憑依系ホラー映画「The Possession of Hannah Grace」海外メディアの評価とは?

街を飾るイルミの向こうにある闇をご堪能

今回ご紹介する映画『The Possession of Hannah Grace』は、2018年のホリデーシーズンに、米国内全国規模でリリースが行われたホラー映画です。

タイトルを見て分かる通り、デーモン憑依現象を取りあつかったのがこの作品で、レーティングは‘R指定’となっています。

悪魔のせいにしたくなる程、運の悪い一年を過ごしてきた人も、ちょっとは笑顔になれる様、最後の幸運を求めて右往左往しているのがこの季節です。

そんな聖なる時期に、わざわざ邪悪なものの恐怖描写を劇場に投入するなんて、よく、キリスト教系保守団体がクレームを付けなかったものです。

とは言えまぁ、そういうホラー映画を観る事で、一年の憂さが晴れ笑顔を取り戻せるという人もいるのですね。

このデーモン映画、制作予算は約950万ドル、全米公開から2日間経過した時点の全世界累積売り上げは、概ね1,200万ドルに到達しています。

持続的な景気拡大期待に少し影が差してきた米国トランポノミクスに、即席的なキャッシュフローを提供したという事で、とりあえずハリウッド辺りではにんまりしている人々がいる事でしょう。

そんなホラー映画『The Possession of Hannah Grace』、公開時にアメリカのメディアが載せた評価は、どの様なものだったでしょうか。

予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • The Possession of Hannah Grace
    • ザ・ポゼッション・オブ・ハンナ・グレース
  • ジャンル:
    • ホラー / デーモン憑依
  • 日本公開:
    • 未定
  • 制作:
    • 2018年
    • Broken Road Productions
    • Screen Gems
  • 監督:
    • ディエデリック・ファン・ローイェン
  • 脚本:
    • ブライアン・シーブ
  • プロデューサー:
    • グレン・S・ゲイナー
    • トッド・ガーナー
    • シーン・ロビンズ
    • アンドレア・エージュミアン
  • 出演:
    • シェイ・ミッチェル
    • ニック・テューネ
    • スタナ・カティック
    • グレイ・デイモン
    • カービー・ジョンソン…他

あらすじ

ミーガン・リード(シェイ・ミッチェル)は、長いリハビリテーションの末、今日、新たな職に就こうとしています。

彼女は元刑事。しかし、勤務中にパートナーを失った精神的ショックとトラウマから、一度はアルコール依存症になり前の職場を辞めていました。

今度の仕事は、ボストン・メトロ病院内にあるモルグでの深夜勤務です。誰でもがやりたがる仕事ではありませんが、1人静かな空間での仕事は、今のミーガンには向いているのかも知れません。

彼女は、同じ病院に勤める看護師リサ(スタナ・カティック)や、元恋人のアンドリュー(グレイ・デイモン)達の支えもあり、今、新たな道へ進もうとしているのです。

さて、初日の勤務を開始した彼女の元に、間髪を入れずに1人の遺体が運び込まれました。それは、前身の関節が異様な形に曲がり、酷く傷ついた女性の遺体。

そして、それを運び込んだ救急車の運転手ランディー(ニック・テューネ)は、ミーガンに薄気味の悪い話をします。

遺体の名前は、ハンナ・グレース(カービー・ジョンソン)、十代の女性ですが、彼女は、自分が受けていた悪魔祓いの儀式の最中に命を落とした、と言うのです。

もし、ハンナが悪魔に憑依されていたのが本当だとして、お祓いの儀式が完了する前に絶命したのなら、憑りついていたモノは今どうなっているだろう?

もちろん、元警官で現実主義者のミーガンは、そんな与太話は相手にしませんでした・・・実際に、ハンナの遺体に起きている異様な出来事に気づくまでは。

運び込まれた当初は、全体が酷く傷ついていた彼女の肉体が、信じられない事に少しずつ修復している様に見えるのです。

しかし、その姿がいかに異様だとしても、死体は死体です。そんな事は絶対に有りえません。ミーガンの不安定な精神が幻を見せているとでも言うのでしょうか?

たった1人のモルグで、彼女の不安感はどんどんと大きく膨らんで行きます。そして、それが幻覚などではない事が分かった時、彼女には恐ろしい運命が待ち受けているのでした・・・

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映画『The Possession of Hannah Grace』気になる現地メディアの評価は?

