映画「The Snowman」:マイケル・ファスベンダー主演、北欧発のスリラー

マイケル・ファスベンダーを翻弄するノルウェーの殺人鬼

2017年のハロウィーンに向け、いよいよあのジグソウが復活するそうです。

これで、殺戮の展覧会ものホラー映画のブームが再来して、担当する10代の子供達に悪影響が出ないだろうかと心配している、教育関係者の方々も多くいらっしゃる事でしょう。

まぁ、切断されたり破裂したりする人体の描写が、どれくらい映画に必要なウィットとかペーソスになっているかは、演出の意図によって決まって来るものだとは思います。

見ていても、決して趣味の良いとは言えないですが、ある程度までの残虐描写は恐怖を描くためには必要不可欠です。そして、収益性を重要視したハリウッドが、全ての作品でPG13の枠に収まる描写しかしなくなったら、恐怖を描くという文化も衰退・消滅してしまうのでしょう。

それも、また困ります。

なので、エグいホラーを見る楽しみは、とりあえず(R指定で)大人だけの特権とされているのなら、それが映画世界を保つために考案された、賢い均衡点という事になりますね。

さて、今回ご紹介するのは、そういった露骨なアメリカンテイストのホラーではない(はずの)、ノルウェー産のミステリースリラー、「The Snowman」です。

この中でも、女性を無理やり拉致した上で残虐に殺害するという、狂った殺人鬼が登場して、1人の刑事と追いつ追われつのサスペンスを展開するのだそう。

なので一応、血のりの量が多めを何時もご注文される映画ファンにも、それなり訴求する一作のようです。

あらすじ

ノルウェーはオスロ市で刑事として働いている男性、ハリー・ホール(マイケル・ファスベンダー)は、満たされない日々を送っています。

重大な犯罪が極めて少ないオスロでは、刑事の仕事も退屈きわまりないもの。彼は、生きがいを求める代わりに夜な夜な深酒をして、毎日のように二日酔いです。

そんな彼ですが、元ガールフレンドであるラケル(シャルロット・ゲンズブール)と、その息子のオレグ(マイケル・イエーツ)とは、意外と良好な関係を維持していて、オレグは、ハリーの事を父親のように慕っています。

しかし、そんな日々もある時を境に一変しました。このオスロ市近郊において、女性の行方不明事件が多発し始めたのです。さらに恐ろしい事に、その被害者たちが残虐な方法で殺され、発見され始めます。

ハリーは、駆け出しの女性捜査官、カトリーヌ(レベッカ・ファーガソン)とコンビを組んで、このノルウェー発の連続猟奇殺人事件を捜査する事になりました。

その事件は、必ずと言って良いほど、雪が降っている時に起きるようです。そして、遺体の発見現場には、何故か必ず、奇妙な雪だるまが残されている。

それには、何の意味があるのか?、謎が謎を呼ぶうちに、この猟奇殺人班と思しき誰かから、ハリーの下へ様々なメッセージが届くようになります。

どうやら犯人は、ハリーとカトリーヌの行動を、逐一監視している様なのです。

この残虐な人物は一体誰なのか。ハリー達は、一歩づつ、驚愕の真実へと近づいてゆくのでしたが・・・

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • トーマス・アルフレッドソン
  • 脚本:
    • ピーター・ストローン
    • ホセイン・アミニ…他
  • 制作:
    • トーマス・アルフレッドソン
    • エリック・フェルナー
    • ライザ・チェイシン
    • マーティン・スコセッシ
    • エマ・ティリンガー…他
  • 出演:
    • マイケル・ファスベンダー
    • シャルロット・ゲンズブール
    • トビー・ジョーンズ
    • レベッカ・ファーガソン
    • J・K・シモンズ
    • ヴァル・キルマー…他

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雪原に描かれる恐怖の猟奇殺人、その気になる評価は?

8月の「Wind River」から始まって、秋になってから「The Mountain Between Us」と、この「The Snowman」と、雪原を背景にしたスリラー系の映画が、ちょっと立て込んでいる感じのするハリウッド周辺。

人が作った良くないものも、すべて真っ白な雪に全て覆い隠されて見えなくなっている情景は、シンボリズム的に何かの意味があるのか?、などと勘繰りたくなってしまいます。

ともあれ、本来無垢であるはずの純白をおぞましく汚すのは、やはり人間の狂った行動である、というポイントが、本作「The Snowman」の鋭いエッジとなるはずです。

