ボー・バーナム監督による青春映画「Eighth Grade」の評価とは?

エルシー・フィッシャーが演じる等身大の青春

ボー・バーナムの監督が、エルシー・フィッシャーを主演に迎えて描く負け組中学生の青春ドラマ、映画『Eighth Grade』の評価をご紹介します。

小学、中学、高校の時代が人生で一番キラッキラして幸せだった、という人達とは正反対の立ち位置にいる少女を、エルシー・フィッシャーが誠実に演じている事が話題となっている、そんな一作です。

ボー・バーナムの映画製作デビュー作品

この映画は、コメディアンであるボー・バーナムが、自身の手で脚本を書き上げ監督としてメガホンも取った、彼の映画製作者としての処女作品です。

題名にある通り、物語は、ミドルスクールの学年を終えようとする少女が過ごす、最後の1週間を中心に書かれているものとなっています。

主役のエルシー・フィッシャーは、『怪盗グルー』シリーズで声優としてアグネス役を演じている、新進の女優さんです。

苦悩に満ちた学園生活を送る1人の少女を見つめて行くという、映画『Eighth Grade』。公開時にアメリカのメディアが載せた評価は、どの様なものだったでしょうか。

予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • Eighth Grade
    • エイス・グレイド
  • ジャンル:
    • ドラマ
  • 制作:
    • 2018年
    • A24
  • 日本公開:
    • 未定
  • 監督:
    • ボー・バーナム
  • 脚本:
    • ボー・バーナム
  • 制作:
    • ジャマン・オブライエン
    • イーライ・ブッシュ
    • スコット・ルーディン
    • クリストファー・ストアラー
    • リラ・ヤコブ…他
  • 出演:
    • エルシー・フィッシャー
    • ジョシュ・ハミルトン
    • キャサリン・オリヴィエ
    • ダニエル・ゾルガドリ
    • エミリー・ロビンソン…他

あらすじ

「けして楽な事じゃないけど、ティーンの私達はもっと自分を信じて生きるべきだと思うの。」

そんな前向き&強いメッセージを発信し続けるチャンネルが、動画投稿サイトに有ります。投稿者の名前はケイラ・デイ(エルシー・フィッシャー)という女の子、13歳。

そのメッセージは、彼女自身が希望する生き方そのもの。とは言え、希望と現実は常に乖離しているものなのです。

ケイラは今、学校の第8学年を終了しようとしています。そしてその学校には、、、、彼女のいる場所は有りません。本当のケイラは、コンプレックスが強く屈折していて、そして学年で一番静かな女の子なのです。

そんな悩みは、彼女を男手1つで育ててくれた父親マーク(ジョシュ・ハミルトン)にも理解できません。終業式まであと1週間、でもケイラの気持ちは落ち込むばかり。

そんな時に、学年の勝ち組女子の1人ケネディー(キャサリン・オリヴィエ)が誕生日を迎え、その自宅で開くプールパーティーに、何故だかケイラも招待されてしまいます。どうやら、ケネディーの母親がそうさせた様子。

体系に悩みのあるケイラにとって、全員が水着であつまるパーティーなど地獄そのもの。この出来事が、彼女の心痛にさらなる拍車をかけた事は言うまでも有りません。

しかし、どんな日常にも小さな救いが見られるもの。ある日、学校の先輩であるオリヴィア(エミリー・ロビンソン)に誘われて、近所のショッピングモールへ出かける事になったのです。

モールでは、ライリー(ダニエル・ゾルガドリ)を始めとした数人のお兄さんお姉さんが、オリヴィアを待っていました。少し大人な彼女達の話は、学校での悩み苦しみを、何となく小さく感じさせてくれ、少し救われた気分になるケイラ。

これで、学年最後の一週間がちょっと明るくなると良いのですが、、、年上の人達と遊んだりしているケイラは、何となく危なっかしく感じるのはどうして?

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映画『Eighth Grade』、気になる現地メディアの評価は?

