ハリウッド重鎮の愉快な激突!?:映画「Just Getting Started」の評価・あらすじ

予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • Just Getting Started
    • ジャスト・ゲッティング・スターテッド(原題)
  • 制作:
    • 2017年 Broad Green Pictures / Endurance Media / Entertainment One…他

ベテランが活躍するフィールド

飲み会の席になると、焼酎のお湯割りが2杯くらい入った上司が、「俺も昔はワルだった」という武勇伝を繰り返し語るので困る、と思っている人も結構いらっしゃるでしょう。

ベテランの人々の口から出るそういった話の殆どが、ただの盛り過ぎた空想だと言う点は横に置いたとしても、そのプロットが何時もありきたりで、ウィットもミステリーも含んでいないのは、本当に困ったものです。

ですが、年齢が上の人が持つ強みというのは、過去という時間をリアルに体験したという事にあるのでしょうね。

若い層の人間が生きている、「今という未来」では思いもよらない事を、古い時代の人間達は当たり前のように行っていた・・・、その事実は、1つの物語にさえ成り得るものです。

そして、ロン・シェルトンのような映画製作者であれば、クリスマスを迎えた定年退職者のための高級リゾートで、そこで暮らすベテラン達の過去がちょっとした事件を引き起こす、という話を面白く書き上げてくれると期待も出来ます。

加えて、21世紀初頭のハリウッド映画界でも、その名前が特別な重みを持つ2人のベテラン俳優を起用して、そのプロットを映画化したら、それは格別な味わいを持つ作品となる事間違いなし、なはず。

かくして出来上がったのが、ここでご紹介する映画「Just Getting Started」というクライム・アクション・コメディという事らしいです。

あらすじ

カリフォルニアはパームスプリングスにある、居住型の高齢者施設「ヴィラ・カプリ」。

恵まれた気候とレクリエーションに恵まれた、この施設を取り仕切っている男性が、デューク・ダイバー(モーガン・フリーマン)。自身も入居者でありつつ、実質のマネージャー役も務めている彼には、施設の誰もが称賛を惜しみません。

デュークは、マーガライト(グレン・ヘドリー)、リリー(エリザベス・アシュリー)、そしてロベルタ(シェリル・リー・ラルフ)ら、同じく入居している女性達とも上手い関係を築いているようで、引退後の日々もますます充実、と言ったところ。

そんなある日、この施設に新しい仲間がやって来ます。彼の名前はレオ・マッケイ(トミー・リー・ジョーンズ)。到着早々、デューク専用に確保されている駐車スペースに堂々と車を止めたりして、なんだか、波乱の予感をまとっての登場です。

話を聞くと、どうも軍とか連邦捜査局とか、そんな方面のキャリアが有るらしいレオは、この施設内のヒエラルキーに縛られるつもりも無い様子で、ポーカーでの勝負をはじめとして、デュークと競い合う事にも躊躇しません。

なんだか面白くないヤツが来てしまった、と思ったその矢先、デュークに更なる問題が降りかかりました。施設の親会社が、運営状態を確認して改善するため、事業仕分け担当のキャリアウーマン、スージー(レネ・ルッソ)を送り込んできたのです。

なかなかな美貌の持主であるスージーには、まず、レオが関心を示しましたが、これまたデュークも、後れを取ってはならじとばかりにアピール合戦へ参入します。

しかし、いい歳した大人達の恋のから騒ぎ、が進行する中、もう一つの脅威がデュークに迫っているのを、一同はまだ知りません。

実は、デュークは、証人保護プログラムで守られている人物で、ギャング専門の弁護士だったという過去の持主なのです。そして、その時に裏切った連中は、未だに彼への復讐を諦めてはいません。

様々な人間関係のテンションと、過去の怨恨のるつぼと化した高齢者向けリゾート「ヴィラ・カプリ」。果たしてデュークは、その安定を守り切る事が出来るのでしょうか?

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • ロン・シェルトン
  • 脚本:
    • ロン・シェルトン
  • 制作:
    • ジョン・マス
    • アラン・シンプソン
    • ビル・ガーバー
    • スティーヴ・リチャーズ…他
  • 出演:

ベテラン俳優を起用して描くコメディ、その気になる評価とは?

