ホラー映画「Slender Man」の評価とは?

ネットのカオスから子供達を狙う悪霊、スレンダーマンが映画化

今回は、ホラー映画『Slender Man』の評価をご紹介します。

インターネット上の画像や動画を通じて、10代の女の子達にその呪いが伝搬するという21世紀的な悪霊が、このスレンダーマン。

ただ、スレンダーマン現象の怖いところは、リアルの世界に本当に悪影響を及ぼしてしまった点に有ります。

スレンダーマンの刺傷事件

スレンダーマンが実際に引き起こした、おそらく最も恐ろしく最悪の事件は、(当時)12歳だった少女2人による友人の殺害未遂事件でしょう。

この事件は、The Washington Postなどが詳しく報じていますが、あらましは以下の様なものです。

2014年5月。アメリカ合衆国ウィスコンシン州にある街ウォキショーに住む2人の少女は、ネットで見つけたスレンダーマンのストーリーに酷く感化されていました(後に裁判の中で、2人は精神疾患が有ると診断されています)。

そしていつしか、この2人はスレンダーマンからのメッセージを受け取る様になります。伝えられている所によるとそれは、誰か他人を殺さない限り、スレンダーマンは彼女達の家族を皆殺しにする、というものだったと言います。

2人の少女が下した決断、それは、共に学校に通う友人をおびき出して刺殺しよう、という事でした。

5月31日の土曜日、2人は、かくれんぼをして遊ぼうと言って、もう1人の少女を森へと誘い込みます。そして彼女を19回も刺した上にその場に放置して立ち去ったのです。

しかし奇跡が起きます。2人に刺され酷い怪我をおった少女でしたが、這う様に森を抜け出し、たまたま自転車で通りかかった人物に救われたのです。幾度もの手術を受けた彼女は、今、学校へもどり通常の生活を取り戻そうとしています。

殺人未遂を起こした少女2人は、未成年としてではなく成人として裁判にかけられ、数十年以上の間、精神病棟への強制入院が言い渡されています。

今回ご紹介するホラー映画『Slender Man』は、この事件が起きた地域(ミルウォーキー市)での上映は行われない事が決定しています。さらなる悪影響を危惧した上での決定です。

そんな風に、物議も醸しているB級ホラーの一作『Slender Man』。アメリカ本国で公開された直後に、各メディアが載せた評価は、どの様なものでしょうか。

予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • Slender Man
    • スレンダーマン
  • ジャンル:
  • 制作:
    • 2018年
    • Mythology Entertainment
    • Madhouse Entertainment
  • 日本公開:
    • 未定
  • 監督:
    • シルヴェイン・ホワイト
  • 脚本:
    • デイビット・バーク
  • プロデューサー:
    • アダム・コルブレナー
    • トレーシー・ナイバーグ
    • ルイス・ソーラーソン
    • ジェームズ・ヴァンダービルト
    • サラ・スノー…他
  • 出演:
    • ジョーイ・キング
    • ジュリア・ゴールダニ・テルズ
    • ジャズ・シンクレア
    • アナリース・バッソ
    • アレックス・フィッツアラン…他

あらすじ

アメリカ合衆国マサチューセッツ州に住む4人の女子高校生、レン(ジョーイ・キング)、ハリー(ジュリア・ゴールダニ・テルズ)、クロエ(ジャズ・シンクレア)、そしてケイティー(アナリース・バッソ)は、今日お泊りパーティーをする予定です。

その夜、1人のメンバーの家に集まった4人は、夜遅くまで起きてネットを閲覧しながら、他の男の子達とビデオチャットなどをしました。しかし、そんな途中に妙な動画を見つけてしまいます。

それは、『スレンダーマン』を映したという映像で、2メートルは優にある長身の人物らしきものが映っています。それは、ネクタイを締めダークスーツを着ていますが、手足は異常に長く細く、そして顔には目も鼻も口も無いのです。

どうやら男の子達は、このスレンダーマンを呼び出そうとして、方法を探っている様子。ならばという事で、レン達女子は彼らより先にスレンダーマンを捕まえ、自慢してやろうと思い立ちます。

しかし、スレンダーマンは安易な気持ちで触れてはいけない、本当の悪霊だったのです。

程なくして、4人の女の子は自分達の周囲で奇妙な事が起きているのに気づきます。どこに居ても、視界の片隅にあの長身の姿が映るのです。そしてそれは、徐々に彼女らに忍び寄っている気配。

ある日、学校の野外授業で森へ行ったレン達ですが、その途中でケイティーが姿を消しました。その後も、周囲の仲間が失踪したり悲惨な事故に遭遇して行きます。

全ては、あのスレンダーマンの仕業だ。

そう確信したレンは、仲間の居る場所を見つけこの悪霊を退治するための方法を模索し始めるのですが、もちろん彼女にも、細くて長く恐ろしい魔手が伸びていたのでした・・・

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映画『Slender Man』気になる現地メディアの評価は?