1人の人間にとって幼児体験は大切かも知れません、でも、10代の頃の学校生活も、その人の人生観や社会観にとても大きな影を落とし得るのも確かです。

まぁ、この年代は、世間を知らず、本人が思う程には力も無く、従ってフラストレーションを溜めがちで、さらに必要以上と言って良いほど自意識過剰なのも、色々と悪い方へ働いているのでしょうね。

とにかく、現在、子役女優として新進気鋭ぶりを発揮しまくっているエルシー・フィッシャーが、およそ本人が体験してはいないだろう最悪の学園生活を、リアルでありながら共感を呼ぶ演技で映し出しているというのが、この映画の中心的訴求ポイントの様です。

それでは、各メディアが与えた評価を見て行きましょう。

批評1:演出、演技、キャスティングにも称賛

先ずは、Los Angeles Timesが本作に向けた評価からです。

脚本や演出もそうですが、エルシー・フィッシャーを起用した事に対する高い評価が書かれています。

【Los Angeles Times】

Bo Burnham’s winning ‘Eighth Grade’ features breakout performance by Elsie Fisher

「ボー・バーナムの快作“Eighth Grade”で、エルシー・フィッシャーは出世作と言うべき演技を見せる。」

“Eighth Grade” is so spot-on, so painstakingly realistic, you may think you’ve stumbled into a documentary. The credit goes to first-time writer-director Bo Burnham and to whoever the casting genius was who found Elsie Fisher to play lead character Kayla Day.

「この映画“Eighth Grade”は、実に的を得ている上に痛々しい程にリアルである。観客は、ドキュメンタリー映画に来てしまったのでは、と感じるかも知れない。その称賛は、今回脚本および監督のデビューを果たしたボー・バーナムと、誰かは知らないが、主役のケイラ・デイにエルシー・フィッシャーを起用した、キャスティングの天才へ送られるべきだろう。」

Fisher is fantastic. She’s vulnerable, she’s desperate. She’s not just everygirl, she’s everyperson. We’re all in with her range of emotions and her split-screen existence between her smartphone- and laptop-centric worlds

「ここでのフィッシャーは実に素晴らしい。彼女は脆弱であり、がむしゃら、その姿は全ての少女を代表しているに留まらず、すべての人間に共通するものだ。見ている我々は、彼女の持つ多くの感情に飲み込まれ、分割画面に描かれる、スマートフォンとノートPCに縛られた彼女の世界の中へ取り込まれるのだ。」

Burnham nicely captures the quirks and cadences of teen-speak. In that sense, Eighth Grade also serves as a nifty time capsule of 2018. We can all relate to Kayla’s anxiety, though we all probably didn’t have school-shooter-on-the-loose drills.

「バーナム監督は、ティーン達の話し方やその韻律などを、心地よく画面に捉えてみせる。その意味で言うなら、本作“Eighth Grade”は、2018年を詰め込んだ小じゃれたタイムカプセルだとも言えよう。例え、学校での銃乱射犯が逃走中、などという(現代的な)訓練の経験がないとしても、我々観客は皆、ケイラが抱く不安に共感してしまうはずだ。」

批評2:意外な抑制を見せる演出

次は、Detroit Newsからの評価。

コメディアンである新人監督が、意外なほど抑制の効いてきちんとした演出をしていると、論評しています。

【Detroit News】

Eighth Grade’ keeps it real

「リアルに描かれる“Eighth Grade”」

In his brave, striking, spectacular writing and directing debut, comedian Bo Burnham empathizes with and exposes the heart of the American teenage girl. He is able to succinctly sum up the pain and heartache of the teenage experience, but he does so in a way that is relatable to everyone who has ever been a teenager while reminding viewers how much they don’t ever want to go back to those years.

「気概に満ち、衝撃的かつ劇的でもある、その脚本・演出デビュー作において、コメディアンでもあるボー・バーナムは、アメリカのティーンの女の子のハートの内面を、共感を引き寄せる形で露わにして見せる。彼は、10代の経験がもたらす痛みや悲観を、簡潔に組み合わせるセンスを見せている。そしてそれを、ティーンエージャーの時の記憶を持つ観客全てに通じ得る手法で描き、彼らがどれほどこの年代に戻りたくないと考えているかを、再び思い起こさせるのだ。」

Burnham has the restraint, and the soul, to not twist the knife the way some filmmakers would. He comes from a place of compassion, and in Fisher he finds an actress to make his film sing. “Eighth Grade” aces the test.

