素敵な2人を惹き合わせたのは命の危機:映画「The Mountain Between Us」について

よい映画を作るのも、やっぱり素材から

一年の季節も押し迫ってくると、ハリウッドとしては、いわゆるアンサンブルキャストによるホリデー映画の準備に余念がない事でしょう。

時代を代表する俳優を、各年代から取り揃えつつも、彼らを定型的シナリオ構造の中に当てはめて制作する、観客の脳にはストレスを全くかけないとうい映画が、こういったクリスマス周辺のドラメディになります。

言ってみれば、料理の腕試し番組で出てきたテーマが普通のネギであっても、それにバフンウニやら伊勢海老とかA5和牛まで盛り込めば、どうやってもグルメになってしまうという、その同じ原理を映画に適用したもの。

とは言うものの、その晩さんにありつくには、まだ5,6週間ほど季節が早すぎますので、今公開される映画の中での材料は、まだまだ厳選され絞り込まれたものとなります。

そして、控えめな中でも、ちゃんとお金を払っても納得できる素材を組み合わせた作品は、やはり特筆されるべき。おそらく、そんな映画の一本が、今回ご紹介する「The Mountain Between Us」です。

この映画、主演にはイドリス・エルバとケイト・ウィンスレットという、大変魅力的なキャストを用意しただけでなく、その2人の関係性が、物語のほぼ全てを支えるという一作らしいのです。

あらすじ

その日、アイダホのとある空港において、ボルチモアに行ける便がないかと、深刻な面持ちでチケットカウンターに詰め寄る男性がいました。

彼の名は、ベン・バス(イドリス・エルバ)。

神経外科医の彼は、これから一人の少年に対して大きな脳外科手術を行う予定が入っているのです。このオペは、少年の命にもかかわる重大なもの。

必死でボルチモアへ帰る術を探る彼でしたが、残念な事に、そのような飛行機は見つかりません。

そんな状況にいらだちを感じていたところ、1人の女性がベンに声をかけてきます。自分も、この空港に足止めをくっているが、そこを抜け出せる案があると言うのです。

彼女の名前はアレックス・マーティン(ケイト・ウィンスレット)、聞けば、フォトジャーナリストをしている彼女は、明日に自分自身の結婚式を控えているのだとか。

とにかく、ワラにもすがるような思いで彼女の案に乗る事を決意したベン。2人が向かった先は、小型機がいくつか止めてある空港エリアでした。その中の一機が、ウォルター(ボー・ブリッジス)という男性の持つチャーター便です。

彼女の案とは、デンバーまでこの小型機を飛ばしてもらい、そこで次の交通機関を見つけるという作戦。なんとかチャーターの話がまとまり、3人と1匹の犬を乗せ、この小型機が離陸しました。

しかし、悪い事の上には、さらに悪い事が重なるもの。なんと彼らの小型機は、突然の突風にあおられて墜落してしまったのです。

墜落した機内でベンが意識を取り戻した時、すでにパイロットはこと切れており、アレックスも目を覚ましましたが足に重症を負っていました。

そして、機外に出てみたベンが見たのは、雪に閉ざされた高山の頂上。そこは、文明社会から隔絶されているだけではなく、森林さえも育たない険しい山の上だったのです。

なんとか、小さな炎を起こして、とりあえず暖を取る事に成功した2人。ですが、もちろん食料や水も限られた分しか持っていません。そしてさらに悪かったのは、このフライトは無届で出発していたという事実。

彼らが遭難した事など、世の中の誰も気づいていないのです。明らかに、このままじっとしているだけでは、事態は深刻化するだけでしょう。

かくして、アレックスの足に出来るだけの応急処置を施し、ベンと彼女は自力で山を下りる決心をします。

果たして、この2人、この絶望的状況から無事に生還する事ができるのでしょうか・・・

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • ハニ・アブ・アサド
  • 脚本:
    • クリス・ワイツ
    • J・ミルズ・グッドロー
  • 制作:
    • フレッド・バーガー
    • ピーター・チャーニン
    • デイビット・レディー…他
  • 出演:
    • イドリス・エルバ
    • ケイト・ウィンスレット
    • ボー・ブリッジス…他

命を懸けた2人のロマンス、気になるその評価とは?

サバイバル系アドベンチャーとして描くなら、例えば、能天気でパーティー狂いな5、6人の若者を雪山に放り込んで、彼らが1人また1人と大自然の猛威に倒れてゆくというストーリーも考えられます。

それはそれで、辛辣な話に成り得ますが、その雪山の斜面にちゃんとした足跡を残してくれるか、やや頼りなく思えるのも事実。

一方、確実と言う以上に実績のある俳優2人を揃えた、この「The Mountain Between Us」は、そういった軽やかなサスペンスとは違った角度で書かれているようで、主演のカップルは、何らかの映画的足跡を残してくれるはずです。