まぁ、色々な所で評価も分かれ物議も醸しているのが、この『Slender Man』という映画かも知れません。

とは言え、先ず確認しておきたいのは、このB級ホラー映画『Slender Man』のプロットは、ウィスコンシンで起きた事件と全く関連が無いという事です。結局のところ、この映画自体も他にも多く有る様な、都市伝説をモチーフにした娯楽ホラーでしかないのです。

さらに言うと、問題のスレンダーマンが、(この映画にキャラクター原案者としてクレジットされている)ヴィクター・サージという人の創造物であり、2009年に、サムシング・オウフル(Something Awful)というネット掲示板へ投稿した、合成写真に映し出されていただけのもの。

スレンダーマンの映像が、子供に見せられない酷い何か、という訳ではありません(この映画はPG13のレーティング)。

そんなこんなで、各メディアがこの映画に与えた評価も、社会問題的な観点で批判する論調は無く、一本のB級娯楽ホラーとして、いつも通りの冷めた目線で語っているものが多い様です。

評価1:恐怖の展開まで眠らずに・・・

それでは、The Hollywood Reporterからの評価を、最初にご紹介しましょう。

ホラーが与えるべきイマジネーションや、その盛り上げ方などについての批評となっています。

【The Hollywood Reporter】

Sylvain White’s horror film attempts to bring an internet meme to life.

「シルヴェイン・ホワイトによるこのホラー映画は、インターネット上のミームに命を与えようと試みたものだ。」

Hustling the movie into theaters without showing it to critics, Screen Gems evidently hopes to milk that popularity for some quick cash before word of the film’s poor quality spreads.

「批評家への試写会を行わず、劇場へこの映画を押し込んだスクリーン・ジェムズ社は、作品の貧弱さが語られる前に名前を売り込む事で、素早く現金を手に入れようと狙ったのは確実である。」

Ideally, a movie like this would evoke the liminal space between consciousness and dreams, lulling viewers into a willingness to believe the kind of nonsense you stumble on to at 3 a.m., at the bottom of a rabbit hole of web searches. Instead of hypnotizing us, though, the film mostly tests viewers’ ability to stay awake — and the one or two actual creepy moments it has up its sleeve come far, far too late to be potent.

「理想を言えば、こういった映画は夢と意識の狭間にある境界を露わにし、午前3時のネットサーフィンという兎の巣穴の底で出合う、ナンセンスな話でさえ信じたくなる様に、人々を誘導するべきであろう。しかしこの映画は、我々にそんな催眠術をかける代わりに、眠気に対抗する能力を試すのみである。そして、この映画が温存する1つか2つの真に恐ろしい瞬間も、説得力を発揮するためには、出てくるのが実に遅すぎるのだ。」

評価2:リアルな事情を鑑みても、おざなりなだけのホラー

次にご紹介するのは、The New York Timesが載せた本作の評価です。

こちらは、ホラー映画としての娯楽度などについて書いています

【The New York Times】

In ‘Slender Man,’ Horror Emerges From the Internet

「映画“Slender Man”の中では、恐怖はインターネットからやって来る。」

The character’s possible amusement value, though, is severely hindered by a recent real-life attempted murder case in which two preteen girls, inspired by Slender Man fiction, stabbed a classmate. That the director Sylvain White and the writer David Birke felt justified in moving ahead with this project anyway says pretty much what you think it does about ambition in Hollywood. (And this isn’t even the first movie inspired by the character!) But as it happens, they’ve wound up concocting the most perfunctory horror picture I’ve seen in some time.

「そして、(この恐怖の)キャラクターが持っているはずの娯楽性は、最近リアルで起きた殺人事件、スレンダーマンに影響を受けた子供が級友を刺したという出来事によって、相当、疎外されているのは否めない。まぁとにかく、監督のシルヴェイン・ホワイトと脚本のデイビット・バークが、このプロジェクトを推進する理由が有ると感じたとすれば、それは、一般的に言われるハリウッド的な野心から来ているのだと言えるだろう(さらに言えば、このキャラクターにインスパイアされた映画は、本作が初めてでは無い)。そして結局、これが私にとっても、しばらくぶりに見る最もおざなりな作りのホラー映画であった、と言わざるを得ないのだ。」

評価3:ただの虚構ではスレンダーマンも恐怖に値しない

Chicago Tribuneによる評価です。

こちらで論じているのは、ただの虚構でしかないスレンダーマンが、いかにこの映画のプロットに埋め込まれたかです。

【Chicago Tribune】

How can we fear him if we don’t know anything about him?

「それが何なのか分からないのに、どうして恐怖する事が出来るだろうか?」

What does he want? Them. What’s he going to do once he gets them? We’re not exactly sure. That’s the problem with a Slender Man horror movie — there are no rules, because there is no mythology.

