映画「Suspiria」気になる海外メディアの評価とは?

アート表現は、鮮血を求める

芸術とは、それに携わる人間にある程度の犠牲を要求するもの。

1977年にホラー界の名匠ダリオ・アルジェントの手により創作された『サスペリア』は、ひょっとしたら、アートが持つそんな残酷な側面を比喩したものだったのかも知れません。

今回、『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督が、ホラーマニアの間ではアイコニックな一本と呼べるその映画に、さらなる芸術性を上乗せして作り直したというのが、ここでご紹介する映画『Suspiria』。

その新作ホラー映画の評価をご紹介します。

1人で見てしまった人は後悔した!?、惨劇のホラーストーリー

オリジナルの1977年版では、ヒロインのアメリカ人女性を登場直後から嵐の下でずぶ濡れにさせ、観客を否応なしに不穏なムードに叩き落す、そんな演出がなされていました。

後々、その場面のタクシー運転手の肩の所に、あり得ないものの姿が映っているという事が、TVのオカルト特番などで話題にされたのもこの映画。

ちなみに、日本国内で『サスペリア2』として公開された作品は、1975年にアルジェントがリリースしていた『Profondo rosso』で、実はサスペリアとは関係の無いストーリーです。付け焼刃的にパート2をでっち上げてしまう所なんて、当時の日本の映画業界が、突如躍り出た1人のホラー監督の巻き起こした旋風に、いかに振り回されていたかが伺える部分です。

今回のリメイク版では、チープさが1つの売りでもある70年代の作風を進化させ、現代的なゴージャスさも与えられつつ、加えて残酷描写でも容赦しないという、そんな印象になっている模様です。

さて、この血塗られたホラー作品、公開時にアメリカのメディアが載せた評価は、どの様なものだったでしょうか。

予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • Suspiria
    • サスピリア
  • ジャンル:
    • ホラー
  • 日本公開:
    • 未定
  • 制作:
    • 2018年
    • Amazon Studios
    • Videa
    • Mythology Entertainment…他
  • 監督:
    • ルカ・グァダニーノ
  • 脚本:
    • デイブ・カジャーニッチ
  • プロデューサー:
    • カルロ・アントネッリ
    • ジョッシュ・ゴッドフリー
    • ステラ・サヴィーノ
    • ジェームズ・ヴァンダービルト
    • ダリオ・アルジェント…他
  • 出演:
    • ダコタ・ジョンソン
    • ティルダ・スウィントン
    • ミア・ゴス
    • エレナ・フォキナ
    • クロエ・グレース・モレッツ…他

あらすじ

1977年ベルリン。

その街は、30年前に中央で分断されて以来、その壁を隔てて共産主義世界と自由世界がお互いを監視し合いながら、不信感と憎悪を掻き立て続けている、東西冷戦にとって最先端の場所。

ある日、街の精神科医ヨーゼフ・クランペラーの下へ、1人の若い女性がやって来ます。彼女の名前はパトリシア(クロエ・グレース・モレッツ)。

実は彼女は、この街に本拠をおく世界的に有名なダンス劇団、ヘレナー・マーコス・ダンス・カンパニーの一員でした。そして、その相談事とは、ある意味で常軌を逸した内容で、「あの劇団は邪悪な魔女が運営している」というものだったのです。

もちろん、クランぺラー医師は、それをパトリシアの脳が作り出した妄想だと診断、彼女にもそう告げます。

さて、それからしばらくして、アメリカはオハイオ州から、1人の新人ダンサーが劇団のオーディションを受けにやってきました。彼女の名前は、スジー・バニオン(ダコタ・ジョンソン)。

母国での子供時代は、あまり幸せなものではなかった彼女ですが、今、子供時代からの憧れである劇団へ入れるチャンスを得て、希望とやる気に満ちています。

一方、劇団の寄宿舎からは、あのパトリシアが無断外泊の形で姿を消したまま、行方が分からなくなっています。そんな状況では気乗りがしないとでも言うのか、主役級のダンサーであるオルガ(エレナ・フォキナ)は、リハーサルに対しても非協力的。突然、現場から立ち去ってしまいました。

