ジェームズ・フランコと最低の駄作:映画「ザ・ディザスター・アーティスト(原題)」の評価・あらすじ

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予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • The Disaster Artist
    • ザ・ディザスター・アーティスト
  • 制作:
    • 2017年 New Line Cinema / Good Universe / Point Grey Pictures…他

出来が悪いから愛される

議員とか芸能人の、ほんのちょっとの言い間違いやワードチョイスの悪さ、はたまた、声色の使い方までが、全社会的な炎上を巻き起こす最近の日本社会です。

そんな様子を見ていると、この世界に存在できるのは、一点の汚れもなく理論的に完璧なプロポーションを持ったものだけ、と誰かが主張しているようにも感じます。

でも、その反面、ルックスなどが若干以上にデフォルメしている動物とかキャラクターが、ブサかわ、キモかわ、と人気を集めたりするので、これまた、人の価値観の多様さを再認識させられる、興味深い事柄ともなっているのです。

まぁ、完璧に均整の取れたモノとかヒトだけで、自分の周囲を固めるのも悪くありませんが、それでは変化も無いし、選択の幅が狭くなってしまうのも事実でしょう。逆に、もの凄く不出来なモノの中を探索してみると、今まで接した事がなかった、面白くて愛すべき対象がみつかる可能性もあります。

映画でも、あまりに酷い出来の作品は、逆に、物見高い人達の関心を引くという事も有る様で、そんな作品の一つが、2003年に公開された低予算映画「The Room」でした。

「最低だから見てみたい」と言う、理屈では説明できない様なカルト的人気を今も誇るこの映画。実は、俳優ジェームズ・フランコのお気に入りでもある様で、そんな事情から、彼が監督・主演、そして制作にも関与して作りあげたのが、今回ご紹介する新作映画「The Disaster Artist」なのです。

原点となった(名)駄作へのリスペクトも充分盛り込んだという、この作品。一体、どんな作りなのでしょうか?

あらすじ

1998年のサンフランシスコ。

この地で開かれている演技学校に、1人の青年が入学しました。彼の名は、グレッグ・セステロ(デイヴ・フランコ)。

ハリウッドでの大成という大きな夢を抱き、演技の勉強に励むグレッグでしたが、同時に彼はそこで、人生を変える程の大きな出会いを果たす事となります。その相手とは、同じ演技学校に通う俳優志望の男性、トミー・ウィソー(ジェームズ・フランコ)でした。

トミーは、どの国とも分からないヨーロッパ訛りの英語を話しましたが、グレッグにとってこの青年が印象的であったのは、彼が追い求めていると思しき個性的な演技スタイルでした。

それは、メソッドアクティングと言うより、むしろ、芝居の設定をぶち壊すような、お遊びにも見えるパフォーマンス。しかし、想像もつかないようなトミーの行いは、何故かグレッグを魅了します。

さて、しばらくして演技学校を出た2人、いよいよ映画界に打って出る時がやってきました。

どういう訳だか、トミーはロサンゼルスにアパートの一室を確保しており、母親(メーガン・ムラーリー)の反対を押し切ったグレッグもそこに転がり込んで、ハリウッドでの俳優人生をスタートしようとします。

ですが、業界はそれほど新人にフレンドリーなはずも無く、彼らの売り込みも予想通りに上手く行きません。様々なオーディションなどを受けますが、どこでも、けんもほろろにお払い箱状態の2人。

そんなある時、グレッグがこんな事を言いだしました、「ハリウッドが僕らを必要としないなら、自分達の手で映画を作れば良いじゃないか。」

実に不思議な事に、トミーには際限がないと感じさせるほどの潤沢な資金がありました。やろうと思えば、小さな映画なら作れるのです。

早速、自分達の夢の実現にむけ、トミーが脚本を書きあげ、俳優を数人雇い、映画スタジオを借り切って彼らの映画製作が開始されます。

そしてそれが、史上最低クラスとして伝説を残す、あの映画「The Room」が誕生する瞬間だったのです・・・

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • ジェームズ・フランコ
  • 脚本:
    • スコット・ノイスタッター
    • マイケル・H・ウェバー
  • 制作:
    • リチャード・ブレナー
    • ジョセフ・ドレイク
    • ネイサン・カヘイン
    • ジェームズ・フランコ
    • スコット・ノイスタッター
    • マイケル・H・ウェバー…他
  • 出演:
    • ジェームズ・フランコ
    • デイヴ・フランコ
    • セス・ローゲン
    • アリ・グレイノール
    • アリソン・ブリー
    • メーガン・ムラーリー
    • ザック・エフロン
    • シャロン・ストーン…他

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‘最低というジャンル’の誕生を描くストーリー、気になる評価は?

