映画「Operation Finale」気になる海外メディアの評価とは?

ナチ戦犯大物を捉えるサスペンスドラマ

今回は、オスカー・アイザック主演、実話ベースの映画『Operation Finale』の評価をご紹介します。

1960年にモサド(イスラエルの諜報機関)の手により、アルゼンチンで逮捕されドイツはフランクフルトで戦争裁判にかけられた、ナチスの逃亡者アドルフ・アイヒマン。その逮捕にからむ一連の出来事を追った、サスペンス系ドラマが、この『Operation Finale』です。

アイザックは、モサドの部隊を率いるリーダー。彼が捕まえようとする邪悪な戦犯アイヒマンは、ベン・キングズレーが演じています。

ナチスドイツの“ファイナル・ソリューション”を発案した男

“ファイナル・ソリューション”、それは、ナチスが考え出した、ユダヤ人問題に対する解決策。人類史上でも最も邪悪で悲惨な大量虐殺をあらわす言葉です。

この恐ろしい計画を発案したとされるのが、元ナチス親衛隊情報部員であるアドルフ・アイヒマン。第2次世界大戦終結後、上手い事ドイツを脱出した彼は南米へ飛び、この映画の描く1960年にはアルゼンチン国内に潜伏していました。

この男は、1960年の雨が降る5月の夜、この映画の主役であるモサド局員ピーター・マルキンと他数名の隊員により逮捕されました。その後、ドイツへ移送され裁判を受けたアイヒマンは、1961年の12月に死刑判決を受け、翌62年の5月に刑が執行されています。

20世紀の歴史の中でも、間違いなく大きな転機の1つであったはずの、アドルフ・アイヒマン逮捕劇。その一連の様子を描いた本作『Operation Finale』について、その公開時にアメリカのメディアが載せた評価(レビュー)は、どの様なものだったでしょうか。

予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • Operation Finale
    • オペレーション・フィナーレ
  • ジャンル:
    • 実話 / サスペンス
  • 日本公開:
    • 未定
  • 制作:
    • 2018年
    • Automatik
    • Metro-Goldwyn-Mayer
  • 監督:
    • クリス・ワイツ
  • 脚本:
    • マシュー・オートン
  • プロデューサー:
    • マット・チャーマン
    • ロン・シュミット
    • オスカー・アイザック
    • ブライアン・カバナー=ジョーンズ
    • ジェイソン・スパイア…他
  • 出演:
    • オスカー・アイザック
    • ベン・キングズレー
    • メラニー・ロラン
    • ニック・クロール
    • マイケル・アロノフ
    • グレタ・スカッキ
    • ピーター・ストラウス
    • サイモン・ラッセル・ビール…他

〔広告〕

あらすじ

時は1960年。イスラエルの諜報機関モサドは、未だに邪悪なるナチスの残党を世界中で追跡していました。

とは言え、大戦が終結してから10年以上が過ぎたこの頃、正直言って、ナチ討伐のためにかつて燃やした執念は下火になりがちです。

そんな折、時の首相であるダヴィド・ベン=グリオン(サイモン・ラッセル・ビール)の下に、1つの重要情報がもたらされました。それは、ナチによるホロコーストの発案者、アドルフ・アイヒマン(ベン・キングズレー)の所在に関する情報。

なんと、アルゼンチンに住むユダヤ人女性、シルビア・ハーマン(ヘイリー・ルー・リチャードソン)が、アイヒマンの息子と親しくなったというのです。

イスラエル政府は、早速、アイヒマン逮捕のための作戦を立案します。ピーター・マルキン(オスカー・アイザック)をリーダーとした特殊部隊を結成し、アルゼンチンに潜り込み、アドルフ・アイヒマンの身柄を拘束する計画です。

実は、アイヒマンはアルゼンチン政府の保護下にあり、身分と偽名、そして仕事を与えられ生活していました。マルキン達は、政府からの干渉を受けない様に、隠密行動でこのナチス戦犯を連れ出さなければなりません。

いくつかの障壁を乗り越えて、マルキン達はアイヒマンを確保。あらかじめ用意していたアジトに留置する事に成功。後は、予定通り飛行機に乗せ出国するだけです。しかしここで、想定外の問題が発生します。

なんと、イスラエルの国営航空会社、エル・アルが、アイヒマンがサインした同意書を提出しないかぎり、彼らを乗せる事は出来無いと言ってきたのです。

もちろん、冷血動物の様なアドルフ・アイヒマンが、簡単に言われた通りのサインなどする訳はありません。彼は、人を操作する技に長け、接するだけでも危険な人物なのです。

なんとしても、このナチ残党を戦争裁判にかけなければいけない使命を担ったマルキンと、人間モンスターの様な男の間での、緊迫したマインドゲームが始まりました。

そうしている内にも、彼らを乗せる飛行機の出発時間は、段々と近づいて来るのでしたが・・・

気になる現地メディアの評価(レビュー)は?

