映画「13 Hours: The Secret Soldiers of Benghazi」の前評判

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〔’12年9月11日の事件を、ド派手に描いて見せるぜっ!〕

このちょっと長い題名の映画「13 Hours: The Secret Soldiers of Benghazi」は、娯楽アクション映画監督のマイケル・ベイが、実際に起きた悲劇を最高に派手な娯楽作として描き切った一本です、、、マルっ!

と、ダイレクトに語る方が、多分グーグル検索順位としては有利かもしれませんが、たとえ監督の作風がどうであれ、この映画が作られた目的が何であっても、その存在は、不安定化した今の世界情勢の中においては、もっと重い意味を持っているはずです。

このストーリーは、リビアはベンガジに設置されたアメリカ領事館において、2012年9月11日に実際に起きた悲劇をドラマ化したというものです。そしてそこには、実存する関係者、そして、軍事組織GRS(Global Response Staff)などの名前が、そのまま使用されています。

話の中心に置かれる6人のGRS達は、以下のとりです。

ジョン・シルバ(ジョン・クラシンスキー)は、10年間ほど、コソボや中東での経験をつんだ元シールズで、いまは、GRSの契約スタッフと、不動産売買という二足のわらじをにより生計をたてています。

彼とパートナーを組むのが、やはり元シールズで、ソマリア、アフガン、そしてイラクなどの武勲から勲章を受けた事がある、タイロン・ウッズ(ジェームズ・バッジ・デール)。彼は、このベンガジでの任務をGRSとして最後の仕事と決めています。

デイヴ・ベントン(デヴィッド・デンマン)は、元海兵の軍曹で、監視、偵察、狙撃などのプロフェッショナル。そして、冷静沈着な男ジョン・タイジェン(ドミニク・フムサ)は、すでにGRSで何度か任務経験を積んだ元海兵隊員。

一度は、地元の街で警察長として就職したマーク・ガイスト(マックス・マーティーニ)は、対テロリズム行動の訓練官や、ペルシャ語を操る尋問官としてのスキルがある人物。また、クリス・パラント(パブロ・シュレイバー)は、世界中の紛争地域でGRSの作戦指揮をとってきた元陸軍兵士で、中南米やアフリカでの作戦経験が豊富です。

彼らが契約しているGRSは、紛争地に潜入したCIA局員を、敵の攻撃から守るために存在し、ニューヨークのテロ以降に設立された組織です。

そして今、彼ら6人が派遣された先は、リビアのベンガジ、そのアメリカ領事館からさほど遠くない場所に、秘密裡に設置されたCIAの拠点、アネックスという部署で、そこの指揮をとっているのは、通称ボブ(デヴィッド・コスタバイル)という人物。

本当のCIAスパイは、自動小銃やロケット砲など振りかざしません、むしろ静かに、現地での諜報活動を行う事が求められます。GRSのメンバーは、そんな諜報員の身辺に安全を確保するのが任務なのです。

でも、彼ら全てにとって、2012年の9月11日、その夜は、在リビア大使のクリストファー・スティーヴンス(マット・レツシャー)がベンガジに滞在している、というだけでなく、特別に重い意味を持つ日付になりました。夜の10時になろうかという時、それまで静かだった領事館の周囲に、どこからともなく群集が集結し、しばらくもみ合ったあとその内の誰かが、自動小銃を発射しだしたのです。

もとから彼らの目的は、火器による領事館の襲撃でした。

その群集は、ゲートに殺到すると同時に塀をも乗り越え、ほとんど反撃される事もないまま、なんと領事館を制圧してしまうばかりか、内部の人間を襲撃し始めました。そこからの救援要請は、もちろんアネックスでも傍受していましたし、GRSのメンバーは、当然、自分らが真っ先に駆けつける役目と思ってもいたんです。

しかし、彼らに対する命令は、待機でした。

アネックスの任務はすべて極秘、そこに米国諜報部や軍隊が居る事さえ公表されていません。GRSメンバーもまた、本来そこに居てはいけない軍隊だったのです。

しかし、領事館を取り巻く情勢はさらに緊迫度合を高めます。そして、ついに6人のGRSメンバーは、彼ら自身の任意により救援活動を開始しました。ほぼ、一切のバックアップがない状態での戦いです。

それが、凄惨な、あの13時間のはじまりだったのです。

〔超娯楽監督が描く、まだ生きているストーリー〕

2012年の当時でも、カダフィー政権が倒れてからのリビアは、非常に不安定で危険であるという分析を、アメリカ政府自身が出していたそうです。そしてたぶん今、その不安定さと混沌はヨーロッパから東南アジアまで広がってきています。

いずれは、日本でも過激思想の持主による何らかのテロが起きる、と予測できるところですけれど、そんな恐怖に支配された世界では、武器に倒れた一人の命の重みが、どんどんと軽くなってゆくようで、むしろそちらの方が怖い気もしますよね。

まぁ、どういう経緯で、どのプロデューサーが、本作の演出をトランスフォーマーの監督のところに持ち込んだのかは分かりませんが、その時点で、良くも悪くもある程度の物議になることは想定していた事でしょう。

