地政学と科学のロマンス映画「Submergence」の評価とは?

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予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • Submergence
    • サブマージェンス
  • 制作:2018年 会社
  • 日本公開

映画的運命に翻弄される愛:映画「Submergence」

運命とは、実は不確かで、そして残酷なものです。

魂レベルでつながりあえる男女が運命の出会いを果たしても、二人はすぐに引き離され、それぞれ地の果てへ追いやられた挙句、運命が用意した過酷な試練に直面するのです。

そして迎えるクライマックスに、観客は涙を止める事ができません。

・・・

そんな風な映画的ロマンスの典型に、これまで作られてきた各種娯楽作品の大まかな内容を盛り込み、まとめあげたという印象なのが、今回ご紹介する映画「Submergence」です。

ただのラブストーリーで終わらせない、新鮮なアイディアが与えられた映画のようにも思えますが、逆に、ただ甘いムードだけに浸らせてくれないプロットでもある様です。

それを、ジェームズ・マカヴォイとアリシア・ヴィキャンデルという輝くキャストに演じさせたなら、クラシック作にはならなくとも、趣味が合う観客は十分呼び込めるハズ。

そんな読みが、この映画のプロデユーサー達に有ったかどうか分かりませんが、とにかく、大きな物語が展開する作品ではあるようです・・・

映画「Submergence」:あらすじ

フランスはノルマンディー付近のビーチリゾート。

生物数理学者のダニエル・フリンダーズ(アリシア・ヴィキャンデル)と、水道の技術者だというジェームズ・モア(ジェームズ・マカヴォイ)の二人は運命の出会いをしました。

ダニエルの仕事が海に潜る事だと聞いたジェームズは、最初はカメラマンか何かかと思ったらしいのですが、そんな彼に彼女は深淵でロマンチックな海の仕組みを説明します。

「海はね、5つの層に分かれているの・・・」

そんな交流の中で魂が響きあう二人。彼と彼女が、一瞬の内に恋に落ちた事は言うまでもないでしょう。

しかし、これからダニエルはアイスランド沖の海底探査に向かわねばなりません。彼女は自身が提唱する生命の起源に関する理論を証明しに行くのです。

同時に、ジェームズも仕事でアフリカへ向かいます。辛いけれどしばらくの間の別れ、またすぐに再開できるはずです。

そう、ジェームズが英国諜報部のエージェントであり、ソマリアに存在するアルカイダの拠点へ潜入する任務を追っていなかったなら、彼らはすぐに再開も出来たでしょう。

しかし、運命は二人にとっては逆風となります。今、その正体がテロリスト集団に知られてしまったジェームズは、どことも分からない地下の牢獄へと監禁され、日々、酷い拷問を受ける立場に陥ってしまったのです。

ダニエルには、自分はケニアに向かう、と嘘をついていたジェームズ。今や、彼女にさえ彼がどこにいるか知る術もありません。しかも、ダニエル自身の深海探査も予想外のトラブルに見舞われます。

あの美しいビーチで出合ったソウルメイトのジェームズとダニエル。はたして運命は、二人の間の偉大な愛を、成就させてくれるのでしょうか・・・

映画「Submergence」:キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • ヴィム・ヴェンダース
  • 脚本:
    • エリン・ディグナム
  • 制作:
    • アンドリュー・バンクス
    • ロバート・オグデン・バーナム
    • デイビット・ビール
    • フィリップ・モーロス
    • マイケル・ジャイルズ…他
  • 出演:

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映画「Submergence」気になる現地メディアの評価は?

過激な原理主義思想に心酔した人間達は、この世界で最も純粋な愛情でさえ平気で踏みにじるものだ。そんな暗喩の響きも少し感じられそうなのが、この映画「Submergence」です。

しかし、そんなプロパガンダ的な要素も、めそめそしがちなロマンスの感傷主義には、むしろリアリティを与える部分となるのかもしれません。

全体的な批評から感じるのは、ハリウッド的に派手で急いだ展開などは追求せず、誰かの悪口を言い過ぎる事もなく、むしろ、ゆっくりした足取りで話が進むのが、この映画だという事です。