最近のハリウッド娯楽映画では、様々な所に陳腐化が目立ってきている様子が有ります。

そんな中、デーモンに憑依された犠牲者はその後どうなるか?、と言うモチーフは、ひょっとしたらホラー映画ジャンルに新しいインスピレーションを持ち込むものかも知れません。

神の聖なるパワーが、よこしまな魔物に負かされるという構図は、キリスト教の敬虔な信徒である人にとっては、他のどのホラーよりも恐怖感(あるいは嫌悪感)を与えるものでしょう。

まぁ、この作品については、そういう層から特別な反発が出ているという話は、今のところ目に入ってはいません。ひょっとしたら、宗教界の監視の目をかいくぐる様にして、上手く劇場公開へ漕ぎつけたのでしょう。

物語としての作りもさる事ながら、一年の中の特別なシーズンにリリース時期を設定した意図など、映画の裏側の諸事情も勘ぐりたくなってしまうのが、この『Hannah Grace』です。

それでは、大人の映画批評家達が、このB級娯楽ホラーにどの様な評価を与えたか、見てみる事にしましょう。

評価1:憑依現象を新たな角度で描く、という訳ではない

1つめは、The Seattle Timesからの評価です。

従来であれば、クライマックスとなるべきお祓いの儀式が、単なる導入部に使われているというこの映画。観客は、その後のストーリーがどう展開しどこへ向かうのかと、期待して座席に付く事が想定されています。

とは言え、やっぱりB級の超常現象ショッカーとしてまとまっているだけ、というのが、ここでの批評です。

【The Seattle Times】

‘The Possession of Hannah Grace’ never fully takes hold

「決着を見る事が無いホラー映画“The Possession of Hannah Grace”」

Perfunctory B-movie “The Possession of Hannah Grace” isn’t exactly an earth-shattering entry into the well-worn genre that is the exorcism movie. It doesn’t so much as invite attention to itself as it does to the genre, allowing viewers to ponder the ways in which it does or does not hew to convention,

「B級ホラー映画『The Possession of Hannah Grace』は、悪魔祓いという使い古されたジャンルに地響きを轟かせる、などという事も期待できない、ただのおざなりな作品である。他に並ぶ同ジャンルの映画をどの程度踏襲しているのかなど、観客が考えを巡らす理由も無い。これは、一作の映画としてもホラージャンルの1つとしても、さほどの関心を引くものではないだろう。」

At one point, someone wonders to Megan, “Why hasn’t she killed you?” It’s an apt question. She’s a mentally unstable young woman, struggling with addiction and anxiety and trauma — ripe for possession. But it seems in Megan, Hannah and whatever is inside Hannah (it’s never clear) has met its match, and that’s the place where we should dive further. It’s a bit of a shame the film never draws that out with any clarity.

「ある時点で、“彼女は何故君を殺さなかっただろう?”と(主演の)ミーガンに誰かが尋ねる。これは良い質問である。彼女は、依存症と不安感そしてトラウマなどと戦う、精神の不安定な若い女性なのだ。つまり、憑依されるにはうって付けという訳である。しかし、この事は、ミーガン、ハンナ、そして(正体は不明ながら)ハンナの中にいるとされるものとの間の、1つの共通項であるはずだ。物語としては、深く掘り下げるべきポイントである。つまり、この映画がその点に明瞭な描写を一度も行わない事は、非常に残念と言わざるを得ないのだ。」

There are a few jumps and bumps, but there’s no real sense of dread or unease or questioning. We simply watch the events unfold with a full understanding of what’s going on. It’s unfortunate that “The Possession of Hannah Grace” just never fully takes hold.

「本作には、いくつかのビックリやドッキリが用意されている。その一方で、真の恐れや不安、そして疑惑などを感じさせることは無い。観客は、それが何を描こうとしているか全て知った上で、事件が展開していく様を観察するだけとなる。この映画“The Possession of Hannah Grace”においては、本当の決着感というものを与えてくれない点が、残念な部分だと言えよう。」

評価2:音響が駆り立てる恐怖感

2つめは、The New York Timesが寄せた評価です。

孤独で不安な、モルグでの初めての夜勤。そこへ運び込まれる、異様に変形した女性の遺体。忍び寄る邪悪なデーモンの影。

ホラー映画的には、美味しそうなギミックが上手く揃えられているのが、この映画でもあります。

それが成功するか否かは、各要素を抱き合わせてまとめあげる、監督のバランス感覚にかかっている訳ですが、ここでは、そんな角度からの批評となっています。

【The New York Times】

A Demon Makes for a Noisy Corpse

「デーモンの力を借りて死体が動き出す」

Though Hannah’s realistically butchered body is a fright to behold, sound dominates the horror here. The director, Diederik Van Rooijen, establishes a tense mood by alternating between ear-shattering demonism and extended periods of suspenseful silence. This sound scheme is a successful trigger for anxiety, but it quickly exhausts the senses.