完全に大人達が主役であるこの映画ですが、レーティング的には、上手い事PG13に収めている一作でもあります。

この辺りは、クリスマスシーズン公開のメジャー作には、ファミリー層を取り込める要素が必要だという、配給側の大人の事情も働いているのかもしれません。

逆に言うと、本来、存在したであろうスクリプトのページの多くが、ポストプロダクション段階で削り落とされ編集室の床に打ち捨てられただろう、との想像もしたくなります。

まぁ、どんな映画にもディレクターズカット版は有り得ますから、それがどんなものになるとしても、本作のリテール版リリース時はその編集が観れたりすると面白いですよね。

うまく行かなかった自己パロディ

とにかく、モーガン・フリーマンとトミー・リー・ジョーンズ、そしてレネ・ルッソ達が、それぞれの典型的な役どころを演じているというのが、この映画の1つの売りになっているのは確かな様です。

という訳で、上手くすれば本物の映画ファンや、この文化に詳しい批評家の人達の心の琴線を、愉快にかき鳴らす事もできるはずなのですが、本作には、

「2人の男が私を取り合うなんて初めての事じゃないわ。本作『Just Getting Started』にあるレネ・ルッソのセリフである。そしてこれが、この映画の中で最も笑える言葉なのかもしれず、同時に、(過去の映画と引っかける意味において)1つの隠喩的ジョークともなっている。この無理やりにロマンチックなおふざけ話である本作が、ロン・シェルトン監督の過去の作品を感傷的な形で再現している関係上、そういったユーモアでさえも自滅的に響いてしまう。本作のキャストには、笑いと個性を提供する申し分のない役者が揃っている訳で、これが酷い出来になる可能性はとても低いと思われるが、実際、色々と考えを回す気にもならない程にダメな仕上がりなのが本作である。彼らスター俳優達の魅力と仕事ぶりをもってしても、ここでのジョークは何時も不発に終わり、場面はきしみ音を発してつまづいたりするのみだ。この、無視されるか直ぐに居なくなるべき作品『Just Getting Started』は、ロン・シェルトンの映画を飛行機内で見た事のある誰かが、そのプロットを暗唱しなおしている様に、スローでだらだらと長い一作である。(The New York Times)」

、と、ネガティブな評価が書かれています。

長たらしく不自然

もともと、クリスマス前に公開されるアンサンブルキャスト作品は、ストーリー自体も定型的なロマンチックドラマにしか成り得ず、結局、そこに顔を揃えた個々の俳優のファン達に贈るプレゼント、という役割がメインなのだと覆います。

だから、このシーズンにリリースされる作品に、あまり厳しい見方をする事自体が無理があるのですが、この映画については別の所で、

「悪い出来の映画のいくつかは、苛立ちと憤怒を沸き立たす原因となり、あるいは、業界からの冷笑的かつ軽蔑的な批評を得るものだ。そして、本作『Just Getting Started』の様にかったるい駄作は、完璧に無益な何かのために、どれ程の時間と予算そして才能が浪費されたかを思い起こした時の、言い様も無い悲しい気分をも引き起こさせる一本である。やたらと長たらしく不器用で不自然、そして酷く退屈なだけの無益なこの作品は、この領域の中で最悪な何かを明らかにする映画だと言えよう。あえて良い点を上げれば、ここでの役者がかつて行った仕事について、今でも抱かれている尊敬の念が、感傷的な親近感を観客から引き出すという点であろうか。(Variety)」

、との評価が書かれています。

明確にならない方向性

日本と同様に、欧米社会も高齢化していますし、それは逆に、各業界の中に元気なベテランが増えている事も意味します。

演技者としてだけでなく、ハリウッド界隈のビジネスにも詳しいと思われる大物俳優は、おそらく、出演するどんな作品の世界にも溶け込んでくれるはずです。

したがって、この映画「Just Getting Started」においても、微妙で細いライン上で上手くバランスを取って、彼らの手で作品をまとめ上げてくれる事が望まれるのですが、批評家の目から見た時、

「オスカー受賞俳優、モーガン・フリーマンとトミー・リー・ジョーンズの初共演であれば、観客を歓喜させるに充分なそろい踏みであるはずだし、ロン・シェルトンの様に実績ある監督の手に寄るのなら、ますます期待感は大きいはずだ。だが残念な事に、本作『Just Getting Started』は、オスカーのノミネーションを受けた、あのロン・シェルトンの仕事とは呼べないものだ。これは、定年後の人が属するコミュニティ内の関係性か、あるいは、一番を子供の様に競い合う2人の成人男性を描くのか、はたまた、自分への復讐から逃げられない誰かを描く犯罪映画なのか、シェルトンはその目的が見えないまま脚本を書き上げてしまったのだ。この中の全てのセリフには、いかに実力ある役者達が語ったとしても、ニュアンスを与えられるだけの微妙さも場所も存在していないのである。(Los Angeles Times)」

、と言う様に捉えられてしまった様です。

だとしても、主演の2人のオジサマが発揮する、特別な愛嬌と言うかユーモアからは、悪くないオーラも出ていそうに感じるのですが、どうなのでしょうか?