この劇団のダンス構成や振付、その他の事もを含め取り仕切っているのが、カリスマ的振付師であるブランク夫人(ティルダ・スウィントン)。

今、新人のスージーは、ブランク夫人の前でダンスのテストを受ける事になりました。そして、丁度その頃、あのオルガは別の階にあるミラールームに、理由もなく閉じ込められていました。

スージーは、ブランク夫人の評価を勝ち取るための、全身全霊を込めてダンスパフォーマンスを披露します。その踊りに同期する様に、別室のオルガに与えられている悲惨な懲罰の事も知らずに。

やはり、この劇団には、知られてはいけない恐ろしい秘密が隠されている様です。

はたして、パトリシアの言っていた事は真実なのでしょうか?

彼女はどこへ消えたのか、そして、邪悪な計画の中に飛び込んでしまったスージーの運命はどうなるのでしょうか?

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ホラー映画『Suspiria』気になる現地メディアの評価は?

自身も、このストーリーの大ファンだという監督ルカ・グァダニーノが、現代風の映像技術と共に、独自の解釈やアイディアをかなり盛り込んで、(ディレクターズカット並の)2時間32分という長さに作り上げたのが、このリメイク版『Suspiria』です。

制作にはダリオ・アルジェントも参加しており、大枠のモチーフはオリジナルを踏襲している模様。それでも、映画としては完全に生まれ変わったと言っても過言ではないでしょう。

70年代のオカルト映画ブームを知っているオールドファンにとっても、再び見直す楽しみが十分に有る一本と言えそうです。

それでは、その作品について各メディアが寄せた評価を、3つ程ご紹介して行きます。

評価1:オリジナルへの敬意が生み出した狂気と凄惨さ

先ず最初は、USA TODAYからの評価です。

ダリオ・アルジェント版に比べて、かなりの要素を追加して膨らまされた印象も伝わるのが、このグァダニーノ版『Suspiria』。

クラシック中のクラシックともなっているホラー作に、グァダニーノ監督が込めなおしたその意欲が、果たして成功をもたらしたかどうかは、現代の映画ファンにとっても気になる所でしょう。

こちらでは、そんな作品の全体像などについて、肯定的な批評が書かれている様です。

【USA TODAY】

Polarizing ‘Suspiria’ is an unnervingly good time to the crazy last dance

「物議を醸す“Suspiria”は、狂気のラストダンスに向け不安な楽しみの中を進んで行く。」

Artistry is brutal business in director Luca Guadagnino’s concurrently serious and schlocky new take on the Italian horror classic “Suspiria.” Dario Argento’s original was an art-house fright fest for hipsters that conjured influential visual stylings and colorful metaphor, and the new “Suspiria” is an ambitious love letter to the original.

「ルカ・グァダニーノが、シリアスさと安っぽさを同時にあたえつつ、イタリア製ホラークラシック映画をリテイクした“Suspiria”において、芸術は残酷なビジネスとして語られる。ダリオ・アルジェントが生み出したオリジナルは、アート感覚の中へ流行に合わせた恐怖を描き、色彩豊かな中に比喩を埋め込むヴィジュアルスタイルで、後に影響を残した作品であった。そして、この新作“Suspiria”は、野心的ながらも、そのオリジナルへの崇敬を忘れない一本となっている。」

Suspiria” is a way more unnerving experience than, say, the new “Halloween,” and Guadagnino balances the beautiful and the grotesque throughout

「この“Suspiria”が掻き立てる不安感は、今公開している“ハロウィン”最新作より、はるかに上のものだ。そんな中、監督のグァダニーノは、美しさとグロテスクさをバランスして見せる。

But “Suspiria” is bound to alienate some. Actually, probably many. However, those with a penchant for the new wave of psychological horror and a healthy respect for B-movie camp will love this thing to the crazy last dance.

「それでも、この“Suspiria”は、一部の人間、というより実際は多くの観客を遠ざける事が必至、と言える作品だ。しかしながら、最近の新しいサイコホラー映画を特に好み、また、B級の映画作品群へ健全な敬意を抱く向きであれば、締めくくりの狂気に満ちたダンスとして、この映画をかなり気に入るはずである。」

評価2:芸術的だが、恐怖の娯楽だとは言い切れない!?

