映画「バリー・シール/アメリカをはめた男(American Made)」の気になる評価

犯罪と陰謀と家庭生活

その男は、命をかけて娘を守る父親の顔を持ちながら、正義の秘密エージェントでもあり、同時に冷血な暗殺者でもありつつ、若手の敏腕弁護士の顔も持っています。

さらに彼は、NASCARのレーシングマシンを時速300キロで走らせたり、空軍のエリートパイロットとして、F-14トムキャットによるドッグファイトを演じて見せ、とても活動的な人物で有る事を伺わせもします。

一番最近の彼は?、と言うと、ルイジアナ州バトンルージュに美しい妻との平和な生活を維持しながら、南北アメリカ大陸をまたにかけ、大量のマリワナやコカイン密輸で大儲けしたようです。その一方で政府機関へ麻薬組織の情報を流し、その摘発にひと役買って罪を逃れたりしたとか。

まぁ、全部シナリオの上の話ですけどね・・・

そんな、ハリウッドにおけるカリスマの代名詞とも言える人物こそ、他でもありません、トム・クルーズ師匠。

そのクルーズの最新作は、「バリー・シール/アメリカをはめた男(American Made)」。前出の、密輸組織と政府機関の両方を一時だけ手玉に取って見せた伝説の男を描く、娯楽アクションといった風情の一本です。

しかし、クルーズ兄さん、どんな具合に母国を‘はめた’のでしょうね?

アメリカをはめた男

すでに、公式サイトも立ち上がっているし、従って、映画のあらすじなどは、他のカリスマ級映画情報サイトに詳しく載っているでしょう。

ですので、ここでは、現実のバリー・シールに関する幾つかのエピソードを、軽くまとめる事にしてみます。

アドラー・バーリマン・シール、これが、表題にあるアメリカをはめた男の本名です。彼は、1939年7月16日、ルイジアナ州はバトンルージュに生まれました。

話によると、シールは、15歳の時には学生飛行許可証を取得したばかりか、16歳になってプライベート機の飛行免許さえも取得してしまったそうです。

という事で、彼が見せたこの才能が、後の数奇な人生を、方向づけてしまったともいえるでしょう。

成人後、TWAにパイロットとして入社した彼は、プラスチック爆薬をメキシコへ密輸した疑いがかけられ、同社を解雇されるはめに。そしてここから、南北アメリカをまたにかけた彼の運び屋としての人生が幕を開けます。

1979年までには、相当量のコカインを自分の飛行機で運ぶようになっていたシールは、この年とうとうホンジュラスで逮捕されしまいますが、監獄にいたのは翌80年まで。ちなみにこの時、彼の機で見つかったのはコカインではなく銃でした。

とにかく、この‘刑期’を終えたあと米国に戻ると、彼はいよいよ、あの悪名高きメデジン・カルテルとの取引を始めます。

その商売で、相当な額の収入を得たとされるシールですが、やはり派手にやり過ぎたのか、今度はアメリカ国内で逮捕される事になります。しかも今度は、裁判で懲役10年の実刑判決まで受けてしまった彼。

しかし、伝説のバリー・シールが本領をはっきするのはここから。なんと彼は、自ら米国DEA(麻薬取締局)とコンタクトを取り、麻薬組織の情報を流す代わりに自身の罪を減刑してくれと要求したのです。

当時のアメリカは、ニカラグアに生まれた左翼政権(サンディニスタ民族解放戦線)と、中南米から流れ込む大量の麻薬という、国家的問題を同時にかかえていました。おそらく、シールほど、その地域の裏情報を手に入れるのに適した人材もいなかったでしょう。

DEAは彼の申し出を受け入れ、シールは組織の中の何人かを逮捕するための情報を提供しました。

さらに彼は、1984年に、ニカラグアで仕入れたコカインを、本来の流通ルートではなくフロリダ州にある米空軍基地へと降ろし、米国の対麻薬カルテルの極秘作戦に協力しますが、一方、この作戦の事が、ワシントンタイムズに記事として載ってしまいます。