貴重な経験だんになら、耳を傾けて・・・

昔とった杵づか、なんて表現もありますが、杵なんてもの自体が21世紀の今では見る事すらない遺物です(そういったのは、スマホとかでピポパすると完了するのでしょう、たぶん^^)。

しかし、そんなご時世になった今でも、依然として人間社会の根底を支えているのは情報ではなくノウハウです。だから、超便利な道具がなくとも色々なモノを作っていた、古い人達の話が持つ貴重さは、時代を超えて存在してゆくものなのです。

ハリウッド界隈で言えば、撮影後にコンピュータ処理で画像修正する事など考えられもしなかった時代に、演技やプロダクションデザインを勉強した人の知識は、未だに生きていると言えるでしょう。

そういう話は、可能な限り傾聴するべきです。

とは言え、「俺も昔は荒れたモンだぜ。」なんて繰り返すベテランさんとは、あんまり飲みに行きたくはないですけどね。

ではまたっ!

参照元
The New York Times
Variety
Los Angeles Times

ジェームズ・フランコと最低の駄作:映画「ザ・ディザスター・アーティスト(原題)」の評価・あらすじ

予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • The Disaster Artist
    • ザ・ディザスター・アーティスト
  • 制作:
    • 2017年 New Line Cinema / Good Universe / Point Grey Pictures…他

出来が悪いから愛される

議員とか芸能人の、ほんのちょっとの言い間違いやワードチョイスの悪さ、はたまた、声色の使い方までが、全社会的な炎上を巻き起こす最近の日本社会です。

そんな様子を見ていると、この世界に存在できるのは、一点の汚れもなく理論的に完璧なプロポーションを持ったものだけ、と誰かが主張しているようにも感じます。

でも、その反面、ルックスなどが若干以上にデフォルメしている動物とかキャラクターが、ブサかわ、キモかわ、と人気を集めたりするので、これまた、人の価値観の多様さを再認識させられる、興味深い事柄ともなっているのです。

まぁ、完璧に均整の取れたモノとかヒトだけで、自分の周囲を固めるのも悪くありませんが、それでは変化も無いし、選択の幅が狭くなってしまうのも事実でしょう。逆に、もの凄く不出来なモノの中を探索してみると、今まで接した事がなかった、面白くて愛すべき対象がみつかる可能性もあります。

映画でも、あまりに酷い出来の作品は、逆に、物見高い人達の関心を引くという事も有る様で、そんな作品の一つが、2003年に公開された低予算映画「The Room」でした。

「最低だから見てみたい」と言う、理屈では説明できない様なカルト的人気を今も誇るこの映画。実は、俳優ジェームズ・フランコのお気に入りでもある様で、そんな事情から、彼が監督・主演、そして制作にも関与して作りあげたのが、今回ご紹介する新作映画「The Disaster Artist」なのです。

原点となった(名)駄作へのリスペクトも充分盛り込んだという、この作品。一体、どんな作りなのでしょうか? 【続きを読む】 “ジェームズ・フランコと最低の駄作:映画「ザ・ディザスター・アーティスト(原題)」の評価・あらすじ”

名作小説の誕生秘話、映画「The Man Who Invented Christmas」の評価とは?

