映画「Home Again」の評価”

レイク・ベルが夫婦生活に疲れた2人に捧げます:映画「I Do … Until I Don’t」の評価

結婚はタダのしきたり!?

人は皆、自由であると言いつつも、結局、自分が生まれるずっと前に決定された社会のしきたり、例えば結婚なんていう制度に縛られ、同時にそれに依存しないと生きていけません。

まぁ普段は、そういった縛りの中で適当に妥協をしながら、上手い事やってゆくのが、一応の幸福を手に入れる秘訣でもあります。その典型なのが結婚生活でしょう。

同時に、すべての先進国に住む多くのカップルが、我慢によって結婚生活を守っているというのも、なんだか皮肉な図式ではあります。

そして、世の中の皮肉な実情や問題は、ひょっとすると面白いストーリーの出発点になるかも。という事で、結婚生活に関する面白おかしい(そして皮肉な)コメディー映画が、毎年のようにリリースされる訳ですね。

さて、その一本と思しき、今回ご紹介するコメディ、映画「I Do … Until I Don’t」は、監督・脚本・出演の全てをこなす才女、レイク・ベルが、結婚という文化の問題に切り込む風刺ドラマであるそうです。 【続きを読む】 “レイク・ベルが夫婦生活に疲れた2人に捧げます:映画「I Do … Until I Don’t」の評価”

ロバート・パティンソンが大都会の裏社会を走る:映画「グッド・タイム(Good Time)」について

キャリアメーキングはご心配無用です

トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part2」が2012年の作品ですから、世界中が青年バンパイアと美少女の純愛色に染められていたあの時代から、もう5年が経っているんですね。

5年と言えば、大抵の人が何かを成し遂げられる時間ですし、仮に青白いメークとローコストかつ高性能なVFXが無かったとしても、思春期の吸血鬼の悲哀を見事に表現しきっていただろう、あの、ロバート・パティンソンさんなら、「何か」よりもっと良い「ナニカ」が達成できた事は、言うまでもないでしょう。

ざっと数えると、「トワイライト」後に6本程の映画に出演してきたパティンソン。中には、あのデヴィッド・クローネンバーグが監督をした「マップ・トゥ・ザ・スターズ」なんていう作品もありました。おそらく、ライトノベルの人気にあやかる軽い娯楽の世界から、本格的なドラマ俳優へと転身してきている段階だと思われます。

そんなロバート・パティンソンが、ニューヨーク市クイーンズ地区の裏社会を行く、あやうい(ひょっとして無軌道な)青年を演じているのが、今回、ご紹介する「グッド・タイム(Good Time)」、という、ファンタジー色ではなくリアリティ感が強いドラマなのだそうです。 【続きを読む】 “ロバート・パティンソンが大都会の裏社会を走る:映画「グッド・タイム(Good Time)」について”

神の光は地のめぐみを通じてあたえられん:映画「オール・セインツ 幸せのはじまり(All Saints)」について

信じなければ地獄行き、というのではちょっと困ります

大抵の宗教というのは、超自然的な奇跡を起こしたとされる何かが、その信仰の対象となっていますよね。

信仰心のある人は、天の雲の上に居るとされる存在を全身全霊で信じぬく事で、いつの日か自分の身にも同じ奇跡がもたらされると期待する訳です。

当然、真摯な信仰心は、その人の心にとって大きな糧となる事は確か。だとしても、現実の生活の中にある深刻な問題の方に、直接的な答えをまったく与えないというのでは、やっぱり、信仰されるものとしての存在感が薄くもなります。

本来なら、多くの人に与えている教えの中に、心と物質、両面の折り合いのつけ方も語ってくれるべきだと思います。

そんな意味でいくと、ここでご紹介するキリスト教系の映画、「オール・セインツ 幸せのはじまり(All Saints)」では、大赤字でつぶれそうな教会を受け持った牧師が、その苦境に立ち向かい、教会ばかりか他の多くの困窮する人達も同時に救済したという、実際に起こった本物の軌跡を描いているのだそうです。 【続きを読む】 “神の光は地のめぐみを通じてあたえられん:映画「オール・セインツ 幸せのはじまり(All Saints)」について”