「(悪魔に憑りつかれて死んだ)ハンナの遺体が、直視するには恐ろしすぎるとは言え、この映画の恐怖を実際に支配するのはその音響である。監督のディエデリック・ファン・ローイェンは、デーモン出現の際の大音響と、じりじりと張り詰めた様なサスペンス調の静寂との間で、緊張感ある雰囲気を作り上げてみせる。そしてこの音響手法は、不安感を与えるには有益だが、その感覚は長続きもしないものだ。」

Van Rooijen’s overreliance on herky-jerky jump scares is a pity, because the movie that exists in the silence is surprisingly satisfying.

「ファン・ローイェン監督が、突発的に驚かす手法に頼り過ぎている事は、残念なポイントになってしまっている。何故なら、この映画は静寂の中で進行している時が、驚くほど良い出来に仕上がっているからだ。」

評価3:怖い舞台と痛ましい描写の数々

3つ目は、The Hollywood Reporterからの評価です。

適度な恐怖と不快感を与えてもらい、日常生活でぼやけた脳みそを活性化したい、と言うのが、B級ホラーファンが映画を観に行く理由です。

その意味では、死んだはずのハンナ・グレースの眼球がちょっと動いてみせるだけで、十分目標を達成したとも言えるのでしょう。

批評的な目としては、それ以上の工夫や発展を期待する所でしょうが、こちらでは、その点にあまり満足できなかったとの意見が書かれています。

【The Hollywood Reporter】

There are few settings more spookily atmospheric than a morgue late at night (check out 2016’s superior The Autopsy of Jane Doe for further proof), and Dutch director van Rooijen, making his American feature debut, milks the setup effectively. But Hannah Grace never overcomes the compendium of clichés in Brian Sieve’s screenplay, which resembles a greatest hits of demonic possession films.

「深夜のモルグを描く以上に、不気味なムードを生み出せる設定は多くは存在しない(確かめたい場合は、2016年の秀作“ジェーン・ドウの解剖”をご覧いただきたい)。そして、オランダ人映画監督のディエデリック・ファン・ローイェンは、米国映画デビュー作となる本作で、その設定から効果的な恩恵を受けている。だとしても、この作品は、脚本家ブライアン・シーブがこれまで書き上げた、デーモン憑依のヒットパレードと表現しても良い作品群を、大枠でも上回る事は無いだろう。」

The demon in this film seems much more lethal, however, messing not with people’s minds but rather their bodies. This results in a series of repetitive episodes in which Hannah uses telekinetic powers to deliver the sort of bone-crunching harm to her victims that render them in serious need of an osteopath.

「ここに登場するデーモンは、人々の精神より肉体を攻撃するという意味において、より致命的だと言う事は可能だ。その事実は、(死体の)ハンナが念力の様なパワーで、人々の骨をへし折り、直ぐに整骨医を読んできたくなる様な酷い状態へとを追い込む、そんな一連の事件の繰り返しとして表現されて行く。」

Mitchell delivers a strong turn as the spunky heroine, effectively conveying both her character’s physical strength and emotional vulnerability. And comedian Nick Thune has some good moments as a friendly ambulance driver who can relate to Megan’s addiction issues. But their efforts are not enough to make this hopelessly derivative horror film anything other than forgettable.