予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • The Man Who Invented Christmas
  • 制作:
    • 2017年 Mazur / Kaplan Company …他

今や数十億人に愛される、1人の作家のクリスマス寓話

あらためて思うと、聖書の中に「12月25日は主の生誕された日であるので、世界中の信徒はこれを心して祝せよ」とか、「主の生誕日は、電球の色と数で競い合い盛大に祝意を表せよ」、なんて一言も書かれていない訳です。

それでも、この季節が醸し出すウキウキするようなムードには、僕ら日本人は完全にやられてしまっていて、一年の中でも最も消費が活発になる次期を演出する、重要なアイテムにもなっています。

そして依然として、あの赤と緑と白の色彩に、キラキラの電飾、あきらかにそれと分かるメロディーラインの数々は、聖書の時代のずっと後に生きたどこかの誰かが考え付いた、一つの様式であるに違いないのです。

どの様なトラディションも、人類発生の瞬間から存在した訳じゃないですからね・・・

まぁ、イデオロギーの問題はともかくとして、他者への思いやりとか、いたわり、そして施しの精神という、クリスマスを定義づけるメインテーマでさえ、それを明確にしたのは、結局のところ1人の人物らしいのです。

その人こそ、英国ビクトリア朝時代に活躍した著名な小説家である、チャールズ・ディケンズであり、現代に通じるクリスマスの基本イメージを固める事になったのが、彼の代表的一作「クリスマス・キャロル」なのだ、というのが、今回ご紹介する映画「The Man Who Invented Christmas」のコンセプトです。

19世紀という、ともすると堅苦しい時代を舞台にしながらも、ディケンズがこのおとぎ話を生み出すまでの過程は、ファンタジックかつユーモラス、そしてポップに描かれているというのが、この作品の特徴らしいです。 【続きを読む】 “名作小説の誕生秘話、映画「The Man Who Invented Christmas」の評価とは?”

映画「パパVS新しいパパ 2」:マーク・ウォールバーグとウィル・フェレルのおかしな父親!?

親の上にその親が乗っかり生まれる、もめ事と笑い話

中学校の頃、国語を教えてくれていたお婆ちゃん先生が、「所詮、親がいなかったらアンタらも居ない訳だから、アンタらなんて絶対に親には叶わないんだよ」、と仰っていたのを記憶しています。

まぁ、僕らが両親に叶わないのなら、両親はその親に叶わず、親の親はその親に叶わなくなってしまい、全ての人間の親である最初のヒト、アダムとイブは、極めて高尚な人でなければならない事になってしまいます。

とは言え現実に人間は、その年齢に関わらず皆が等しく無責任だし、幼稚で自己中心的で低俗なもの。だからこそ、パパと息子、ママと娘の間には、身内に独特のライバル関係が生じたりする訳です。

多分、ハリウッド映画のシナリオテンプレートには、そういった親子関係をいじくる構図が組み込まれている様でして、今回ご紹介するホリデー向けコメディー映画「パパVS新しいパパ 2(Daddy’s Home 2)」もまさにその一本です。

この映画、2017年のクリスマス、家族のお手本にならなければいけないはずのパパ達の前に、もっと手強いお父さん達が立ちはだかり、家族の休日が大騒ぎになるという話らしいのですが・・・ 【続きを読む】 “映画「パパVS新しいパパ 2」:マーク・ウォールバーグとウィル・フェレルのおかしな父親!?”

映画「オリエント急行殺人事件」の気になる評価とは?

蘇る伝説の名探偵

どんな時代においても、オッサンは「俺たちの時代はよかった」と言うものです。

その言葉は、便利になりすぎた時代に育った若者の文化を揶揄する目的で発せられるものですが、人類社会が単一方向にだけ発展するものである以上、常により簡単で便利になり過ぎているものなんです。

ただ、不便だった何十年か前の方が、社会の中に趣きが感じられたというのは事実で、それ故、ファッションや映像芸術といった分野には、常にノスタルジー趣味というテーマが横たわっています。

過去の時代はビジネスになる・・・

古い物は、若者の目にとっては新鮮に映るものだし、それが1930年代の文化や当時のセレブの生活などであれば、今の劇場のスクリーンに投影しても充分に金が取れるのではないか、大手映画会社のエリート企画部員がそう考えたとしても、何ら不思議ではありません。

かくして、その社名自体に遺物のような響きのある20世紀フォックス社が、1934年当時の豪華列車での旅を舞台にした名作ミステリーを、21世紀の今に再映画化する段取りとなりました。

その(新作)映画「オリエント急行殺人事件」、映画界の各分野・年代からオールスターキャストを集め重々しくも作り上げられた名作です。そしてそれが故に、プロの厳しい批評眼で評価されている一本でもあります。

今回は、その映画が受けた評価をいくつかご紹介する事にしましょう。 【続きを読む】 “映画「オリエント急行殺人事件」の気になる評価とは?”