現実の、アイヒマン逮捕劇が有ったのはもう50年以上前の事。

すでに過去の遺物の様になったエピソードなので、映画化する作り手の姿勢も、観客に与える反応も、同じ作品が20世紀に公開された場合に想定されるものからは、かなり違ってきているでしょう。

21世紀に制作された、このナチのホロコースト関連映画としての評価からは、第二次世界大戦が今の時代にどう響くかという事が、透けて見える様な気もします。

それでは、本作『Operation Finale』の評価をチェックして行きましょう。

評価1:ホロコースト発案者の言葉は冷たく恐ろしい

先ず最初は、The Seattle Timesからの評価です。

ここでは、ストーリーの中の最大のアイテムである、アイヒマンがどう描写されているかなどがレビューされています。

【The Seattle Times】

Evil speaks in well-made Nazi drama

「上手く作られたこのナチス映画の中では、悪が語り掛ける。」

Conversations with evil lie at the core of “Operation Finale.” A dramatization of the hunt for and capture of Adolf Eichmann by Israeli undercover operatives in Argentina

「邪悪なものとのカンバセーションが、この映画“Operation Finale”の中心に置かれているものだ。これは、イスラエルの秘密作戦が、アルゼンチンでアドルフ・アイヒマンを逮捕した史実を、ドラマ化したものである。」

As Kingsley plays him in one of the finer performances in the actor’s long career, there is no rage in Eichmann’s words. There is sly contempt for his captors, and a small smirk plays on his lips during a number of his scenes.

「ベン・キングズレーは、このアイヒマンという男の言葉に一切の怒りなどを感じさせない中、自身の長い俳優キャリアでも上位に入る演技を見せている。そこに有るのは、彼を捉えた者達に対する陰険なさげすみと、幾つかのシーンで唇に微妙に表す、ふてぶてしい笑いだけだ。」

Director Chris Weitz and screenwriter Matthew Orton have taken significant liberties with the facts of the incident, which played out in Buenos Aires where the fugitive Eichmann, protected by Argentine authorities, had been living under an assumed name.

「監督のクリス・ワイツと、脚本のマシュー・オートンは、逃亡者アイヒマンがアルゼンチン当局に保護されながら偽名で暮らしていた、ブエノスアイレスで実際に起きた出来事を、ここではかなり自由に変更して描いている。」

評価2:サスペンスとしては追求の余地を残しつつ

映画『Operation Finale』の評価2つめは、Detroit Newsが寄せたものです。

映画として面白くするための、いくつかの工夫が結果的にどうなったか、という点の批評記事です。

【Detroit News】

Suspense simmers in ‘Operation Finale’

「この“Operation Finale”は、沸騰するようなサスペンスを描いたものだ。」

The director here is Chris Weitz, whose all-over-the-place filmography includes “American Pie” (which he co-directed with his brother, Paul), “About a Boy,” “The Golden Compass” and a “Twilight” movie. His intent is to make a crackling potboiler with a potent backdrop, but the tension wanes in the film’s droopy second half as the balance of the operation hangs on getting Eichmann to sign a piece of paper.

「ここでメガホンを取ったのは、クリス・ワイツだ。その相当多彩な作品履歴は、“アメリカン・パイ”(この作品では、兄弟のポールと共同で演出している)に始まり、“アバウト・ア・ボーイ”や“ライラの冒険 黄金の羅針盤”、そして“トワイライト”作品などに及ぶ。彼の目指す映画は、上手い背景設定の中で要領よくお金になるというものだ。とは言え、作戦の重みがアイヒマンを捉える事から、一枚の書類にサインさせようとする方向へ傾く後半においては、この映画の緊張感も失われて行くのみだ。」

The film’s tick-tock narrative undercuts the real suspense of the story, which is whether Eichmann will atone for his atrocities. The markings here are of a fiery potboiler, but “Operation Finale” never ignites.

「この映画に与えられた時間との競争という設定も、アイヒマンが自身の暴虐を贖罪するのだろうかという、ストーリーに有るべき真のサスペンスを弱めてしまう。本作“Operation Finale”がかかげているのは、燃えるようなドラマ性という事なのだろうが、その火は結局着かずじまいで終わるのだ。」

評価3:とにかく主演の2人は良い仕事を成し遂げた

3つめの評価は、Boston Heraldが載せたもの。

映画作りとして疑問を感じさせる部分は有るものの、主演の男優2人は素晴らしいパフォーマンスを見せている、というレビュー内容です。

【Boston Herald】

In ‘Operation Finale,’ agents attempt to bring Nazi Adolf Eichmann to justice

「アドルフ・アイヒマンを裁くべく活躍した諜報部員を描くのが、この映画“Operation Finale”だ。」

Not as artful or as powerful as Steven Spielberg’s underrated “Munich” (2005), a film it resembles, Chris Weitz’s “Operation Finale” has it virtues, chief among them gripping performances from Oscar Isaac (“Star Wars”) as a Mossad agent with much to prove and Academy Award winner Ben Kingsley as “an architect of the Final Solution” Adolf Eichmann.