「この男は、彼らに何をさせたいのか?、彼らを捉えた後に何をするつもりなのか?。実際、そこが良く分からないのだ。これこそが、スレンダーマンを扱う映画の持つ問題点であろう。そこにはルールも見つけられない。なぜなら、背景が無であるからだ。」

In “Slender Man,” we don’t know anything about him, or what to fear, and the film doesn’t fill that in. All we know is he likes lurking in the woods and strangling young girls with his long, treelike fingers — and yet somehow he also has the ability to FaceTime menacingly.

「そしてこの映画“Slender Man”においても、観る側はそれについて何も知る由が無く、したがって恐れる理由も見つからない。そして、作品自体もその隙間を埋めようとしないのである。明らかなのは、この男が森に潜む事を好み、少女達を木の枝のような指で締め上げる、そして、不気味なFaceTime通話を送る事も可能だ、という事くらいである。」

That murky mysteriousness could lend well to the mystery of Slender Man, but instead, White puts Slender front and center. Is Slender Man real, or the figment of an overactive, internet-obsessed morbid imagination? The film tries to have it both ways, and it ends up with nothing at all.

「(この映画が持つグレイとブラウンが混じった暗い映像など)のミステリアスさを用いて、スレンダーマンの謎を上手く演出する事は可能であっただろう。しかしその代わりにホワイト監督は、このスレンダーマンを最前列で描き切ってしまう。スレンダーマンはリアルなのか、それとも、インターネット中毒のもたらす、過敏で病んだイマジネーションが生んだ虚構なのだろうか?。作品は、その両方を取ってみせようとする。そして結局、何も残す事にならないのである。」

評価4:ジャンル映画の中の派生的な一作でしかない

最後に、Varietyが載せた評価をご紹介します。

結局は、この『Slender Man』も、商業的な娯楽ホラーであるという事について書いています。

【Variety】

Be afraid, but for the wrong reason: It’s another horror film about another spectral creep who’s coming to get you if you watch another evil video.

「恐れるが良い、ただし変な意味で:これは、誰かが怖いビデオを見て怖い何かに付きまとわれるという、いつものホラー映画だ。」

Yet apart from its occasionally spooky images, “Slender Man” is a fundamentally derivative and empty-headed horror film. The more it tries to sketch in the rules of who Slender Man is and what he means and how he operates, the more you realize that the film is just winging it, stitching together old tropes and hoping that they blossom into something coherent.

「時には不気味さも漂う画像が有るとは言え、この映画“Slender Man”は、基本的に派生的で脳みそも持たない作品なのだ。それが、スレンダーマンの正体や存在、何を行うものなのかなどを描こうと努力する度、観客の方には、以前から有るネタをつなぎ合わせる事で何か意味のあるものが出来るよう意図しつつも、ただ恐怖をあおっているだけだと分かってしまう。」

The actresses make their presence felt, especially Joey King as Wren, a soulful waif in a punk choker, and Jaz Sinclair as Chloe, who beams with life until she calls up a video of Slender Man,

「ただ、チョーカーパンクを見に着け、ハートフルな孤児であるレンを演じるジョーイ・キングと、スレンダーマンのビデオを発見するまでは活力に溢れていたクロエ役のジャズ・シンクレアなど、ここでの女優達は、印象的な存在感を残していると言えるだろう。」

But like the victims in Freddy’s movies, the characters in “Slender Man” have a way of being tremulously emotional and, in that very desperation, entirely disposable. When they’re taken, it means next to nothing, because they were never anything but the sum of their fears.

「しかし結局、この“Slender Man”の登場人物達もまた、あの“エルム街の悪夢”に出てくる犠牲者同様、過剰にびくびくし過ぎていて、それが必死の様相を呈していてもなお全員が使い捨ての役どころである。彼らが姿を消したとしても、それに続く意味など生じない。何故なら、彼ら自体が恐怖心をあおる以外の意味を持たないからだ。」

それでもスレンダーマンの魔力は広がり続ける

オカルト的に言えば、ただのイラストレーションであったスレンダーマンが、ネットのカオスの中、様々にモディファイされる内に超常的なパワーを持ち、それが、あの2人の少女を凶行に駆り立てた事になるのかも知れません。

怖いイメージを楽しもうという一種の大人のウィットが、結果的に一人の女性を心身ともに酷く傷つける事件の引き金になったのは、このスレンダーマン現象の本当に恐ろしい所ではあります。

ただ、本作『Slender Man』は、ブレアウィッチや日本で良く売っている心霊ビデオ作品のように、フィクションを真実であるかの様に流布する姿勢は取っていません。

ある意味で、健全なB級ホラー映画として仕上がっているとも言えるのでしょう。

日本公開はいつでしょうか。日本に、スレンダーマン旋風は起きるのでしょうか。ホラーファンとしては、やはり楽しみな作品でもあるでしょう。

それではまたっ!

参照元
The Hollywood Reporter
The New York Times
Chicago Tribune
Variety

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