映画「レディ・バード(Lady Bird)」:グレタ・ガーウィグが描く女子高生のリアル

さりげない日々に埋もれたストーリー

人間は、体験から学習する生き物。ですから、人が人生を構築しようとする時、周囲の環境からは計り知れない影響を受ける事になります。

なので、子供がまっすぐに成長してゆくためには、最低限の環境は不可欠。

まず、しっかりとした関心を子供に向けてくれる両親の下に生まれ、校則は厳しくてもちゃんとした教育方針のある学校に入れてもらい、適当に規則をやぶりつつも先生とは敵対する事もなく過ごし、恋をしてその先の事も知り、高校を卒業し希望通りの大学へ入学する。

その人の人生の初期段階で、こういう、とても普通の事柄が連なっていさえすれば、将来的には、一流企業とか芸能界に入ったとしても必要不可欠とされる人材に育ってゆくのでしょう。

ただ、普通の出来事を列挙するストーリーって、映画ビジネスの中では売り物になるのでしょうか?

実は、今回ご紹介する映画「レディ・バード(Lady Bird)」は、とある女子高生のリアリティをハートフルに描いたという事で、すこぶる評判の良い作品らしいのです。

ここで、自身の出身地であるサクラメントを舞台にしたストーリーを描いたのが、女優のグレタ・ガーウィグで、本作が監督としてのデビュー作ともなっています。

ガーウィグ監督の代わりに、自分も数年間分年齢をさかのぼって高校生になり切り演じているのが、シアーシャ・ローナン。

と言う訳で、女性目線の効いたラブリーな雰囲気は予想できるのですが、そこにどんな出来事が起こるのでしょうかねぇ? 【続きを読む】 “映画「レディ・バード(Lady Bird)」:グレタ・ガーウィグが描く女子高生のリアル”

マット・デイモン主演ダークコメディ:映画「サバービコン 仮面を被った街」の評価

作品予告編・概要


タイトル:サバービコン 仮面を被った街(Suburbicon)
制作:2017年/Black Bear Pictures(他)

穏健な男の日常が切れる時

世間を騒がすような大騒動を起こした男性を報じるニュースの中で、彼はとても大人しい人だ、なんて周囲の人々が言っているのを見ると、なんとも混乱した気分になる事も多い昨今です。

逮捕された本人の供述が、「ストレスでいらいらしていたからやった」と語っていると伝わると、こちらの方こそイライラさせられる気がします。

とは言え、人は誰も感情を抑圧して生きているものですから、ちょっとの切っ掛けでそれが暴発し狂ったようになるリスクは誰にでもあるのです。だから、「ストレスが原因」というその犯人の発言も、実は人として最も率直な言葉なのかもしれません。

とにかく、見かけ上は平穏な生活も、真の意味で安定していて永遠に安泰という事はありません。あなた自身が壊れずに持ちこたえていたとしても、あなたの人生を崩壊させる事なんて気にもしない輩は、この世界にたくさん居るのです。

さて、不幸にしてそんな悪い奴らの被害にあったひとりが、ガードナー・ロッジ。ここでご紹介する映画「Suburbicon」の題名となっている、新興住宅街にすむ中流階級の男性です。

彼の住む世界は、その犯罪の被害に有った事がきっかけで大きく崩れてしまい、さらには彼自身も壊れてしまったらしいのですが・・・ 【続きを読む】 “マット・デイモン主演ダークコメディ:映画「サバービコン 仮面を被った街」の評価”

映画「Most Beautiful Island」:美しき容姿が導くアンダーグラウンド世界

予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • Most Beautiful Island
  • 制作:
    • 2017年 Glass Eye Pix

ルックスを売るビジネスの危険な誘惑

現代社会においては、テレビ地上波放送の番組に繰り返し顔を出す事は、国会議員になるよりも大きな社会的影響力を持っています。

毎日、その愛らしい姿を画面の中で披露する芸能人は、遠い議事堂の中で、難しい上にポイントを欠いた話し合いを続ける先生達よりも、ずっと馴染み深い存在ですし、僕達のライフスタイルにも直結している事は確かです。

と言う訳で、カメラのアップに耐える外見が自慢だと言うハンサムで若い男女が、今日もエージェント企業(芸能事務所)のオフィスを訪問しているでしょう。

人間の世の中全体を発展させる原動力としても、そういった夢を追いかける人達の存在は、大切かつ不可欠ではあります。

ですが、そうであったとしてもなお、この芸能人ビジネスには、構造上の大きな問題が1つ有ります。それは、ムードに流されやすい大衆心理が、タレント個人の価値を決定する全権を持っている、という構図です。

