映画「バーニング・オーシャン(Deepwater Horizon)」について

〔マーク・ウォールバーグが最悪の海洋事故を救う!?〕

世の中には「手抜き工事」ってのが相当数あるんだと思います。でも、中にはその手抜きがとてつもない大惨事へ発展することもあるんです。

ピーター・バーグ監督によるこの新作映画「バーニング・オーシャン(Deepwater Horizon)」は、現実に起きた大惨事の一つを描くドラマ。

2010年4月20日、イギリスの石油会社がメキシコ湾に持っていた海底油田が起こした爆発・炎上・油流出事故の真実を明かします。

この物語、当時、この油田で電気系の技術者をしていたマイク・ウィリアムズ(マーク・ウォールバーグ)の目を通して描かれます。彼は、3週間の職務担当期間のために丁度このオイルリグへやって来たところ。ここでは、別の技術者のアンドレア(ジーナ・ロドリゲス)や、ケイレブ(ディラン・オブライエン)を含む多数の労働者を、指導力と確かな仕事で尊敬を集める責任者、ジミー(カート・ラッセル)が統率しています。

そして彼ら全体を後ろから監視しているのが、親会社から派遣されてきた重役、ヴィドリン(ジョン・マルコヴィッチ)。実はこの油田施設、行程が予定より43日も遅れているんです。

実際のところ、この施設には問題が山積で、トイレや空調さえもまともに働いていません。ジミーは、その問題を抜本的に解決してから前に進むべきと考えていますが、ヴィドリンには時間がありません。

だから彼は、いくつかの必須安全テストを省くように、施設スタッフに強要しました。もちろん、ますます設備は不安定で危険な状態へと落ち込んで行きます。

そして迎えた4月のあの日。ネットのテレビ電話で地上の自宅に居る家族と会話中だったマイクの耳に、突然、何かが破裂したとしか思えない爆音が聞こえてきたのです・・・

〔単なる災害アクション大作の領域にとどまらない〕

現代人というのは、会社などの組織に属さないと、ほぼほぼ、まともな社会生活は出来ない生き物です。

組織の良いところは、そんな人々に働くためのフレームワークを提供してくれるところ。しかも、それにお給金までつけて手渡してくれます。どんなにスキルがある人でも、それを生かす場所がなければ一銭も生み出す事ができないので、この働く機会というのは一人の人間にとって実に大切です。

組織の悪いところというのは、メンバーがそれぞれ無責任になりやすいという事。経営者は現場の問題に無関心で利益のためなら無茶な事も平気で要求し、現場担当者は上からの命令だったらどんな不正でも行うように成り得ます。

一般論的に言うと、この世の中、いんちきする人間が余計に儲かる訳で、「みんなでやればコワくない」が横行し得る組織の内部は、そんな過ちをおかすリスクを抱えています。

さてまぁ、そう言った大企業の持つ社会的な問題性が、ストーリーの根幹に置かれているのがこの映画な訳ですが、同時に、一級の俳優と演出家を擁したメジャー・ハリウッド作でもあります。

「ピーター・バーグ監督が、同じくマーク・ウォールバーグを起用して2013年に制作した‛ローン・サバイバー’と同様に、彼は本作‘Deepwater Horizon’においても、動じない正直さ、衝撃的な信憑性、そして自身の才能と限界に関する鋭い認知力を使いながら、この一本を描こうとしたようだ。そしてこの映画の107分間の上映時間を通じて、監督は自分の作風を完璧と言って良いほどスムーズに遂行してみせたのだ。俊敏かつ冗談の入る余地もなく、本作は、クロスフィット流の節制術かパレオダイエットを実行したと形容してもよい大型ハリウッドパニック作品でありつつ、過酷な悲劇の中に過剰な愛想などは振りまこうともしない映画と言えよう。(Los Angeles Times)」

これまた、どんな真実を暴いてみせようとも、一般大衆が興味を持ってくれるカタチで提供しないと、誰の目にも触れないことになっちゃいますからね。これは、そんな大作映画の一本として、微妙なかじ取りをうまくやっているという事なのでしょう。

「一定レベルの要素がそろうと、ディザスター映画は娯楽としてなりたつ。そして、この映画‘Deepwater Horizon’には、(他作品に見られるような)そういう要素は一つも含まれていないのだ。人間描写を好む監督ピーター・バーグによるこれは、仕事の後に観て帰れば高揚感を感じるものであると同時に、ともすれば、的を撃ち損じた一作とも言えるだろう。(Chicago Tribune)」

正直、人的な被害、そして大きな自然環境破壊ももたらした「ディープウォーター・ホライゾン」の事故を、ヒロイックなストーリーとして売り込むのも、、、、あざといと言えばそうでもあります。

「最終的に訪れる燃えさかる地獄模様は、悪夢のごとく超現実的である。そしてこれは、エネルギッシュでありながら無駄にカメラを振り回さない、撮影監督エンリケ・チェディアックの手により収められている。バーグ監督は、‘バトルシップ’で見せた軽薄さは過去に捨て去り、ここに見せる映像制作のセンスからは、その素材へと、実在した人々両方への敬意がにじみ出てもいる。本作を見ても、演出の都合でこの惨劇が大げさに描かれたとか、作品全体がやりすぎのCGで色付けされたとかいう感覚を持つ観客は現れないだろう。(Los Angeles Times)」

こう言う映画の持つもう一つの意味は、科学技術が自然を常に制御し得るか、という事への問いかけです。でも、シェールオイルが取れすぎてウハウハしていて、大型車の販売も絶好調な今の米国には、その問いかけは嫌味が強すぎるのでしょう。

実際、シェールオイル採掘の自然環境への影響度合いは、これから分かってくる問題でもあります。

「この中の惨劇は、鋭く恐ろしく、そして時に混乱している。本作は元々、J・C・チャンダーが、多めのアクションと少なめのディテールをプロデューサー達から求められ、その制作の手を止めた後、多分、バーグ監督が引き継いだものである。それでも、ここで描かれるアクションは、登場している人々の実際の働きにより誘発されてゆくものだ。その事は、彼らが脚本の上で用意された人物像より、むしろ真の労働者の様に見えたとしても、むしろ上手く機能した部分だと言えるだろう。(Chicago Tribune)」

さて、「無責任体質」とか「欠陥」とか「負の遺産」とか、最近の日本でもちょっとした流行語の様相を呈しています。そしてそんな時には、「大改革」って書いた旗をふるヒーローが登場します。でも、歴史上、抜本的にそういった問題を解消できた試しはありません。

基本は、みんなでやれば怖くない、という人間の性質にあるので、社会教育や行政の仕組みがこれを消去することなんて出来ないんだろうと思うんですね。

人間にできる唯一の事は、自分は愚かな存在だ、と気づく事しかないと思います。

それではまたっ!。

参照元
Los Angeles Times
Chicago Tribune

ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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