そんな本作については、まず、

「本作『The Mountain Between Us』に見られる成功と失敗の側面は、そのまま、一つの映画を、スター俳優2人で描く事の利益と不利益を代弁しているだろう。そして、ここで言うスター達とは普通の映画スターでも有り得ない。オスカー女優ケイト・ウィンスレットと、魅力と演技力に定評のあるイドリス・エルバのコンビなのである。ただ、本作での彼らが雪山に進み始めれば、あらゆる類のピンチが襲ってくる事は言うまでもないとは言え、それに我々がハラハラするかどうかは(キャスティングとは)別の問題だ。例えば、ブリティッシュコロンビアの山岳の、高木限界以上の領域で撮影されたという映像も、本作のようなシナリオではリアリティを得られず、撮影のその苦労が実る事もない。一方、一つのロマンス映画と考えるなら、ウィンスレットとエルバの競演は、それなりに功を奏しているだろう。本作のように本当にわざとらしい映画においても、この2人のスターは、不自然な感情性にさえも価値を与える事が出来るのだ。(Los Angeles Times)」

、と言ったドライな評価がなされています。

例えば、かなり違う毛色のサバイバル談で実話ベースでもある、『アポロ13』を見ると、絶望的な危機から生還する過程で、いくつかの悪運と幸運が同時に3人の宇宙飛行士に降りかかります。

「栄光ある失敗」とも呼ばれるこの事件からは、まさに事実は小説より奇なり、という印象を得る訳ですが、同時に、現実がそうであるならフィクションはもっと工夫できる、と作家は考える訳です。

そんな点については、

「魅力的なイドリス・エルバも、ケイト・ウィンスレットのよそよそしさと抱き合わせられては、このシナリオのばからしさを打ち消す事も出来なかったようだ。サバイバルものと感情描写の両方を成り立たせるように迫られた結果、監督のハニ・アブ・アサドはそのどちらも掌握できていない。そこには、便利なだけの要素が設定されていて、例えば、主演の2人が救助を求めのろのろ歩く間、恥ずかしいほど安易に危険を表現するための一頭のクーガーが登場したり、また、命を落としそうになる瀬戸際の実に良いタイミングで、一軒の山小屋が登場したりもする。ただ、ここでの雪山の景色はまさに絶景であるし、犬も愛らしい表情を見せると言うのは、良いポイントになっているだろう。(The New York Times)」

、なんて評論も見受けられます。

それにしても、確かに絶景中の絶景と言えそうな雪山の映像は、やはりハリウッドの制作力ならではの映像表現になっているのでしょう。

そして、その美しい映像の中に浮かび上がる2人のハンサムな俳優には、求められる通りのロマンスも用意されているのが、このサバイバルアドベンチャー映画。

まぁ、見る人の目によれば、それは映画的救いでもあり、別の見方からは生臭い堕落とも映るかもしれません。

そんな点も含め、最後に、

「悪い内容に、さらにひどいタイトルを持つ、この映画『The Mountain Between Us』は、ユタ州のハイ・ユーインタス・ワイルダーネスを舞台にした、ロマンス系サバイバルストーリーである。イドリス・エルバとケイト・ウィンスレットは、どちらも魅力的な人物であり、従って、(いろいろあった後)二人がシェルターを発見し逃げ込んだ後は、かつてのボーグの言葉‘抵抗は無益’が意味する瞬間を、劇場に座った観客達は待ち望む事となるのだ。エンディングの場面からは、試写会での反応を考慮した制作陣が、観客の受けを改善するために追加撮影をしたのだろう、という、明らかな印象が伝わってくるのだが、それも効果は上げたとは言えないだろう。(Boston Herald)」

、といったような批評も見られました。ボーグとはスタートレックの悪者で、宇宙のほうぼうで知的生命体を捉え改造して、自分たちの中へ取り込み支配しようとする連中のことです。

ボーグの場合は、他の生命体を同化しようとするのですが、今回の2人の場合は、、、、なんと言うか、合体?

そんな話はともかくとして、2人のカリスマ的俳優をフィーチャーしたこの作品からは、ある程度以上の‘映画的磁力’が発せられているのは確かでしょう。

現代人を待ち受ける危険

もちろん、体温を奪われて命を落とすほどの極寒の地も、危険といえばかなり危険なシチュエーションで、ストーリーにサスペンスを与えるに十分です。でも、この映画のシナリオを見ていると、別の事を考えちゃうんですよね。

人の命とか自分の人生がかかった大事なイベントを控えているなら、何故もっと余裕を持って現地入りしなかったのだろう?、って事です。

日本みたいな国の公共交通機関であっても、ちょくちょく停止するご時世ですから、そういった現代社会のインフラに頼り切る事自体が、ひょっとしたら悲劇の原因にもなるという怖い暗喩なのでしょうか。

もちろん、こういった物語の主人公は、ビジネス的にもお座敷が多くて非常に忙しいからだ、という理由着けは理解できるんですけどね。どんなに優秀な人でも、あくせくしすぎるとミスを犯します。

それまで、ゆとりの殆ど無い道を突っ走ってきたなら、それを踏み外した後は何のサポートもない荒野のような世界に放り込まれるのみです。

今の経済は、他者よりスピードアップする事でしか勝ちが取れない、のかもしれませんが、、、それ自体が本当に意味があるのか、とさえ、僕みたいな者は考えてしまうんです。

とにもかくにも、特に責任の有る人々は、行動には余裕を持っていただきたいと、切に願った次第です。

それではまたっ!

参照元
Los Angeles Times
The New York Times
Boston Herald

ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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