ブサかわ、のキャラクターが、女性達から人気を博すのは、デフォルメしている中にも愛着を抱けるポイントを上手く仕込んだ、デザイナーさん達の手腕のおかげです。

同じ様に、超低予算の映画についても、出来の悪い体裁の中に愛着を感じさせる飾りを込める事も可能ではあるでしょう。

とは言うものの、ここで問題になっている「The Room」と言う作品は、それを意図して起用に作られたという訳でもなさそうです。

ただ、その無骨な作り込みには、ある種の純粋さだけは有ったという事なのかもしれません。

最低映画を扱う事の意味

その理由はともかくとして、映画「The Room」が、今でも深夜上映のカルト作品として、その人気を維持している事も確かなようです。

そういった現象自体が、一種の皮肉とも捉えられるし、また、大衆文化の多様な反応を示しているという意味では、同時に一つの救いでもあります。ですから、その周囲を取り巻くストーリーは、映画製作者としてもいじくって見たくなる題材なのでしょう。

その制作者として、ジェームズ・フランコが一役買って作り上げた本作「The Disaster Artist」については、まず、

「スコット・ノイスタッターとマイケル・H・ウェバーによる本作の脚本は、グレッグ・セステロ自身とトム・ビッセル共著の同名書籍を原案としたものだ。そして、映画『The Room』を観た事のある人なら、ジェームズ・フランコ(の監督・主演)によるこの映画が、その作品内の場面を巧みにコピーしている事が分かるだろう。そんな映画『The Disaster Artist』を観る楽しみの中心は、ここでフランコが演じてみせたトミー・ウィソーの中に有るはずだ。その様子は、陰気な不安さを漂わせながらも滑らかに動き回り、1人の禅の高僧の様にも感じさせる。そこからは、このキャラクターについてフランコが抱く崇敬の念も明らかに見て取れるだろう。(Chicago Tribune)」

、と言う評価が書かれています。

多くのカメオ出演が場を賑わすコメディ映画

この映画は、レーティング的にはR指定の大人向け作品で、ちょっと屈折した人間像を描くようなコメディ作です。

そして同時に、数えるのがちょっと大変な位の出演者や制作陣に囲まれて、ジェームズ・フランコが本物と見まごうごとき演技を披露する、それはそれで真剣な態度で作り込まれた現代的映画でもあるでしょう。

その作品について、別の所では、

「本作『The Disaster Artist』でトミー・ウィソーを演じるジェームズ・フランコは、マーロン・ブランドばりのメソッドアクティングを見せている。それは、見栄えも話し方も、気味悪いくらい本物のウィソーに似ているというのみならず、プロデュースと監督も兼任した彼としての、作品全体をまとめ上げる力になっているのだ。この映画自体は、ロサンゼルス市街や、制作に実際に関わった撮影施設などを周る、ガイド付きツアーのようにもなっており、そこで働く者達として、セス・ローゲン、アリソン・ブリー、ジョシュ・ハッチャーソン、シャロン・ストーンなどが、サプライズのカメオとして出演してもいる。酷い映画を作る過程を見せる目的で作られた本作は、映像的にも音響的にも特別なものではあり得ない。とは言え、作品としての力は充分持っていると言えるだろう。(Star Tribune)」

、と言う様な論表が出されています。

キャラが有るからやっぱりウケる

もちろん、これまで、数百万ドル程度で作られた最低の駄作映画というものも、無数にリリースされてきたはずですし、規模や派手さに関わらず、人の記憶から消えていった映画も数限りなくあるでしょう。

常に新しいアーティストが入って来るハリウッド界隈では、自分の名を残す事は大変で、そんな中で、理由はともあれ、その存在が話題となるのは意味深い事だと言えます。そして、他に類を見ない強いキャラクター性が有る、という事が、名を残す事の一つの原動力なのだとも思えます。

さて、その愛すべきキャラクターを、ジェームズ・フランコが画面上に再現している本作について、最後に、

「ひど過ぎて逆にヤバい、という評判を利用して、永遠に名を残そうと言うアイディア自体は、実は新しいものでもない。そして、ジェームズ・フランコがプロデュース、監督、そして主演も務めるという事で話題を提供する、この『The Disaster Artist』という映画は、史上最低とも言えそうな駄作映画に関する物語を、興味深く描くと言う意味において、『エド・ウッド』などの作品群に加わった一本である。ここでの演技者としてのフランコが、特別に自分のイメージを飾っていないとしても、(彼が演じる)トミー・ウィソーという人物の方にこそ、演じる事が不可能にも思わせる濃密なキャラクター性があるのは確かだ。フランコによる演出の側面を観てみると、特に終盤に差し掛かる頃にしばしば進行を止める感があり、そこでは、本来このテーマが持っているはずの自己没入や無能さといった問題定義も、描かれている見当違いのクリエーターについてフランコ監督自身が抱く強い愛着によって、弱められてしまっているとも言える。(CNN)」

、という評価が書かれている事を、ご紹介しておきます。

駄作の中に未来が見える!?

その参加者が、無難な結果が保証されている事にしか取り組まない社会は、必ず衰退して行きます。時には許されない位の失敗を許容する姿勢が、新しいエネルギーを取り込む入り口になるはずです。

と言う訳で、出来もしない映画製作に挑戦してみるのも、世の中を変える第一歩になるのかも知れませんが、映画「The Room」のように変な形でも名を残せる作品は、これまた多くありません。

やっぱり、人が無視できない程の最低映画なんて、狙って作れるものじゃなさそうですね。

だとしても、この、史上最低の映画が人気を博すという現象自体と、それを扱ったという本作「The Disaster Artist」などの存在は、とても興味深いし、そこからは何とも言えない愛らしさも伝わります。

まさに、映画的ゆるキャラと、その誕生の物語がここに有る、と言うべきでしょうけれど、ジェームズ・フランコ監督主演のこの映画、2017年12月時点では日本公開未定となっています。

参照元
Chicago Tribune
Star Tribune
CNN

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Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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