次は、Varietyが載せた作品の評価です。

誰かがリメイクすると言う事は、初めのオリジナルが、それだけアイコニックであるという事の証明です。

つまり、どんなストーリーであっても、リメイク版がオリジナルを超える事は有り得ないのかも知れません。

とは言え、時代に合わせて過去には使えなかった技術などを投入し、新しい命を吹き込む事ができるのが、リメイクの良い所でもあります。

この批評では、、今回の新しい『Suspiria』でその辺りの事が、どの様にこなされているかという点に触れています。

【Variety】

Director Luca Guadagnino has remade Dario Argento’s flamboyant nuthouse horror movie into an art film about dance and witches in divided Berlin that’s so self-serious it forgets to scare you.

「ダリオ・アルジェントが生み出した、鮮やかにして病んだホラー作を、ルカ・グァダニーノは、東西に分断したベルリンにダンスと魔女の存在を絡めて描くアート作に転化した、とは言え、あまりに真面目に取り組みすぎたためか、恐怖の部分を忘れてしまった様だ。」

“Suspiria” is that rarity, an extreme horror movie made by a deeply serious maestro of a director. Yet considering that it’s a remake of one of the most lavishly nutty baroque-schlock horror films of its era, you’d think Guadagnino might have wanted to lighten up and take a bit more debauched glee in the material. But no.

「この映画“Suspiria”は、マエストロ級の映画監督が実にシリアスに取り組んで作られた、極度の恐怖を描くホラー映画だという意味においては、稀有な存在だと言えるだろう。そして本作が、ある一時代を代表する、常軌を逸しながら装飾と安っぽさが同居した映画のリメイク版である点を思えば、グァダニーノは、その堕落的な喜びを明るめの基調に描こうとしたはずだ、と想像する向きも有るかも知れない。しかし実際、それは間違いである。」

“Suspiria” has the virtues, but also the limits, of a lavishly cerebral high-end horror film. It holds your attention, and creeps you out at times, but it’s not scary, and it’s not really — dare I say it? — fun. By the time it drags itself to the finish line, you may think, “Okay, now we know what ‘Suspiria’ looks like as an art film. Can we please go back to when it was just a garishly flamboyant piece of bat-house trash?”

「本作“Suspiria”には、その美観と共に、高尚な作りを目指したハイエンドのホラー作品が持ち得る、限界点もいくつか見られるだろう。これは、興味を引かれるのに十分だし、背筋を寒くさせる場面も無くはない。ただそれは恐怖というには足らず、(あえて言わせていただくなら)さほどに楽しめるものでもないのだ。この作品が、やっとの事でエンディングに差し掛かる頃、あなたは、“なるほど、このSuspiriaはアート作品風に作られてしまったのか。オリジナルが、けばけばしく飾り立てた安映画館向けの低級映画だった頃の、そんな映画を観せてもらいたいのだけれどなぁ”、と考えてしまうのかも知れない。」

On the rare occasions when he tries to shock us, he does a great job: the fragmented nightmare montages of bad-acid-trip imagery — worms, evil faces, memories of domestic torture — are incredibly well executed, and I wish the movie had done more with them. And the characterizations of the witches are quite effective,

「しかし、この監督が、観客にショックを与えようとする稀な場面は、かなり良く出来ているとも言える。虫、邪悪な者の顔、家庭内虐待の記憶など、毒を盛られた時に見る酷い幻覚のばらばらになった断片の様な部分は、想定外に良く作り込まれているし、個人的に、この部分にもっと時間を与えて欲しいとさえ思えた。さらには、魔女達に与えられた人格構成も、かなり効果的だとも言えるだろう。」

評価3:知性が広げるB級ホラーの次元

最後は、Chicago Tribuneからの評価です。

古いスプラッター系ホラーを、もうちょっとましなプロダクションデザインで作り変えて見たら、面白い映画になるのでは?