「何故か過小評価を受けた、スティーヴン・スピルバーグの“ミュンヘン(2005年)”の様に、技巧的でもパワフルでもないながらも、似た様な部分も持つ映画、クリス・ワイツの“Operation Finale”には、それ自体の美点が備わっているのだろう。その代表となっているのが、多くの使命を背負ったモサド局員を演じるオスカー・アイザックと、“ナチスのユダヤ人問題最終解決策を設計した”アドルフ・アイヒマンを演じる、アカデミー男優ベン・キングズレーらによる、見事な演技である。」

But Kingsley’s excessive makeup and dye job, recurring images of Peter painting portraits of a dark forest and the opacity of the relationship between Peter and Hannah further contribute to the sense that “Operation Finale” is less than great and that as a true spy thriller it is pretty weak tea. Still, Isaac and Kingsley put on a good show.

「しかし、キングズレーの過剰なメイクと髪の着色、(アイザック演じる)ピーターが暗い森の画を描く場面の繰り返し、そして、その彼とハンナ(メラニー・ロラン)の間の不明瞭な関係性は、本作“Operation Finale”を今一つに感じさせる部分で、実話のスパイスリラーとしても薄いお茶の様に思わせる働きしかしない。とは言え、アイザックとキングスレーの2人だけは見ものである。」

評価4:ナチスのモンスターは中心にならず

最後は、Varietyがこの映画に寄せた評価をご紹介します。

エピソードとしては、多くの人間が調査・取材をしつくしたものを、今、再び映画に作り上げ作品は、観客の目にどう映るか、そんな角度からのレビュー記事になっています。

【Variety】

The hook is evil, but it swims in too much banality.

「(この映画は)訴求ポイントは邪悪なものを描く事、とは言え、あまりな陳腐さの中に浸り過ぎるのが事実だろう。」

There’s a certain kind of true-life thriller that benefits from being made in a rough-around-the-edges way. “Operation Finale” is one of those films.

「細部までは精密に描かない事が良い、という実話ベースのスリラーとうものも、確かに存在する。そして、本作“Operation Finale”もそんな中の一作である。」

The last thing you want a movie like this one to feel like is a slick Hollywood suspense drama with famous historical names plugged in. “Operation Finale” doesn’t feel like that, yet taken on its own here’s how it really happened terms,

「結局、この一作のような映画に観客が最終的に求めるのは、歴史上で名の知れた人物名を登場させつつも、ハリウッドらしく小奇麗にまとまっているサスペンスドラマなのである。しかし、本作“Operation Finale”はそれとも違う。むしろ、本当に起きたのはこういう事だと主張する様な印象もあるのだ。」

“Operation Finale,” directed by Chris Weitz from a script by Matthew Orton, is like a patchy TV-movie version of “Munich.” There are moments of fascination, but it’s hard to separate the catch-as-catch-can aspect of the Mossad’s hunting down of Eichmann from the scattershot quality of the movie itself.

「マシュー・オートンの脚本を基に、クリス・ワイツが演出を行った本作“Operation Finale”は、“ミュンヘン”を切り取って繋げたTVバージョンの様にも思わせる。いくつかの魅力的な場面もそこに存在はする。とは言え、モサドがアイヒマンを追い詰めるためなら何でもする、という側面が、この映画の手当たり次第な描き方と一体化してしまっているのだ。」

Kingsley, you can tell, is itching to portray Eichmann as an inwardly seething and all-too-human monster, yet the character, as Orton has written it, remains a coldly manipulative cipher. That’s supposed to be the point, but it relies too much on the standard mythology of who Adolf Eichmann was.

「内面に強いものを秘めつつ、モンスターとしては人間的過ぎるアイヒマンを演じるベン・キングズレーは、やはり刺激的だと言えるだろう。脚本家オートンが書き上げたこのキャラクターは、冷たく人を操作する謎の男でもある。本来であれば、そこが映画のポイントとなるべきだっただろう。しかし実際には、アドルフ・アイヒマンが何者であったかについて語りつくされた逸話に、この映画は頼り過ぎている様である。」

言い方が悪いと怒られるかも知れませんが、結局、70年以上も前の戦争にいつまでも命を与え続ける事自体に、無理があります。

その出来事や史実をモチーフにした映画がつくられるのは良い事ですが、それもだんだんとアクションやスパイを盛り込んだ娯楽作品になって行くのでしょう。

ある程度のプロパガンダを盛り込みつつも、この作品の様に・・・

とは言うものの、オスカー・アイザックとベン・キングズレーは、十分に楽しませてくれそうな映画であるのが、この『Operation Finale』です(邦題は、フィナーレ大作戦?)。

どのように日本にやってくるか、その分野がお好みの方は楽しみにお待ちください。

それではまたっ!

参照元
The Seattle Times
Detroit News
Boston Herald
Variety

〔広告〕