凶悪な炎から我が町を守った20人の男達:映画「Only the Brave」について

コミュニティを守る最後の砦

仮に、こちらが平和な理論で武装していても、暴力や災厄というものは勝手に近寄って来るものです。

そして、一度、そういったものに目を付けられたら、無力な僕ら一般小市民に成す術はなく、誰か他のオーソリティの力にすがるしかありません。

そういう事を考えると、時に煽情的な美談として利用される事が有るとは言え、町を守る仕事に就く公務員の方々を描くドラマは、彼らに対するメディアによる大切なトリビュートと言えるのでしょう。それらのストーリーは、どれも後に語り継がねばいけない物です。

たとえ、そのヒーロー達が非常に過酷な状況に対処していたとしても、シナリオと演出を上手く調整した物語の中であれば、全部をセンチメンタリズムにする事も可能ですし、同時に、素晴らしいVFXによって再現された事件当時の状況は、SFとかアクションを好まない正しい映画ファンの人にも、最新映像技術を楽しむ機会を提供します。

そういった諸々の理由から考えても、アメリカを守った現実のヒーロー達の活躍を再現する災害もの映画は、ハリウッドの出資者達にしても充分な収益性が期待できるビジネスだろうと思います。

さて、今回ご紹介する映画「Only the Brave」は、2013年にアメリカ合衆国アリゾナ州ヤーネルで発生した深刻な森林火災に、果敢にも体を張って対処した20人の消防隊員を描く、実話ベースの作品と言う事です。

消火に水さえも使えない状況で、燃え盛る大火に挑んだ男達のドラマ、一体、どんな印象の映画なのでしょうか?

あらすじ

アリゾナ州の小さな街プレスコットで消防隊のリーダーとして働く男性、エリック・マーシュ(ジョシュ・ブローリン)は、毎夜のように、燃えさかる火災の中から襲い掛かる火だるまの熊の悪夢に悩まされています。

彼の指揮する部隊は、グラナイト・マウンテン・ホットショット。街を囲む森林で火災が始まれば、その足で現場へ踏み込んで、森の延焼をくい止める作業を行います。とは言え、水を使えない森林火災で彼らができるのは、地面の草を全て刈り取り溝を掘り、時には自分達の手で燃えそうな草木に火を放つ事で、火災そのものを抑えこむという作業。

そんな勇気とモチベーションに溢れる彼らでしたが、実はその資格は、プレスコット市により認定された、いわゆる‘タイプ2’と呼ばれるもの。と言う訳で、カリフォルニアから派遣された国家資格を持つという隊長の指示には、絶対従わなければなりません。

この土地の自然については誰よりも詳しい、グラナイトの面々としては、上の判断に疑問を感じる事もしばしばです。

さて一方、プレスコットの街に住む青年、ブレンダン・マクドナフ(マイルズ・テラー)は、麻薬に溺れた生活をする自堕落な青年。時折、警察の世話になる彼の人生に最近、望まなくとも大きな転機がやってきました。

ブレンダンは、恋人のナタリー(ナタリー・ホール)を妊娠させ、娘が出来てしまったのです。

自分が親になる事など、まったく考えていなかったブレンダン。しかし、事この期に及んでは覚悟を決めなければなりません。と言う事で彼が向かったのが地元の消防隊オフィスでした。

そこで、マーシュの面接を受ける事になったブレンダン。体力もキャリアも不足している彼でしたが、リーダーのマーシュは、何故かこの若者に興味を持ちます。マーシュには、ブレンダンの姿が自分の若い頃に重なって見えたのです。

かくして、何とか消防隊に入り込む事ができたブレンダンは、それに続く想像を超えたトレーニングにも食らいついて、だんだんと隊員に馴染んで行きます。

そしてそんな折、近くのヤーネルの森林に落雷があり、火災が発生します。これが、後に「ヤーネル・ヒルの火災」と呼ばれる一大森林火災の発端です。

以前から雨が少なく、地域一体が非常に乾燥していた関係で、この火事はどんどんと勢力をましてゆきます。もちろん、マーシュやブレンダンを含む20人のグラナイト・マウンテン・ホットショット隊員達は、直ぐに火災の鎮圧に向かいました。

しかし、その火災こそ、マーシュが繰り返し悪夢の中でみた、あの最悪規模の山火事そのものだったのです・・・

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • ジョセフ・コシンスキー
  • 脚本:
    • ケン・ノラン
    • エリック・ウォーレン・シンガー
  • 制作:
    • エレン・H・シュワルツ
    • ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ
    • マイケル・メンチェル
    • モリー・スミス
    • ドーン・オストロフ…他
  • 出演:
    • ジョシュ・ブローリン
    • マイルズ・テラー
    • ジェフ・ブリッジス
    • ジェニファー・コネリー
    • テイラー・キッチュ

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リアル、ヒロイズム、そして娯楽も提供する一作、気になる評価とは?

