1976 ハイジャック機奪還作戦を描く:映画「7 Days in Entebbe」の評価・あらすじ

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予告編と作品基本情報

  • タイトル:
    • 7 Days in Entebbe
    • 7 デイズ・イン・エンテベ
  • 制作:
    • 2018年 Participant Media / Pellikola / Working Title Films
  • 日本公開
    • 未定

20世紀後半に起きたアノ事件を再映画化

一つの出来事も、歴史の本に載る1項目になってしまうと、その現場で本当に何が起きたかなんて知り様がなくなってしまうものです。

実際、その場所に居た人達だって、それぞれの立場や視点により捉え方は様々、だから体験談そのものも一様にはならないのです。

結局、一つの史実についても、何が起きたのかは諸説が分かれる事になりますが、そういった歴史の曖昧さは、クリエーター達にとって美味しいネタの発掘場所となるのでしょう。

ハリウッドの映画業界辺りでも、真実と言う看板と娯楽のための脚色を上手いバランスでまとめ上げた作品は、広い範囲で強い訴求力を持つと同時に、政治的・社会的にも強いメッセージを大衆に伝える事が可能です。

つまりそれは、関係各所からの資金集めにも有利という訳ですね。

さて、イスラエルとパレスチナ間で長く続くいがみ合いの歴史上でも、大きなポイントであるハイジャック事件を、国際的なキャスティングで(再び映画化したというのが、今回ご紹介する「7 Days in Entebbe」です。

既に色々な所で映像作品にされてきたこの事件、21世紀の今になってどのようなストーリーに描かれているのでしょうか。

あらすじ

1976年6月27日。

あるエールフランス機が、84人のイスラエル人を含む総勢200人の乗客を乗せ、イスラエルはテルアビブからパリへ向かう途上にありました。

そしてこの機上には、他とは違う目的で搭乗している二人のドイツ人が居ました。彼らの名前は、ブリジット・クールマン(ロザムンド・パイク)とウィルフリード・ボズ(ダニエル・ブリュール)。

実はこの二人は、ドイツにおける左翼過激派のメンバーであり、その目的はただ一つ、この機体をハイジャックする事です。

彼らドイツの過激派は、パレスチナ解放人民戦線・外部司令部と結託し、イスラエルの民間人を人質にとって、収監されている仲間の即時釈放を要求する計画を実行に移したのです。

彼らの作戦は、機体を制圧した後、イスラエルと反目しているウガンダの空港へ向かわせ、そこの建物に陣取って要求が通るのをを待つというもの。政治的に対立している国の中であれば、イスラエルの特殊部隊もうかつに軍事作戦などを展開できないはずです。

かくして、ハイジャック機は反イスラエル国であるウガンダのエンテベ国際空港へと着陸します。

犯人達の目論見どおり、イスラエル政府内部にはただならぬ緊張が走りました。元々、テロリストとは一切の交渉をしないという姿勢を掲げるイスラエルでしたが、この状態では実力行使もままなりません。

イスラエル首相イツハク・ラビン(リオル・アシュケナージ)と国防大臣シモン・ペレス(エディ・マーサン)は、あらゆるオプションを検討しながら、対立国であるウガンダ大統領イディ・アミン(ノンソ・アノージー)とぎりぎりの折衝を続けます。

そうしているうちにも、テロリストの要求はエスカレートし、要求が受け入れられるまで子供を一人づつ殺害するとまで言ってきました。

もうぐずぐずしている時間はありません。イスラエルは、エンテベ空港の精密な模型を作りリハーサルを繰り返してきた特殊部隊を、アミンの了承を得ないまま派遣します。

しかしそれは、部隊の本部がある基地から数千キロもの距離を、アミンに気づかれずに移動しなければならないという、難しい作戦でもありました。

現地時間の深夜、イスラエル空軍機はエンテベ空港へ強行着陸します。はたして、200人の無実の人間を、彼らは救い出す事が出来るのでしょうか・・・

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • ジョゼ・パジーリャ
  • 脚本:
    • グレゴリー・バーク
  • 制作:
    • ジョー・バーン
    • オリヴィエ・クルソン
    • ジョナサン・キング
    • ライザ・チェイシン
    • ジェフ・スコール…他
  • 出演:
    • ロザムンド・パイク
    • ダニエル・ブリュール
    • エディ・マーサン
    • ベン・シュネッツァー
    • ノンソ・アノージー…他

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気になる現地メディアの評価は?