そういった業界では、一度あなたに付いたプライスタグも簡単に値を下げてしまいますし、同時にそんな事情が、芸能界は甘くないと言われる根拠にもなっている訳です。

まぁ、別の見方で、外見的上の魅力についての良い面に注目すると、ご自分の姿を人に見せる事で収入を得られるというのは、とても素晴らしい事だとも言えますし、この世界には、そうしなければならない事情を抱えている人々も、また多くいるのでしょう。

さて、今回ご紹介する映画「Most Beautiful Island」の中心に居る一人の美しい女性も、自身のルックスを使って収入を得ようとしているらしいのですが、彼女には、芸能界に挑戦する事も許されない、一つの大きなディスアドバンテージがある様なのです。

この女性が、細々とでもなんとか生活しているのは、世界で一番美しいはずの場所、マンハッタン島。

しかし、彼女につけられる価値はあまりに低く、改善の兆しも有りません。そんな様々な状況に追い詰められ、思い余ったあげく彼女が最後に足を踏み入れた先とは、きらびやかな賑わいの陰にかくれた大都会のダークサイドだったようなのです・・・ 【続きを読む】 “映画「Most Beautiful Island」:美しき容姿が導くアンダーグラウンド世界”

映画「All I See Is You」:ブレイク・ライヴリーが夫に縛られる訳とは?

夫婦のチカラ関係が見せる物語

好むと好まざるとに関わらず、僕達は人間関係という空間に拘束されて生きています。そしてそれは、不平等な上下の階級に支配された世界です。

原始の頃は、上に立つ者に権力を集中させて、そこから複数の手下を使ってグループ全体を回す事が、全員を生き延びさせるために必須だったという名残が、今でも生きているのですね。

そして、技術や道具が凄く進歩した21世紀の今になっても、人間のこの性質は変化する兆しも無さそう。結局これは、人間の本質を表しているものかも知れません。

まぁ、角度を変えて見ると、人と人の間に、上下の階級などを持ち込むと、かえって問題が生まれる場合も有る事はあります。たとえば、夫婦の間の関係性がそれ。

一般的に(そして本質的に)1人の男性と1人の女性により構成されるのが夫婦で、お互いが相手にはない機能を担っている訳ですから、合理的に考えても2人が基本的に対等・平等であるべきです。

ですが、必ずしも合理的な正解を求めていないのが、人間という生き物が持つ興味深い性質の一つ。様々なケースがありますが、夫婦という最も近しく濃密な人間関係にも、不条理なシステムが適用された上、一応うまくまとまっている事も少なくないだろうとは思います。

そして、その不条理を見つめようとすると、そこに1つのドラマが生まれます。

例えば、今回ご紹介する映画「All I See Is You」の中でも、今まで機能していた歪(いびつ)な力関係に、新しい局面が生まれている様子です。

それは、この話の中心に居る1人の美しい人妻に、新たなが備わったためらしいのですが、はたして、どんな話なのでしょうか・・・ 【続きを読む】 “映画「All I See Is You」:ブレイク・ライヴリーが夫に縛られる訳とは?”

映画「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」:コリン・ファレルに向けられた復讐の呪い

怨念は燃え尽きるまで消えず・・・

奥ゆかしき文化を誇る我が日本では、昔から、人を呪わば穴二つ、という言い回しが使われています。

他の誰かを恨んで呪い続けたって、むしろ自分にとって、ろくな事はないよという教訓な訳ですが、21世紀の現在でも丑の刻参りは結構行われているという話もあり、やはり未だに、人の世と怨恨というのは切っても切り離せない深い絆で結ばれているのでしょう。

とは言うものの、複数以上の人から呪われて死ねばいいのにと思われている輩が、大空の下を平気で闊歩している反面、その周囲の一般庶民がとばっちりを受けている事も多く見受けられる昨今、恨みの念の効力というのも、かなり疑わしいものでもあります。

何にしても、絶対にすっきり解決する事がないのが、人を恨む、という行いです。

さて、独特な角度から超常現象の存在を認めているハリウッド映画業界では、復讐の呪いの扱い方にも、藁人形&五寸釘というものより多様なスタイルが考案されます。

今回ご紹介するミステリアスなホラー映画「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(The Killing of a Sacred Deer)」は、呪いが持つ微妙でミステリアスな性質を、上手く取り入れたストーリーで展開する一作なそうですが、どんなお話なのでしょうか? 【続きを読む】 “映画「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」:コリン・ファレルに向けられた復讐の呪い”

実話ベースドラマ:映画「オンリー・ザ・ブレイブ(Only the Brave)」の評価とは?

