リーアム・ニーソン対ニクソンの陰謀:映画「Mark Felt」について

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権力の陰謀渦巻く、この世界

どの様な国家の元首でも、最大の関心事項は、領土内の秩序を保つという事です。

そして、どんな世界でも秩序を乱そうとするのは人民達。国家や共同体に対する責任感を持たない彼らは、自らを堕落的な生活に置いているくせに、つねに指導者層に対して疑念や不満を抱き、勝手な被害者意識を内部にため込んでいるものです。

そして、勝手に暴発する・・・

そういった事情の中では、国家の最高責任者達が、一般市民や対抗する政治勢力の言動を傍受・監視するという行為も、充分に‘正当化’されるでしょう。

まぁ、最近ですと、合衆国を中心として稼働する‘エシュロン’なんていう、とても洗練された通信傍受システムがあるそうで、ネットや携帯の通話など、すべて超高速コンピュータが解析、体制に反するような危険な内容を割り出しているそうです。

そして、そのような、ハイテクIT機器が存在しなかった時代、たとえば1970年代にも、合衆国の情報活動部門は大統領による適切な指導の下で、様々な盗聴活動を行っていたのです。

もちろん、21世紀の盗聴に比べればひどく幼稚な道具を使っていたり、場合によるとおっちょこちょいな結果になったりもしました。その代表格と言えるのが、‘ウォーターゲート事件’かもしれません。

今回ご紹介する映画、「Mark Felt: The Man Who Brought Down the White House」は、アメリカ史上ただ一度だけ大統領を辞任に追い込んだという、一大盗聴・陰謀スキャンダルを、さらに裏から引っ張っていた人物を描くドラマだそうです。

しかし、この長い題名、日本の配給会社から裏でアドバイスでも貰ったんですかね?

あらすじ

彼の名前は、マーク・フェルト(リーアム・ニーソン)。アメリカ合衆国連邦捜査局=FBIに、30年余り勤め続けたベテランです。

彼は、ワシントンDCの郊外に小奇麗なマイホームを持ち家族と暮らす、誠実かつ気まじめな人物。合衆国の司法システムに対する忠誠は、けして揺るぐことはありませんでした。

少なくとも、リチャード・ニクソンが大統領となったこの時までは。

ニクソンは、長らくFBI長官として君臨し政局にも影響を及ぼし続けた、ジョン・エドガー・フーヴァー長官を、なんとか失脚させたいと考えていました。

そのため彼らが白羽の矢を立てたのが、フーヴァーの事に詳しいフェルトだったのです。しかし、そういったホワイトハウスからの干渉に、フェルトは憤慨します。

実は、フェルトにはもう一つ、プライベートな心配事も有りました。彼の娘ジョアン(マイカ・モンロー)が、最近家を飛び出したきり帰ってこないのです。

この頃は、若者の間で流行っていたヒッピー層の中で、武装した過激派集団が生まれており、FBIもホワイトハウスもかなり警戒していた時代。

フェルトは、よもやジョアンがその組織に加担しなしないかと、真剣に危惧していました。そんな彼は、本来規則違反である事を承知で、明確な理由もないまま捜査員を動かし、その武装グループを調査したりします。

そして仕事上でも、フェルトの気分を害する事が起きます。1972年に、あのフーヴァー長官が死去した際、ニクソンが送り込んだL・パトリック・グレー(マートン・チョーカシュ)が、それまで実質No2として勤めあげてきたフェルトを押しのけ、捜査局長官の椅子に収まってしまったのです。

フェルトの内部に、上層部に対する不満が蓄積してゆきます。

そんな折、ワシントンDCに、ある騒動が勃発しました。民主党本部にある一室で、誰かが仕掛けたと思われる盗聴器が見つかったのです。様々な状況証拠は、この事件の裏で糸を引く人物が、ホワイトハウス内部に居るという事を強く示唆しています。

これが、世に言う「ウォーターゲート事件」。

もちろんグレーは、ニクソンの意向をくんで、FBIがこの事件の操作から手を引くよう、フェルト達へ圧力をかけます。もちろん、それにもフェルトが反発したのは言うまでもない事。

一方、ワシントンポスト紙の記者ボブ・ウッドワード(ジュリアン・モリス)は、ウォーターゲート事件の初期段階から、内部事情に詳しいスクープを連発していました。そして、その情報は、どうやらディープ・スロートと名乗る人物から得ているようです。

この彼の書く暴露記事も手伝って、民主党本部盗聴事件は全米を揺るがす一大事へと発展して行き、最終的にニクソン大統領の地位を大きく揺るがします。

しかし、あのディープ・スロートとは、いったい誰だったのでしょうか・・・

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • ピーター・ランデスマン
  • 脚本:
    • ピーター・ランデスマン
  • 制作:
    • イェール・バディク
    • デ・キャリー
    • ピーター・グーバー
    • トム・ハンクス
    • マイケル・シェーファー…他
  • 出演:
    • リーアム・ニーソン
    • ダイアン・レイン
    • マイカ・モンロー
    • マートン・チョーカシュ
    • ジュリアン・モリス…他

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大スキャンダルの裏の主役を人物像から描くドラマ、気になる評価は?