ハリウッド映画にもプロパガンダ的な役割があるというのは、言わずと知れた事実ではあります。

そんな中で、中東のテロリストは、あまり斬新な切り口で描かれることも無いでしょう。

実際この映画からも、ハイジャック事件に際し、命の重みと外交上のポリシーの間で苦悩するイスラエル政権と、この事件に一機にケリをつけたイスラエル特殊部隊の活躍を、一般的なヒロイズムの中で描いている、そんな印象が伝わります。

映画は必ず誰かを喜ばせるために作られるものですが、ブラジル出身の映画監督が2018年の今、この話を全米に向けて放つ目的はどこにあったのか、気になる所でもあります。

救出劇スリラーに歴史の意味を加えて

この事件の顛末は知れているので、最終的にこのストーリーも、戦争アクションの娯楽性で締めくくる必要は有ったでしょう。

と言う意味では、史実をベースに作られたとは言うものの、あんまり重くないのが本作かもしれません。そんな作風については、

「この映画『7Days in Entebbe』は、その題名が示唆する通りに、従来とあまり変わらない時間経過型のスリラーである。そこで監督のジョゼ・パジーリャは、舞台であるウガンダとイスラエル、そしてハイジャックが計画されたドイツの地を、行ったり来たりしながら映像をつないで見せる。加えて、その中を貫くダンスシーンには、パワフルかつ誌的な視点を与えてもいるだろう。そして、その場面の見栄えに関しては、ここで描かれる救出軍事作戦の精密に練られた動きを大まかに比喩しているとも言える。しかし、そういった挿入場面はさらに深い部分において、作品が持つ真のテーマを表している。それは、テロリストと交渉はしないというイスラエルが固執する姿勢に、長期的に見て本当に意義があるのか、この国が敵と一切話をしないのであれば、どうやって和平を実現できるのだろうか?、というものだ。その疑問点は、作品の一番最後に一つの決着を見るのだが、そこまでの過程において本作は、その意義を内に秘めた娯楽的なスリラーとして描かれる。(The Washington Post)」

、と言う批評もあります。まぁ、単純に一つの映画として楽しむ作品、なのかも知れません。

クライマックスでの失速

歴史自体には明確な結論は無いものですが、その一方で、映画というものは何か決着を用意しないと終わりません。

だから、こういった史実をベースに書き上げたストーリーであっても、最終的には、製作者の考え付いた場所へ向かうのだと思います。

その辺りの問題については、

「悪い映画というものも千差万別だ。しかし、この『7 Days in Entebbe』は、それ自体が自滅するための全く新しい手法を生み出した一本である。もちろん、この映画がもたらす体験の半分は、盛大なクライマックスを期待させるというものであるのだが、我々に提供されるその結末は、ばからしいとも言えるものだ。当然、この映画はあの救出作戦を描くために存在する、ただそれは、あちらを描いたかを思えばこちらを、と言った具合に、出たり引っ込んだりの手法で映し出される。加えてそこには、軍事作戦とダンスシーンを同時に見せたりもするのだ。とは言え、その部分を除けばこの映画『7 Days in Entebbe』は、称賛をもって目を向けるべき歴史の一幕を描いた一本だと言えるだろう。(SFGate)」

、と言う評価が書かれています。

歴史をネタにしただけのアンサンブル映画

人種間の分断とかイデオロギーの軋轢、そしてセクハラ騒動などで、大きな波風が立っているように見える今の米国ですが、そんな時代に公開する事もセンシティブな感じがするのが、本作の様な映画です。

とはいえ、あまり思想や政治の分野を刺激する意図も無さそうなのが、この「7 Days in Entebbe」ですが、最後に、

「1976年の7月4日、ハイジャックの人質が居るウガンダの空港へイスラエルの特殊部隊が突入した。そして事件後1年が経つ間に、この軍事作戦を扱う複数以上のドラマが制作される事になった。大挙してその作品群に出演したのは、当時の名優と新人俳優達だ。ジョゼ・パジーリャ監督が作ったこの映画『7 Days in Entebbe』は、それら当時の作品への回顧を感じさせると同時に、現代的にアップデートも加えつつ、そつなくまとめられたアクション映画である。そこでは、歴史上に実在した人々を各国の有名俳優を集めて演じさせながら、スリラー映画の興奮と地政学的に真摯な態度をバランスさせようと試みる。彼がここでダンスシーンを織り交ぜた事は、画面の切り替えによりペースを生み出し、閉じ込められた者の緊張感を強調し直す意味においては、その技量を示していると言う事も可能だろう。しかしながら結局、歴史そして政治についての一貫した視点を欠いたまま、映像の関連性だけを利用する事で、むしろ映画の薄っぺらさを醸成してしまった感もあるのだ。(The New York Times)」

、と言う評価が書かれていることをお伝えしておきます。

さほど重く受け止めるものでもなさそうな、真実のドラマ!?

当然と言っては何ですが、2018年3月時点では日本公開の予定が無いのが、このアクション系スリラー「7 Days in Entebbe」です。

今でも、憎悪や怒りの巨大な発信源であり続けるイスラエル対パレスチナ問題ですが、日本にとっては対岸の火事とも言える話。そんな中、本作もこちらでは、特定の人に対してしか訴求できない映画になっていそうに思います。

それにしても、製作者がどうして今、この事件を映画化する気になったのか、裏に何か意図でもあるのか、はたまた某結社の陰謀なのか、と言った点には、依然として疑問符が残ります。

戦争もの、中でも特殊部隊アクション系が好きな映画ファンには、そのまま受け取っても楽しめそうな一本ですから、DVDリリースされるのを待って見る事にしましょう。

それではまたっ!

参照元
The Washington Post
SFGate
The New York Times

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ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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