そんな風な、映画的作りについて、まず、

「時間、そして数々の才能を、酷い形で浪費した映画である、この『The Snowman』では、2人の捜査官が連続殺人鬼を追う事になる。そして、監督のトーマス・アルフレッドソンは、撮影中に脚本を待たなければいけない程、スケジュールが厳しかったという事を既に吐露している。その事情は、マイケル・ファスベンダー、シャルロット・ゲンズブール、そして、トビー・ジョーンズといった良い役者を、この監督ならばもう少し良く配置できたはずだという事を示唆しているし、彼であればこそ、この内容が追い付いていない一作を浮揚させることが出来たのだという事実も示している。映画業界が、こういったノルウェー製犯罪フィクションのマニア達から、もっとお金を稼ぎたいと希望している事は理解できる。そして、この原作者ジョー・ネスボの作品の中にも、いくつかはより良い映画の素材があるはずである。したがって、もっと時間をかけ、文化的要素を丁寧にあつかい、さらに小ぶりな作風にすれば、成功する映画が出現するはずであろう。(Los Angeles Times)」

、と言う評価を受けているようです。

実際の所、ベストセラーのスリラー小説を、トーマス・アルフレッドソンを監督に起用して、マーティン・スコセッシをはじめとした人々がプロデュースし映画化するというプロジェクトには、かなりハイブローな意図が存在したはずではあります。

そして、仮に日本市場に持ってきたとしても、その辺が間違いなく訴求ポイントになる本作には、別の所でも、

「最初から最後まで語るべきものもない、この連続殺人鬼映画『The Snowman』が、何故このように退屈なものとなりえたのか、理由を理解するのも難しい。国際的キャスト達が見せた努力により、この映画の中の全ての人は(何故か)イギリス英語を操っている。『裏切りのサーカス』や『ぼくのエリ 200歳の少女』などを残してきた、監督のトーマス・アルフレッドソンにとっては、本作は初めておかした失態であろう。ここで最も良い点となったのは、ディオン・ビーブが映像に収めた凍てつく情景の方である。(Boston Herald)」

、と、まぁ、結構辛い評価です。

確かに、ノルウェーの首都を舞台とするこの映画の台本が全て英語で書かれているのは、これまた大人の事情が見え隠れする様で、ちょっと気になるポイントです。

別の角度で考えてみると、ほっこりし過ぎて退屈にも成り得るクリスマスのホリデーシーズンにスリルを加える目的で、12月初旬に公開時期を設定する事もできたでしょう。

そういう、タイミングの問題も含めて、何かがかみ合わなかったというのが、この映画なのかもしれません。

その批評として、最後に、

「この『The Snowman』は、ジョー・ネスボのベストセラー小説が原作と言われているのだが、だとすると、その小説自体も、プロットが酷い上に、殆どのページが(読みやすさのため?)空白だったのでは思える程、とてつもなく退屈な一作だという事になってしまう。実際、私には、この見るに堪えない映画が、どのようなジャンルに属するかさえ想像する事ができない。トーマス・アルフレッドソンの演出の下、この映画には1970年代のイタリア製スラッシャー映画の雰囲気が見て取れはする。とは言え、この監督の以前の作品が、不穏な空気を上手く醸成していたのに比べて、鮮やかな血のりを描き出しているはずの本作では、逆に退屈感が漂ってしまうのだ。『それでも夜は明ける』や『イングロリアス・バスターズ』でのマイケル・ファスベンダーが、いかに素晴らしかったか思い出せるという人は、本作を絶対に見ない事を肝に銘じてほしい。その時のイメージが色あせてしまうからだ。(StarTribune)」

、と言う事だそうです(ベストセラー小説が、そんなに退屈なワケないですよっ^^)。

期待感が高かっただけに、そこにあるギャップが、より大きな落胆をさそってしまったという事なのでしょうかね。

鮮血を求め、ファン達はここに集う

映画の映像は、プロダクションデザイナーが考えるだけでは出来上がるものでもないです。それを劇場のスクリーンに投影できる形に作り上げるには、様々な分野から多くのアーティストの参加が不可欠。

その意味で言うなら、陰惨な事件が起きた現場をリアルに再現するホラーやスリラーは、映画技術の粋を集めて作る高尚なアートと言えるのかもしれませんね。

映像系アーティスト達に、存分に才能を発揮する場所を提供しているハリウッドは、芸術表現のためのインフラストラクチャーなのです。

そして映画が、資本主義社会におけるビジネスである以上、もっと痛々しく残虐、そしてリアルな描写手法が、これから次々と生み出されていく事も必至です。

ですので、ジグソウの復活ですら、そんな風な明るい未来を感じさせる喜ばしい傾向であるのでしょう。

まぁ、ホラーやSFなどの娯楽映画好きな僕ズレ太ですが、そっち方面のスラッシャー映画関係は、ちょっと遠ざかっていたいと思います。

それではまたっ!

参照元
Los Angeles Times
Boston Herald
StarTribune

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ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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