ホラー・コメディ映画「Get Out」について

〔カノジョの両親に取り入るのは難しい・・・〕

人間関係は、未知の化学反応みたいなものですから、それこそ、どの人間と人間が仲良くなるかについて、先んじて予測する事なんて無理です。

ましては、それが男女の中だったら、さらに摩訶不思議な現象が起こり得ます。それで、例えば娘が実家から遠方の土地で知り合った男子を連れて帰省してくる、なんてなると、親御さんへのプレッシャーは半端ないものになるのでしょう。

この映画「Get Out」は、そんなシチュエーションをもっと歪ませて描いたような、コミカル=ホラーなのだそうです。

その中心に居るのは、写真家として生計を立てているクリス(ダニエル・カルーヤ)と、そのガールフレンド、ローズ(アリソン・ウィリアムズ)のカップル。今2人は、カノジョの実家を訪れるために移動中です。

もちろん、クリスは緊張気味。だけれどもそこには、彼女の両親に合うというだけでない、もう一つ別の事情もありました。クリスは黒人男性、ローズは白人女性という組み合わせの事です。

さて、そうこうする内に、彼女の家に辿り着いた2人。待ち受けていた父親ディーン(ブラッドリー・ウィットフォード)と母親のミッシー(キャサリン・キーナー)は、クリスをハグ責めにする勢いで歓迎してくれ、招き入れてくれました。

クリスは愛娘のカレシですから、その場の雰囲気にぎこちなさがにじみ出るのも当然。ただ、出てくる話は「もし出来たなら、次もオバマに投票したさ」、とか、「タイガー・ウッズの大ファンなんだ」、とか。ローズの家族には、どうも人種の事を意識しすぎな感じがあります。

そしてもっと気になるのが、この家の庭師と料理人として働いているアフリカ系アメリカ人の2人、ウォルター(マーカス・ヘンダーソン)とジョージナ(ベッティー・ガブリエル)の態度。

もちろん、2人はただの使用人なのですが、なんというか、表情が無いというか冷たいというか・・・。それでクリスは、内心、不穏なムードを感じ取ったかもしれません。

それで、その悪い予感が現実となり出したのは、精神科医であるというミッシーが、クリスに催眠術をかけたいとか言い出した時です。・・・変ですよねぇ、初対面に等しい人にそんな事するなんて・・・

実は本当は、クリスが心配すべきだったのは、ローズの両親と上手くやれるかなんて事ではなかったんです。そこには、もっと恐ろしい、そして血なまぐさい運命が待ち構えていたのでした。

〔2017年、今の時点を捉えたような娯楽ホラー作品〕

アフリカ系からドイツ系の人物へと大統領が代わる今年、アメリカのショウビズ界は、人種問題によって何かと搔きまわされているようです。

まぁ、この映画「Get Out」がいつ企画されたものか分かりませんが、どちらにしてもスリラー映画として時代性にあった一本なのでしょう。とは言え、ものの見方は観客一人ひとりがそれぞれ決めれば良いんだろうとも思います。

とにかく公開第1週目には、3300万ドルの売り上げを上げて、売り上げランキングの一位に躍り出たのがこの一本。

その評判はどう?、といえば、、

「この映画『Get Out』は、表面上怖さと愉快さを併せ持つエンターテイメントである。それでいて、黒人の目線からみた白人社会を映し出すという、ちょっと珍しい作風の一本でもある。それは極度に偏執的でありつつ、そこから心地よい距離感を置いており、ちゃんとした認知力などから醸し出されたものでもあり、同時に、2009年には制作されなかったであろう、時代性を反映した一作でもある。(SFGate)」

、また、

「いたずらっぽくもあり、確実なステップの上に作成された、ジョーダン・ピールにとって監督デビュー作品であるこれは、ショック場面の間に辛辣な社会風刺を織り込んだという意味で、かのジョナサン・スウィフトの作品群にも原点が置かれているよにも思える。この映画『Get Out』は、この分野の映画の古典的なまじない事に、たくさんの社会批評を加えつつ、真冬のつまらない映画群から観客たちをすくい上げてくれるだろう。(The Washington Post)」

、という好印象が多いみたいですね。

「普通の人間関係上の緊張感」というのが、ホントはもっと怖いものへとつながり得る、的な着想を用いたのが本作だと思います。その怖いところの一部は、予告編映像で漏えいしちゃってるので、大体の方向性はわかります。

そこから察すると、これも純粋なホラー映画なのだと分かるので、観客が、人種をあつかった感動ドラマだと勘違いしてこないような、伏線になっているのかも。

「自身の監督デビュー作である本作に、ジョーダン・ピールが与えたスキルフルで特筆すべき要素とうのは、(同時に2つの別の印象を感じさせるという)描写手法である。これは恐ろしいとも愉快とも言い切れない作品で、いうなれば両方の性質を持ち、スラップスティックコメディとも感じさせるのだが、同時に、ちょっと気分を悪くさせもするのだ。(SFGate)」

、というのが作風に関する評価で、あるいは、

「ここでのピール監督は、ジョン・カーペンター、ジョージ・ロメロ、ジョン・フランケンハイマー、そして、アルフレッド・ヒッチコックといった演出界の達人から教えを乞うようにして、血塗られたアクションを盛り込むクライマックスに向け、確実に緊張感を高めてみせる。この映画『Get Out』を、他人種に対する憎悪を簡単にあつかうものだろうと予想している観客は、もっと深いニュアンスと不穏な雰囲気に包まれる体験に放り込まれるはずだ。(The Washington Post)」

、とか。ホラー好きにも充分以上に期待感をいだかせる一本、という感じでしょうか。

最後に、

「ピール監督が見せるこの極端な妄想は、不快感を起こさせるだけにも成り得たろうが、最終的には何か価値のある作品として成立してゆく。そして、ホラー映画も彷彿とさせるような今のこの時代に、大衆文化を映し出す一つのドキュメントとしても成り立っているだろう。(SFGate)」

、そして、

「残虐なウィットと鋭い風刺を合わせる、という、ホラー映画の定型をも踏まえたのがこの映画で、見せられるショックも笑いも、ともに楽しませるものとなっている。そして、本当の意味でリアルな世界を描くというのが、この映画に込められた真実であろう。(The Washington Post)」

、と、なかなか、スパイシー(血なまぐさい!?)な印象もある、面白そうな一本ですよね。

多人種・多文化が一束になっているアメリカの事は、僕たち日本人には簡単に評せないし本当の理解も難しいのだろうと思います。

そんな問題を取り入れたこの作品、社会的背景も助けて、比較的小型の映画ながらスマッシュヒットになっちゃうかもしれません。そんな時、日本市場へどうやって紹介されるのでしょうかねぇ。

まぁ、社会問題はからんでくるのでしょうけれど、基本は娯楽作品なので、新鮮なタイプの恐怖映画として受け入れればよいだけなのかな?

いずれ、どこかで触れてみたい一本ですね。それではまたっ^^/。

参照元
SFGate
The Washington Post

ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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