批評1:曲がりくねった筋書きをゆっくり進む

観客の関心を引くため、スパイ・戦争・科学などの要素を取り入れたのが本作。

それでも、その背骨は大きな愛の物語でなければならず、その辺りをどんな風にまとめ上げるのかは、一流監督の腕の見せ所でもあるでしょう。

という訳で、全体を貫くムードがどう醸成されているかも気になるところですが、

「45年間に亘り劇場映画を撮り続けてきた監督ヴィム・ヴェンダースは、その間、作品には同じ語り口調を貫いてきた人物である。彼は、ふさぎ込んで黙想的なペース作りや、むっつりと下を向く様なシーン、そして、映画を支えながらも抽象的過ぎる長く曲がりくねったストーリー構造などを、捨てた事はない。この『Submergence』もまた、そんな映画スタイルをそのまま形にした様な一本だと言えるだろう。監督は、ロマンス、アドベンチャー、そしてスリラーという映画の基本要素を使いつつ、この映画を引き離される二人の男女のラブストーリーをしてまとめている。本作『Submergence』は、収益を上げるはずの要素、つまり一流の役者など配置して撮影されたものであるが、それでも、一定以上の観客を掴む気概は、持ち合わせていなかった様である。だとしても、ヴェンダース監督は何ら気にしないだろう、彼は、彼一流の映画作りをただ継続するだけなのだ。(Variety)」

、と言った様な批評が書かれています。

批評2:地政学の現実を感傷主義が覆う

ラブストーリーというもの自体が、一種のファンタジーだとも言えますが、一方で保守的な作りからは抜け出せないジャンルでもあります。

だから、その中でスリリングな展開をさせる事は、それなり大きな挑戦だとも言えそう。

なのですが、この「Submergence」に限って言うなら、新たな分野やストーリー展開を開拓すると言った野心が、あまり伝わってこない気もします。

そんな本作の作りについて別の所では、

「『Submergence』は、J・M・レッドガードの人気小説を基にエリン・ディグナムが脚色したという映画である。それは、精密で洗練され、引喩に富んだ散文として書かれたものだが、ここではディグナムの手によって、中程度な甘いハリウッド映画へと仕立て上げられている。その中で、二人の男女が出合って恋に落ちるシーンを描く事は、監督のヴィム・ヴェンダースにとっては問題ともなっていないだろうが、反面、それ意外の部分については、成功していると言い難いのも事実だ。一度、この恋人達が引き離されるとそれぞれのストーリーが交互に描かれるのだが、それも徐々に散らかった印象となる。ジェームズ・マカヴォイが演じる活動的な人物は、ヴェンダース作品を代表するものではなく、今回は、アリシア・ヴィキャンデルの方がその役目を担っている。これは、地政学の恐ろしい現実を知らせる事に挑む姿勢を持ちつつ、その話が展開する内には感傷主義の影が差す映画である。(The New York Times)」

、と、やや気の無い評価も書かれています。

批評3:一流俳優の存在も使い切ったとはいえず

全ての人が映画に刺激を求めている訳でもないので、本来ハリウッドでも、抑え目な語り口調の作品がもっと作られて良いのかもしれません。

そして、物語上のロマンスを体験したい観客層が、作品の斬新な設定について来れるよう配慮すると、その映画はゆっくりした展開の語り口になって行くのでしょう。

そんな映画の一つと言えそうな本作については、

「生物科学の研究者と謎に満ちた水道技術者の間の濃密な恋、という素材を考えた時、本作『Submergence』は、もっと人を惹きつける作品になっても良かったはずと思える。ただ、フランス・ドイツ・スペインのバックグラウンドを持つこの監督、ヴィム・ヴェンダースは、作り込みは完璧であるが曲がりくねったストーリーが、ただゆっくり展開するという、自身が最近作り続けている作風を再び再現しただけだ。アリシア・ヴィキャンデルとジェームズ・マカヴォイの二人には、否定できない外見上の魅力があり、同時にかなりな知性も発揮する事ができるはずであるが、彼らがここでやって見せた最良の事とは、ただ閉所恐怖症にはつらい環境に捕らわれてみせた、という点のみである。(Chicago Tribune)」

、と言った評価が書かれている事を、最後にお伝えしておきます。

このまま、サブマージェンスしないで・・・

今をときめく、カリスマ性と話題性が有る二人の俳優を主役のカップルとした本作ですが、その予算は控えめな1,500万ドル。まぁ、お金の使い方が上手かったと言えばそうかもしれません。

公開自体も、2017年にアルゼンチンやフランスなどといった国からぼちぼち行われ、米国の映画ファンは2018年の4月まで待たされる、というスローペース。

なんとなく、マーケティング的にも斜に構えたように見える所は、この映画の性格を表しているのでしょうね。

この映画は、日本の市場にこそ向いている一本とも言えそうで、未だにこちらでの上映スクリーンが決まっていないのは、もったいない話です。

あるいは、デジタル配信されているのでしょうか?

Submergence:水没、というタイトル自体もフワッとしていて、そのまま邦題にするのは難しそうですが、まぁ、配給会社の人々が素敵な題名を考案中なはずです。ファン層の人はしばしお待ちを、と言ったところなのでしょう。

それではまたっ!

参照元
Variety
The New York Times
Chicago Tribune

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