まず、先に明言しておくと、ディープ・スロートはマーク・フェルト本人だった事が、現在までに明らかになっています。

そして、この時のもう1人の主役が、第37代アメリカ合衆国大統領である、リチャード・ニクソンだった訳ですが、この人は今写真で見てみても、なかなか画像映えのするお顔立ちの人物である事がわかります。

まぁ、最終的には辞任という不名誉な事になってしまったのですが、そういったダーティなイメージを含めて上手く引き伸ばしたりモディファイすれば、まだまだハリウッド映画のネタにはなりそうです。

しかし、今回の作品の主役は、大統領を追い込んだスキャンダルを動かしていた内部情報提供者について、その人となりから描いてゆくという趣向のもの。

その人物を演じたのが、あの、リーアム・ニーソンという事で、関心度合いも高いと思われますが、それについて、

「毅然とした態度と深みのある声を持ち、そのグレイの頭髪は完璧になでつけられていて、長身でりりしい外見の男性。マーク・フェルトという人物は、リーアム・ニーソンにとってはまさにはまり役である。そして、そのキャラクターは、こぎれいなマイホームで彼が毎朝の支度をする、オープニングの場面から効果的に表現される。彼がダークスーツに身を包み連邦捜査局へ出勤する時には、見ている我々は皆、彼が人生の細かい事までコントロールしている、お堅い人物だと認識する事になるのだ。このワシントンにおけるスキャンダルの初期段階へ回帰する事は、個人個人で色々な意味を持つのだろうが、そこにヒューマンドラマを見出す人間も少ないだろう。脚本・監督を務めたピーター・ランデスマンは、フェルトという人物のなかに魅力を詰め込もうと試みたようなのだが、現実と遠く感じさせる彼の私生活ぶりは、むしろその邪魔をしてしまったと言えるだろう。(StarTribune)」

、と言った批評が書かれています。

マーク・フェルトが2005年に自ら語った事で、ディープ・スロート本人であると発覚した訳ですが、この偽名の持つ、ダーティでミステリアスな響きは、これまた映画の味付けにひと役以上かっているでしょう。

けれども本作は、リーアム・ニーソンにそういった危険な香りのするスパイを演じさせる、というものでもないようで、

「この映画『Mark Felt: The Man Who Brought Down the White House』について、最初に言いたい事とは、『大統領の陰謀』のB面を描くものではないとうい事だ。その映画にあった、描写の手法や、それぞれの設定事項のからみ方などは、本作で見られる要素となっていない。そして2つめに言いたいのは、かなりな割合のアメリカ人が、政府の謀略を自分達のヒーローに暴いて欲しいと考えている、今の時代につながるような要素も、さほど含まれてはいないという事である。そういった事の替わりに、本作があつかうものとは、まさにタイトルに謳われているマーク・フェルトという人物そのものなのだ。そして、自身が発する正義感をスクリーン一杯に投射して、時としてそれが作品そのものにも感じさせる、リーアム・ニーソンは、この役にぴったりな俳優だろう。(The Hollywood Reporter)」

、と言うように、娯楽スリラーではなく固い感じのドラマという印象が伝わります。

1970年代の事件とは言え、未だに風化する事を知らない一大スキャンダルが、このウォーターゲート事件。最近でも、大統領がらみの疑惑に対し‘〇〇〇ゲート’のように、これに引っかけた名称が使われています。

全体的には本作も、盗聴スキャンダルとともに、それが起きた時代のFBI内部を描くという映画だと思うのですが、

「あの名作、『大統領の陰謀』と本作を、完全に切り離して捉える事も難しいし、実際ここでは、それが持ついくつかのシーンや全体の難しい雰囲気に通じるものも感じさせている。といってもやはり、あの名作におけるロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンのコンビに、肩を並べる事は出来ない。本作は、情熱が不足気味のプロ意識により作られた、ドラマ性よりも史実を描いている映画だと言えよう。(StarTribune)」

、と言うのと、他には、

「何人かの良い役者がニーソンを囲んでいる本作だが、彼らの人となりをしっかり描く時間は殆ど割いていない。その中でも、フェルトの情報漏洩行為に気づいていると匂わせる、ジョシュ・ルーカスの役は存在感を見せるだろう。そして、個人的な不満が(情報リークの)主な理由であるとしつつも、同時にこのフェルトという人物を高潔に描いている本作については、歴史家達はかなり意見を持つのかもしれない。以前の作品『コンカッション』でもそうであったように、監督のピーター・ランデスマンは、この中で、権力に立ち向かう事で人々に正義感と過ちのバランス点を見出すよう促す人物を、熱心に描いているのも事実である。(The Hollywood Reporter)」

、などといった評価もあって、やはりニーソン主演の人物描写ドラマとして捉えた方がよい作品のようです。

まぁ、時のホワイトハウスにCIAまで加担したと言われる大きな陰謀事件ですから、映画化するのにも、色々と制約があったかもしれませんね。

聞かれている、見られている、全て知られている・・・

現代人の生活は、まさに盗聴の嵐の中にあります。ネット検索や通販、メールや電話での通話はもちろん傍受されています。他には、ICカードの利用をトレースする事で、あなたの行動パターンはすべてビッグデータの中に記録されて行くのです。

その情報は、しかるべき場所へ集められ解析されています。

だから、もしあなたが、変な方向に角を伸ばそうなんてしたら、それは権力者の画策により事前に切り落とされてしまうのです。あなた自身も、それに気づかないかもしれない程、あっと言う間に。

先日、絶対確かだと考えて購入した馬券が全て外れたのも。パチンコでかなりすっちゃったのも、あるいは、彼女のために買ったバースデーケーキを部屋の玄関でひっくり返してしまったのも。はたまた、焼き肉屋であきらかに自分のテーブルに配られたカルビだけが少ない量だったのも、、、そういった事はすべて、あなたをへこますために当局によって画策された陰謀です。

そんな目に遭いたくないのなら、あなたに出来る事はただ一つ。上層部が決めた階段を、しっかり、粛々とまっすぐ昇ってい行く事だけです。

ただ、その先に、必ず成功が待っているかどうかは、僕にも分かりません・・・

それではまたっ!

参照元
StarTribune
The Hollywood Reporter

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ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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