映画製作者であれば、そんな事を思いつく人も多いのでしょう。そして、このリメイク版『Suspiria』は、制作段階にかなり力を入れて作り上げた、アート系ホラー作とも言えそうな一本との事。

こちらは、そうして作られた本作が生み出した新たな次元について、評価がされています。

【Chicago Tribune】

Luca Guadagnino’s ‘Suspiria’ remake casts a powerfully brutal, sorrowful spell

「ルカ・グァダニーノによる“Suspiria”のリメイクは、残虐なパワーと共に悲哀も響き渡る魔術の様だ。」

With its chilly gray palette, its emphasis on intellectual rather than visceral jolts and its luxuriant 152-minute running time, Guadagnino’s “Suspiria” shares little more than a basic premise — dancers and witches and knives, oh my! — with Argento’s lush, gaudy, take-your-poison-straight original.

「グレイで冷たい映像、本当の衝撃より知性に重きを置いた点、ならびに、152分間という十分過ぎる上映時間などを通して、このグァダニーノ版“Suspiria”は、アルジェント版のオリジナル作に見られた、大げさで派手に飾られつつ露骨な残酷描写で描かれた(ダンサーと魔女がからんでナイフで酷い事が!という)基本設定を、少し押し広げたものとなっている。」

Guadagnino, who has said he wanted to remake “Suspiria” since he first saw it more than 30 years ago, signals both his reverence and his seriousness by departing from it in every way imaginable — visually, sonically, dramatically, emotionally. He has drained away the bright, lurid colors and most of the scares, and crowded the story with historical and political detail.

「30年以上前にオリジナルを見て以来、この“Suspiria”をリメイクしたいと思い続けたという監督のグァダニーノは、映像、音響、ドラマ性、そして感情性といった、考え得る全ての方向に新たな要素を加える事で、自身が抱いているこの作品に対する敬意と真摯さを伝えようとしている。彼は、多くの恐怖描写とともに、眩しく鮮やかな色合いなどをそこから取り去り、代わりに歴史・政治学的なディテールを詰め込んだのだ。」

This is uncommonly weighty, lugubrious subject matter for a genre picture to take on, and those who miss Guadagnino’s signature sensuality may well chafe at his insistence on intellectualizing his movie’s demons.

「そういった題材は、このジャンルの映画を語り始めるには珍しい、重苦しく憂鬱なものだ、そして、グァダニーノお得意の官能性を望む観客層は、彼がここで魔物に知的要素を与えた事には、苛立ちを感じるのかもしれない。」

Guadagnino has always been an archaeologist of emotion, an excavator of buried, primal longings, and at the heart of this movie beats a love story, lost but not entirely forgotten amid the rubble of war and the weeds of memory. By the time the phantasmagorical finale arrives, you are flooded with blood and viscera, yes, but also something even more unsettling — a sudden onrush of feeling, a deep, overpowering melancholy.

「グァダニーノは、感情や、そこに埋め込まれた真の切望感などを発掘する、1人の考古学者とも呼べる人物だ。そして、この物語の心臓部にも、戦争が残したがれきや、かすかな記憶などの真ん中に放置され、それでも忘れ去られる事のない1つのラブストーリーが息づいている。それが、移ろう幻影のようなエンディングに差し掛かるとき、もちろん、観ているあなたは鮮血と臓器の海に溺れる事となる。それでも同時に、過剰なパワーをもつメランコリーから噴出する、さらに不安定な感覚の中にいる事にも、気づくはずなのだ。」

新たなストーリからしたたる新鮮な生き血をあなたに・・・

上映時間的にも、スリラーとして最適といわれる90分間を遥かにしのぐ、長大なストーリーとなった、新時代の『Suspiria』。

その中に残虐な描写が相変わらず健在だとしても、単純なホラー作としては楽しめなさそうな映画作品となった様です。

まぁ、オリジナルの『サスペリア』がそうであった様に、これからの時代のホラーに新たなスタイル性を与える一本、となるのかも知れません。そんな魔術的なパワーが、この映画には存在するのでしょう。

と言う訳で、ホラーファンだけでなく、一般の映画ファンも日本公開を期待したい一作ですね。

それではまたっ!

参照元
USA TODAY
Variety
Chicago Tribune

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