予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • Only the Brave
    • オンリー・ザ・ブレイブ
  • ジャンル:
    • 実話 / ドラマ
  • 制作:
    • 2017年
    • Black Label Media
    • Conde Nast Entertainment
    • Di Bonaventura Pictures
  • 日本公開:
    • 2018年6月22日

体を張って猛火に挑んだ実在の消火隊:『オンリー・ザ・ブレイブ』

アメリカ人のヒーロー好きは、今や世界中のポップカルチャーに浸透していて、毎年の大作映画シーズンに登場する見栄え重視のコスチュームを来たスーパーヒーローは、数千億円分以上のチケットを売りさばきます。

そんな彼らは、この国の経済をけん引する、1つのパワーである事は確か。

しかし、そのお国柄にしても、やはり現実の事件や事故から自分のコミュニティを守る、地元の公務員こそがヒーローの真髄であるのは確かでしょう。

この映画『オンリー・ザ・ブレイブ』は、あのジョシュ・ブローリンが、我が街を守るため猛烈な山火事に体を張って立ち向かった、消防隊のチーフを演じているという、実話ベースのドラマです。

ヤーネルヒルの山火事

山火事による被害が、ここ数年酷くなり続けている様に見えるアメリカ。この映画の中でブローリン達が立ち向かうのは、2013年6月28日にアリゾナ州の山間で実際に発生した大火災です。

雷が発火の原因とされるこの山火事。延焼エリアは、最大の時で3,400ha(東京ドームの720倍以上)におよび、地元ヤーネルの街で127軒の建物を消失させました。

最大で400人規模の消防隊員が導入されましたが、一時炎は制御不能な状態になり、結果的に、延焼防止作業に従事していた19人の消防士が命を落とした、まさに歴史に残る凶悪な炎がもたらした大災厄です。

少なくとも発生当時で、アリゾナ州に発生した中でも最も深刻な山火事のケースであり、2011年のN.Y.テロ以来では、合衆国の消防隊員に最大の犠牲を出したのが、この山火事でした。 【続きを読む】 “実話ベースドラマ:映画「オンリー・ザ・ブレイブ(Only the Brave)」の評価とは?”

映画「The Snowman」:マイケル・ファスベンダー主演、北欧発のスリラー

マイケル・ファスベンダーを翻弄するノルウェーの殺人鬼

2017年のハロウィーンに向け、いよいよあのジグソウが復活するそうです。

これで、殺戮の展覧会ものホラー映画のブームが再来して、担当する10代の子供達に悪影響が出ないだろうかと心配している、教育関係者の方々も多くいらっしゃる事でしょう。

まぁ、切断されたり破裂したりする人体の描写が、どれくらい映画に必要なウィットとかペーソスになっているかは、演出の意図によって決まって来るものだとは思います。

見ていても、決して趣味の良いとは言えないですが、ある程度までの残虐描写は恐怖を描くためには必要不可欠です。そして、収益性を重要視したハリウッドが、全ての作品でPG13の枠に収まる描写しかしなくなったら、恐怖を描くという文化も衰退・消滅してしまうのでしょう。

それも、また困ります。

なので、エグいホラーを見る楽しみは、とりあえず(R指定で)大人だけの特権とされているのなら、それが映画世界を保つために考案された、賢い均衡点という事になりますね。

さて、今回ご紹介するのは、そういった露骨なアメリカンテイストのホラーではない(はずの)、ノルウェー産のミステリースリラー、「The Snowman」です。

この中でも、女性を無理やり拉致した上で残虐に殺害するという、狂った殺人鬼が登場して、1人の刑事と追いつ追われつのサスペンスを展開するのだそう。

なので一応、血のりの量が多めを何時もご注文される映画ファンにも、それなり訴求する一作のようです。 【続きを読む】 “映画「The Snowman」:マイケル・ファスベンダー主演、北欧発のスリラー”