「2012年に発生し、時の在リビヤ大使を含む4人が命を落とした襲撃事件をドラマ化したというこの映画は、武骨に殴りつけるような作風のものだ。まぁ、監督のマイケル・ベイが、この実りない銃撃戦の中で、行ったり来たりのアクション要素を取り入れたのが一つの救いなのかもしれないが、あなたが関心する事と言えば、トラックというのはタイヤが燃えた状態でも、結構走るもんなのだなぁ、という程度であろう。(The New York Times)」

騒がしくやかましく、アクションのカットを短くつなげるベイ監督の手法は、ここでも健在なようでありますが、

「マイケル・ベイは、実話を基にした戦争アクションの制作に踏み切った事について、称賛されるべきだし、その映画「13 Hours: The Secret Soldiers of Benghazi」が、正義の人々にとって喜ばしくもない内容の話である、という点には、さらなる賛美が送られてしかるべきである。(SFGate)」

お安い、勧善懲悪のドラマでもない、という事でしょうか。

そして、約5000万ドルを投じて制作されたこの映画は、当然、軍事アクションのファンを劇場に呼ぶものでなくてはなりません。

「最大級のマキシマリストであるベイは、ニュアンスやサイズ感やペース作りと言ったような、いわゆる芸術性の機微にはまったく関心もなく、その代わりに爆破の仕方には長けている人物だ。彼が持つ、こういった大騒動の描写に対するコミットメントを、ある種、興味深く感じさせる要素というのも、それが、自己パロディーから発生したのか、または、自己認識の欠如からなのか、あるいはその両方に起因しているのかが、明確に示される事もないという事実である。(The New York Times)」

そして、

「しかし、ここでの彼は、そのやりすぎ映画手法を控えめにスケールダウンしてもいる、それは、このC.I.A.工作員達を襲った試練を語ると言う事は、まじめに扱うべき問題だと感じたからなのかもしれない。(The New York Times)」

実際の事件をウィキで調べると、スティーブンス大使の救出に半ば成功しかかった二人のGRS隊員タイロン・ウッズと、グレン・ドハティ(劇中ではトビー・スティーブンスが演じる)も、結局、大使もろとも殺害されてしまったそうです。

「実話ベース作品の一つである、この映画「13 Hours: The Secret Soldiers of Benghazi」は、登場する特殊部隊員を実名で描いており、やはり、彼らを良い人に描き過ぎているのも事実だろう。彼らは親切過ぎるし、正義感が有り過ぎるし、愛嬌にあふれていて全員とにかく素晴らしい人間すぎるのだ。そして観客は、ここで礼儀正しい理想主義者として描かれるスティーブンスに、暖かい感情を抱かされる事だろう、彼の様な人にこそ、国を代表してもらいたいと思うはずだ。しかし、その死にざまの悲惨さを描写し、実感させる映画作品を突き付けられる彼らの遺族に対して、同情の念を抱く観客も居る事だろう。(SFGate)」

あるいはベイ監督についての評価をもう少し見てゆくと、

「本作「13 Hours」は、リビア人達に加えアメリカ政府を悪者として描いている。そして、マイケル・ベイは、その感度の鈍い映画スタイルにとっては、一貫性など前提にされないという事を、証明し続ける事で自身のキャリアを構築してきた人物でもあり、その部分こそが、影の力からの脅威に、一つの姿勢を表せる要素なのだと言えるだろう。その意味でいって、彼がここでおそらく批判している、ほとんど顔もみせない政府の人間達を、彼自身が反射している訳でもあり、その姿はまさにアメリカ人そのものと言えるのだ。(The New York Times)」

オリバー・ストーンのブッシュ以来でしょうか、実在、かつ存命の人物を、大々的に取り上げる事も平気、な感じになってきてしまったハリウッドですが、それも、そこそこのお金が動けば問題にならないのがアメリカなのかもしれませんね。

しかし、時に、その問題は、重く大きすぎる場合もあると思いますし、政府の行う秘密諜報活動がもつ冷酷なイメージも、結局、世の中に対して、どう作用する結果になるか、か分からない部分でもあります

さて、まぁ、最後に、

「そして、この作品は語るにも奇妙な一本である、尺も長く、実に気落ちさせる内容で、部分的に娯楽を混ぜてありつつ、さらにリアルさも兼ね備えているというものだ。そして、悪いと言う事も良いという事もない、その印象は、おそらく時とともに改善されて行くのだろう。(SFGate)」

という評価も有りました。

多分もし、共和党が次の米国の政権を担う事になったら、これまでのどちらかと言うと厭戦的で消極的な外交から、真逆の政策を打ち出すと思われます。それは、必要とされていると言えばそうだし、非難の的にもなると思います。そして、同時に敵も増やすことになるでしょう。

ただ、軍事作戦が増えれば、また映画のネタも次々と供給される、という事でもあります、この映画がうまくいったら、マイケル・ベイの所には、さらなる軍事映画のオファーが舞い込むのでしょうか。

まぁ、なんて言うか、そう思うとなんだか微妙な気分になりもするんですけど、、、、ね。

参照元
The New York Times
SFGate

ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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