「通常の映画製作者であれば用いがちな物語のツイストも必要ない程、バーナム監督には抑制と魂の両方が備わっているのである。この監督は人の痛みを理解し、作品を成功に導く女優としての力を、主演のフィッシャーの中に見出してゆく。」

批評3:飾らない演技こそが良い

続いては、The Boston Globeの評価を。

ナチュラルだけれども共感が持てるエルシー・フィッシャーを讃えています。

【The Boston Globe】

‘Eighth Grade’ is a middle school marvel

「“Eighth Grade”は、ミドルスクール映画に驚きの新作だ。」

Burnham, a Hamilton native, found fame early in his career as a singer-comedian online and elsewhere, but in his feature filmmaking debut, he directs with sympathy and remarkable assurance.

「マサチューセッツ州ハミルトン出身のボー・バーナムは、元々、シンガー&コメディアンとしての成功を、ネットや他のメディアを通じて手に入れた人物である。しかし彼は、この映画製作デビューにおいては、思いやりと驚くような自信を持って演出しているのだ。」

And as Burnham’s filmmaking is unfussy yet thought through, so Fisher’s seemingly artless performance is actually a pretty brilliant piece of acting.

「バーナムの演出手法には、うるささは感じられず、それは考え抜かれたものでもある。つまりそれは、エルシー・フィッシャーの飾らない演技こそが、芝居の世界における輝かしい仕事の1つだ、と知らせている様にも思う。」

So Fisher’s a pro — and enough of one to convince you she’s just walked out of the mall and back into her bedroom, chewing her nails, her heart, and her hopes to the quick.

「既にフィッシャーはプロの役者である。そして、彼女は、ショッピングモールから自室へと逃げ込み、爪を噛み、悩んだり希望を抱いたりする様子を、しっかり説得力を持って演じる力を持っているのだ。」

批評4:青春のリアルを見せるための‘R指定’

最後の評価は、SFGateが載せたものを。

こちらは、思春期の少女の学園生活が中心であるストーリーでも、大胆なシナリオで描き切った事についての批評となっています。

【SFGate】

‘Eighth Grade’ is an authentic, compassionate debut film from Bo Burnham

「“Eighth Grade”は、ボー・バーナムの、真実味と思いやりに満ちたデビュー作だ。」

And yet this project has more than style, humor and humiliations. It has an overwhelming sense of compassion. Burnham takes viewers back to a place they would rather not go, and finds goodness, without sacrificing a bit of accuracy.

「そして、本作が屈辱というものをユーモアをもって描くというのは、単なる映画スタイルだけの問題ではない。そこには、我々の同情心がもたらす圧倒的な感覚が添えられているのである。バーナム監督は、彼らが戻りたいなどと考えるはずも無い場所へ観客達を引き戻す。そして、演出意図にはいかなる妥協もしないまま、その場所の価値を再発見させてみせるのだ。」

The movie received an R-rating because of its narrative choices, making the comedy/drama a potentially controversial film for eighth-graders to view. That may be Burnham’s boldest move of all – leaving in a few seconds that make his film more real, knowing it might limit the marketing potential.

「第8学年の子供に見せる事について、物議を醸しそうな筋書き上の選択をしたコメディドラマであるために、この映画は‘R指定’を受ける結果となった。収益性を阻害する可能性を知りつつも、作品のリアルさを際立たせるための数秒間を切らずに置く、これは、バーナム監督がこの制作過程で見せた、最も大胆な行動だとも言えるだろう。」

厭な思い出もユーモアで語れれば・・・

「どんなに悪い時期だって、いずれ笑い話に変わるもの」なんて言い回しは良く使われますが、実際には苦痛に満ちた記憶ほど、人間の意識の深い所に根差して消えないもの。そう容易く笑い話にはなりません。

そういった苦悩に対して、最も良く効くセラピーの1つは、何かの形でその体験を人に伝えてしまうという事でもあります。つまり、この映画『Eighth Grade』は、ボー・バーナム監督にとってはそんな位置づけの作品だったのかも知れませんね。

そのデビュー作が、各所でなかなかの高評価を受けているバーナム監督は、この後、クリス・ロックのステージを追ったNetflix作品の演出をしている様です。

彼のコメディアンとしてのウィットとセンスを生かして、さらなる劇場向け映画の制作が進展する事を期待しましょう。

それではまたっ!

参照元
Los Angeles Times
Detroit News
The Boston Globe
SFGate

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