ちょっと調べると、同名の映画作品が幾つか(古くは1930年代から)作られてきているのですが、ともあれ、本作の「Only the Brave」と言う短いタイトルは、登場する男達が胸に秘めた毅然としたコミットメントが響き渡るようで、格好良い名前ですね。

そして、リアルな側面を考えた時、ただ印象が良いという言葉だけで語ってはいけない気もする、そんな題材を描いた映画であるのですが、

「この映画『Only the Brave』は、『パトリオット・デイ』や『13時間』で描かれたのと同様に、隊員募集のCMにでも映されそうな屈強な男達による、格好の良い敬礼姿を組み込んで作り上げられた、そんな一作である。そして、の題材には充分な敬意を表していながらも、この作品は単なるプロパガンダ映画ではないし、災害の場面は抗しがたい程スペクタクルであっても、一般的なディザスター映画より深いものを追求している一作だとも言えるのだ。エリック・ウォーレン・シンガーとケン・ノランが書き上げたというこのシナリオは、災害場面でのドラマと日常生活でのそれを、ほぼ同じくらいの時間を割いてつづってゆくものとなっている。(Variety)」

、と言う風に、そのスピリットだけでなくドラマ性にも良い印象が語られています。

この映画のような題材であれば、ほぼ全ての人の心の琴線のどこかには共鳴する事は確実です。そんな作品について別の所でも、

「‘友情’、それが、本作『Only the Brave』におけるキーワードだろう。そこで描かれる、‘グラナイト・マウンテン・ホットショット’というチーム名を誇らしげに掲げる20名の森林消火隊員は、お互いへの信頼、そして自身が身を投じる危険な仕事への愛により、強く結ばれているのだ。この映画は、2013年に実際に発生した大火災に対処した男達の友情と勇気へ、いんぎんな態度ではなく率直な敬意を表明する作品となっている。(The Seattle Times)」

、と言う肯定的な評価を得ています。

この映画のテーマからは、ひょっとすると説教臭くて、ややうっとうしい語り口も想像されてしまうのですが、

「この『Only the Brave』のような映画は、撮影に大変な費用がかかるものでありながら、限られた数の映画ファンだけが関心を示すという種類のものである。そして、この作品は、劇場へ人々を要領良く集められている訳でもないだろう。しかし、これを鑑賞する理由は明白で、それは、森林火災をそこで目撃できるという理由である。ディジタルと実写の映像を、ドルビーアトモスによる音響効果で強化しながら、本作は観客を燃え盛る地獄へと可能な限り接近させてみせる。もちろん、同じような事を行った映画は過去にも存在する、しかし、この映画でのあらゆる小さい描写は、マーベルやDCのコミック系映画が描くどんなものよりも、素晴らしく真実味を感じさせるだろう。(Variety)」

、という事で、一本の娯楽作としても成り立っているようです。

そういったドラマとしての側面には、各キャラクターの内面にあるものをどう反映されるかが、大きなキーポイントでもあるでしょう。それについては、

「ここでは、ジョセフ・コシンスキーの演出の下、ジョシュ・ブローリンとマイルズ・テラーの2人に率いられた大型俳優陣が、それぞれの役どころに、大いなるバイタリティと感受性をも導入して演じている。これ程大掛かりな配役としては、役者達がそれぞれのキャラクターの間にスムーズな協調感を見せてくれるのは、珍しいケースと言える。各役どころは、まさに使い込まれたジーンズの破れ目のごとく俳優たちにフィットしていて、そんな彼らはみな、親しみのもてる地に足の着いた人間像を描き出す。そんな中でも、チームのリーダー役であるジョシュ・ブローリンは、自身のキャリアの中でも最高と言っても良い仕事ぶりを発揮している。(The Seattle Times)」

、と言うように、かなり高い評価です。

現実離れし過ぎたスーパーパワーを描写する事だけにVFXが使われ、その結果が、想定を外した不人気に陥った8月のハリウッドを思うと、この映画のように、真面目な姿勢できちっとした題材を描く映画に、なお特殊効果も活かされているというのは、映画ファンとしてもありがたいポイントではないでしょうか。

その作品の評価、最後に、

「過去に、火災を題材とした映画がいくつも作られている事を見ると、映画会社にとって何かが燃え盛る姿は、観客の心を掴む確実な方法だと考えられてきたようである。そして、そういった先輩作品を見習うように、本作『Only the Brave』は、炎の姿にリアリティと適切な怖さを与えるために、最新の映像的魔術を利用して作られた一本となった。この作品全体は惹きつける力と娯楽性を持っていながらも、同時に存在する、ヒロイズムにおける現実を正確に描く事への拘りは、古典的スタイルでまじめに描かれた同種のハリウッド映画群への、興味深い一致点として感じ取られるだろう。(Los Angeles Times)」

、といった事が書かれているのもご紹介しておきます。

日本の映画市場でも充分訴求力がありそう?

一応、方々で評判の良い本作ですが、アメリカ嫌いな人にとっては、また連中が自分達の正義感を押し付けるプロパガンダを作った、と感じさせる映画なのかもしれません。

でも、コミックのファンタジーではなく、実際に発生して19人の消防隊員の命を奪った過酷な事件を描いている点には、否定し難い重みを感じさせます。

そして、メランコリー好きな国の映画ファンにとっても、町のヒーロー達が命がけで戦うというこの作品は、かなり美味しいものになるはず。

という訳で、日本公開が何時なのか気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、2017年10月末時点では邦題を含めて未定です。

個人的には、こういった作品、DVDダイレクトにはしない方が良いと思うのですが、まぁそういった業界での大人の諸事情には口をはさめません、、、

それではまたっ!

参照元
Variety
The Seattle Times
Los Angeles Times

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ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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