映画「オリエント急行殺人事件」の気になる評価とは?

蘇る伝説の名探偵

どんな時代においても、オッサンは「俺たちの時代はよかった」と言うものです。

その言葉は、便利になりすぎた時代に育った若者の文化を揶揄する目的で発せられるものですが、人類社会が単一方向にだけ発展するものである以上、常により簡単で便利になり過ぎているものなんです。

ただ、不便だった何十年か前の方が、社会の中に趣きが感じられたというのは事実で、それ故、ファッションや映像芸術といった分野には、常にノスタルジー趣味というテーマが横たわっています。

過去の時代はビジネスになる・・・

古い物は、若者の目にとっては新鮮に映るものだし、それが1930年代の文化や当時のセレブの生活などであれば、今の劇場のスクリーンに投影しても充分に金が取れるのではないか、大手映画会社のエリート企画部員がそう考えたとしても、何ら不思議ではありません。

かくして、その社名自体に遺物のような響きのある20世紀フォックス社が、1934年当時の豪華列車での旅を舞台にした名作ミステリーを、21世紀の今に再映画化する段取りとなりました。

その(新作)映画「オリエント急行殺人事件」、映画界の各分野・年代からオールスターキャストを集め重々しくも作り上げられた名作です。そしてそれが故に、プロの厳しい批評眼で評価されている一本でもあります。

今回は、その映画が受けた評価をいくつかご紹介する事にしましょう。

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • ケネス・ブラナー
  • 脚本:
    • マイケル・グリーン
  • 制作:
    • マシュー・ジェンキンス
    • ジェームズ・プリチャード
    • アディツア・スード
    • ヒラリー・ストロング
    • リドリー・スコット…他
  • 出演:
    • ケネス・ブラナー
    • ジョニー・デップ
    • デイジー・リドリー
    • ミシェル・ファイファー
    • ジュディ・デンチ
    • ペネロペ・クルス
    • レスリーオドムジュニア
    • エリオット・レベイ
    • ジョシュ・ギャッド
    • デレク・ジャコビ…他

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オリエント急行殺人事件について書かれた5つの論評

とにかく、この映画は、あまりにも有名すぎるストーリーです。

ノスタルジーが醸し出す外見上の魅力が売り物であり、また、ミステリー映画の結末が必ずしもシャマラン的なツイストで終わる訳でもない事などを考慮しても、この映画の物語に観客を吹っ飛ばすだけの爆弾が仕掛けられているとは思えません。

吹雪の中を走り抜ける列車の情景が、現代のVFXを用いて美しく精密に描かれていると期待しつつも、依然として、何故、20世紀フォックス社がこれを再映画化したのかは、一つのミステリーとして残ります。

そんな本作には、まず、

「アルバート・フィニーを主演とし1974年に映画化された一作と同様、ケネス・ブラナーが監督する今回のバージョンもきらびやかなものである。そして、主演のブラナー自身によるこの演出は、列車の乗り心地にも似て必ずしもスムーズというものではないし、そのシナリオが奇妙に飛躍的な部分もいくつか存在するだろう。とは言え、古典的なサスペンスを好むという人達は、この一作を充分に楽しまれるはずである。つまりこれは、ハイクラスな血統から生まれたポップコーンムービーなのだ。ここでの役者達の演技を味わうのに比べ、はるかに退屈な2時間は他にいくらでも思いつけるはずだ。(The Seattle Times)」

、と、制作・出資会社の大英断が見事に報われた事を示唆する評価があります。

こういう題材(原作のストーリー)は、どこかの誰かにとっては、とてつもなく意味の有るものなはずです。そういうものは、僕ズレ太のような愚かな素人が、安直に口をはさむ事を許さない雰囲気を漂わせているものです。

ただ、この「オリエント急行殺人事件」が商業映画として成立するためには、そういった先鋭的な鑑賞眼だけでなく、一般に理解される娯楽性も必要です。

そんな風な、映画としての作りについて、別のところでは、

「この殺人事件の顛末を既に知っている者にとっては、そこに疑問が提示されたとしても、犯人捜しの作業は殆ど無いに等しいだろう。そして、映画史上でも最も記憶に残るエルキュール・ポアロを、ケネス・ブラナーがここに体現しているとは言え、他のキャラクターの多くを簡単に描き過ぎ、決着の場面では前知識のない観客には意味不明に成り得るこじつけを見せる本作の全体像は、失敗と言わざるを得ないものだ。わずかな証拠を基に最も論理的な結論を導く事が、ポアロに求めらる活躍のはずであるが、監督であるブラナーと脚本のマイケル・グリーンは、アガサ・クリスティによる精密な原作を追いかける事で観客を退屈させる危険性を、あまりにも恐れてしまったようである。オリエント急行が先ず登場するオープニングに感じさせた期待感を、この演出があまり維持できていないという事は実に残念な点だ。(Variety)」