「シェイ・ミッチェルは、この中で活躍するヒロインとして、肉体的強さと精神的脆弱性の両方を効果的に表現している。そして、コメディアンでもあるニック・テューネは、ミーガンの依存症に理解を示す、友好的な救急車ドライバーとして、いくつかの良い場面を得ている。それでも、本作の様な派生的なホラー映画の中にあっては、彼らの努力も、それを記憶に留まらない1つへと仕上るのに協力しただけ、という事だろう。」

評価4:生命は無く、悪霊は留まり続ける

最後は、Varietyからの評価です。

実際の所、それがデーモンやサタンの魔力によるものだとしても、死体が動き出したらそれはゾンビでしょ、と言いたくなる部分も有ります。

そこで、どんなに凄いポルターガイスト現象が起きていても、魔物の正体には触れる事も見る事もできない、と言うのが、悪魔祓い系ホラー映画の神秘性を支えているのです。

そこが無くなったら、あとは、特殊メイクやVFXの技術を披露して行くだけとなります。

【Variety】

A horror film set in a morgue, featuring a graphic-looking demon cadaver, may disappoint those who thought they were getting an exorcist flick.

「モルグにやってきた、見た目も恐ろしい死体を描くこのホラー映画は、悪魔祓いを見たかった観客層を落胆させるだろう。」

In theory, putting “possession” in the title of a horror movie should add to its box-office allure. But it probably won’t take long for word to trickle out that “The Possession of Hannah Grace,” after the first five minutes, is not an exorcism movie.

「理論的には、タイトルに“悪霊憑依”と含めたホラーは、観客を引き寄せる魅力を持つはずである。しかし、冒頭の5分間を終えた時点で、本作“The Possession of Hannah Grace”がエクソシズムのストーリーではないという事実は、直ぐに知れてしまうのだ。」

Just about the entire film is set in a morgue. And though it stars Shay Mitchell, from “Pretty Little Liars,” it has her playing a character with almost no personality

「このストーリーのほぼ全体は、死体安置室で展開するものだ。そして、あの“プリティ・リトル・ライアーズ”のシェイ・ミッチェルが主演しているとは言え、その役には、さしたる人格が与えられていないのである。」

The cadavers are extremely realistic-looking, all veiny marbled skin and blackened decomposing limbs. You might say, “Who would want to see that?” And maybe you don’t. But the director, Diederik Van Rooijen, who was born in the Netherlands, is banking on the fact that years of ever more gradually explicit forensic cop shows have inured us to this stuff, and that the savage gross-out realism he offers can now play as graphic macabre cool.

「ここでの遺体の様子は、非常にリアルなものを見せる。それらは、肌に血管が浮き上がり、黒ずんだ四肢はバラバラになった様だ。あなたは、“こんな物を見て、誰が喜ぶんだ?”と言うかも知れないし、実際、楽しくもないだろう。しかし、オランダ生まれの映画監督ディエデリック・ファン・ローイェンは、犯罪捜査の表現が年々露骨になっている刑事ドラマ制作を仕事にしてきた人物だ。つまり、こういった描写に我々を慣れさせてきた訳である。そして今、この監督が我々に提供する、リアルで残忍な不愉快さは、おぞましくもクールな映像として映る様になったのだ。」

But once you get the hang of “The Possession of Hannah Grace,” you realize that there’s very little there there. The idea, of course, is that even killing Hannah couldn’t drive the devil out. She’s possessed, although she’s lifeless. Sort of like the movie.

「だとしても、観る者が本作“The Possession of Hannah Grace”の方向性を把握した瞬間、先に大したものが用意されていない事は知れてしまう。基本のアイディアは、ハンナの命を絶っても悪魔を追い出す事にはならない、と言うものだ。悪霊は、この映画自体の如く命を持たないものにも、留まり続けるという訳である。」

モヤっとした暖冬の空気を吹き飛ばしてくれれば・・・

クリスマスのイルミネーションに照らされた街の片隅でも、やはり、超常現象は発生しているのでしょうか?

今でも、ボストン市内にあるモルグには、その死因はともかく、夜な夜な新しい遺体が運び込まれている事でしょう。この映画を観て一番恐怖を体感できるのは、実際に、その場所で働いている人であるのは確かです。

それ意外の(日本に住んでいる我々を始めとした)人間は、絶対に自分の身には起こらないと分かっている恐怖を疑似的に体験し、クリスマス前の真冬にふさわしい寒気を感じた後、デートにでも行くのでしょう。

上映時間が、高々86分間という、スリラーにとってベストの尺に収まっているのも、この映画『Hannah Grace』の長所。

まぁ、日本にはどの様に輸入されるのか。ちょと面白いモチーフを使っているので、しっかり劇場のスクリーンで上映してあげても良いと思う一作です。

そうして、ハンナ・グレースを成仏させてあげましょう・・・

それではまたっ!

参照元
The Seattle Times
The New York Times
Hollywood Reporter
Variety

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