、と言う厳しめな見方もされているようです。

レトロな趣き、というのがこの映画の中心にある最大の求心力な訳で、21世紀のプロダクションデザイナ―の腕の見せ所でもあります。

そんな点については、

「今回のこのリメイクは、見栄えもハンサムで、腰を据えて鑑賞すべき本質的に満足感を与える一本となった。それは、現代の映画ファンに受けるよう飾り立てる事もなく、その急がないペースの中で充分に話を展開してゆくのである。監督も務めたケネス・ブラナーは、1930年代風のムードを、それに見合った豪華さを与えつつ、実に楽し気に描写してみせている。名作ハリウッド映画のリメイクの多くは、現代の観客に合わせようとして、かえってつまずいてしまう事がある。しかし、クラシック作の信奉者であるブラナーは、この懐古的な列車旅行を、参加するに足りる価値のあるものとして再現した。(Detroit News)」

、という風に、絶賛です。

さて、もう一つ、このミステリー映画についての重要なポイントは、エルキュール・ポアロの存在がどの用に作り上げられたのか、という部分です。そんな事を含めて、こちらには、

「20世紀フォックスがアガサ・クリスティをリメイクする第一弾となった本作は、監督と主演も務めるケネス・ブラナーが、‘口ひげを生やした口ひげ’を付けて登場する。(プロデューサーの1人がリドリー・スコットであるので)「エイリアン」に出てきたフェイスハガーを想像してしまうが、この髭が顔からはがれて周辺を駆けずり回るなんて、想像しただけでおぞましい。前回、この小説が映画化された時は、新旧とり混ぜたオールスターキャストを誇ったのだが、マイケル・グリーンの脚本をパトリック・ドイルの邪魔な音楽で飾ったこのコミカルな新作は、もうほとんどコケた一本と言ってよいだろう。本作における真のミステリーは、ジュディ・デンチほどの役者を、どうやったらこのように無駄に使えるかという点である。エンディングでは、続編として『ナイル殺人事件』があり得ると示唆しているようだが、個人的にはそれは無いと思う。(Boston Herald)」

、と書かれてもいます。

この作品を、ホリデーシーズン向けの、アンサンブルキャスト映画の一つと考えると、ミステリーのスパイスが効いている分、よくあるロマンティックドラマより新鮮さが与えられているかもしれません。

そして、オールスターで作られた映画というのは、多くの場合、特別な作風にはなり得ないものです。

そんな角度から、最後に、

「そこには、セレブが集結して撮られた、往年の映画に通じる懐古的な残響が響いているのは確かではある。とは言え、眉をひそめ大げさに振り向くしぐさを要求しつつ、この素晴らしい俳優陣全員について、本作『オリエント急行殺人事件』は派手な無駄使いをしてみせるのだ。その中でも、ジョニー・デップは、彼の演技経歴上でも最も威嚇的なギャングを作り出しているだろう。マイケル・グリーンによるこの脚本は、工夫し過ぎでありつつも、人の心に嘘と損失がどの様に影響を与え得るかを、興味深く織り込んだりもしている。そして、監督としてのケネス・ブラナーは、その周囲をきらめきで囲うように作品を仕上げている。その口ひげ自体が登場人物かのように感じさせるブラナーは、この列車が脱線せずに進行できる唯一の理由となっているのだ。(USA TODAY)」

、と言ったような論評が書かれている事を、ご紹介しておきましょう。

制作元の20世紀フォックスには、このシリーズでアガサ・クリスティー・ユニバースを展開する意図があるかもしれません。現状で、ポアロ映画パート2の「ナイルに死す」のプロジェクトも進行中のようです。

オリエント急行が日本にもやってくる!

最近の日本では、列車旅行が復興している感じがあります。ですので、この映画のプロモーションにリアルな列車の旅をからめ、ミステリーを体感するようなイベントを行ったら面白かったのではないかな、なんて思ったりします。

とは言え、この種類のストーリーの場合は、自分が疑似体験をしてしまった後では、その人が劇場に足を運ぶ事があまり期待できないかもしれません。

とにかく、既に名作中の名作であるという、この「オリエント急行殺人事件」は、どこぞのウェブサイトなんか開かなくてもほぼネタバレ状態だと言えそう。

そんな本作は、公開後2週間が経過の時点で、米国内の累積収入額が5,200万ドル弱(制作予算は推定5,500万ドル)という、それほど素晴らしくもない成績に落ち着いているようです。

日本でのスマッシュヒットを期待しつつ、それではまたっ!

参照元
The Seattle Times
Variety
Detroit News
Boston Herald

USA TODAY

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ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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