この事で、DEAは極秘作戦を即座に停止。シールも訴追されますが、サルベーションアーミーでの公共福祉活動が言い渡されるだけでした。

そして、その活動中の1986年2月19日、伝説の麻薬運び人バリー・シールは、組織が送り込んだ殺し屋の手により射殺されてしまったのです。

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • ダグ・リーマン
  • 脚本:
    • ゲイリー・スピネリ
  • 制作:
    • ブラント・アンダーセン
    • レイ・チェン
    • テリー・ドゥーガス
    • ゲイリー・スピネリ
    • フィリップ・モーロス…他
  • 出演:
    • トム・クルーズ
    • ロバート・ファリア
    • サラ・ライト
    • マウリシオ・メヒア
    • アレハンドロ・エッダ…他

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トム様が再びあなたを魅了する作品、気になるその評価は?

実際の略歴を調べてみると、‘アメリカをはめた’と言うより、DEA(そしてCIA)に利用された挙句に自滅した、と言う方が良さそうなのが、バリー・シールの人生だと思います。

とはいえ、サングラスが似合うパイロットスタイルを決めて、カリブ海上空あたりを自家用機にヤバい物を載せて往復する、ちょっと危険なキャラクターは、トム・クルーズにはぴったりではあります。

そんな本作には、

「最近、トム・クルーズは、ウォーレン・ベイティ映画をよく見ているとでも言うのだろうか? 実在した麻薬・兵器の密輸人バリー・シールをかなりフィクション化して作られた映画、この『American Made』は、主演の彼が、自身の手による飛行や、年齢を疑わせる程のスタントを相当量演じてみせるものになっている。そして一方では、質問に答える前に置く一瞬の間や、白い歯をのぞかせて懸念を表しつつ、あらゆる言い回しの中に愛嬌あるスマイルを混ぜるといった、ベイティを彷彿とさせる表現をしてみせるのだ。ゲイリー・スピネリによるこの脚本は、シールの実際の経歴を変更・削除して創作されたものである。それを与えられた本作は、メル・ギブソンの『エア★アメリカ』より上手に作られながら、より興味深く矛盾をはらむよう書かれている。さらに、最近の映画『War Dogs』を凌駕するような、混成的な雰囲気を持つ一本でもあるだろう。(Chicago Tribune)」

、といった評し方が見られます。

また、別の所では、

「トム・クルーズは、ここで演じるバリー・シールが、ならず者の反逆児であり、悪運強く麻薬や兵器の密輸そして資金洗浄などをしていた輩だ、と言う事を、自分一流の真珠の如き煌めきを利用しつつ表現してみせる。誰かが、銃や爆弾の犠牲にならないでいる内は、その物語も実に楽しめるものではある。クルーズをはじめ、監督のダグ・リーマンと脚本のゲイリー・スピネリらは、その物語に中身を詰め込むために、あえて史実に捕らわれる事はしなかったようである。そして、彼らはこの作品を娯楽と愉快さで満たそうとしているのだが、そこから感じられてしまう傲慢な皮肉は、あまりよくない後味を残す結果にもなってしまうのだ。(The Seattle Times)」

、などと書かれてもいますが、トム・クルーズの映画を作ろうとしたら、大々的に彼をフィーチャーしたものにしかなり得ないのというは、おそらく本人も理解しているポイントなのではないでしょうか。

そして、その要求に応えるべく努力も惜しまないというのが、多くの人がトム様について行く理由であるはずです。

そういった点については、

「トム・クルーズを主演にしたこの映画、『American Made』は、爽快で楽しませる作品であり、多くの人がこれを好むだろうし、私自身も良い映画だと感じた。とは言えだ、多くの事件が勃発するこの映画には、奇妙なフィーリングが付きまとうのも事実だ。押しまくるようなそのペースは、結局、そこで何を見させられているのか観客に考えさせぬようにしている、とも思えてしまう点である。キャラクター性も、ストーリーも、おどけたような素振りや全体のシチュエーションでさえ、意味を成す事がないのが本作だろう。その、何かが欠けているという感覚は、この映画の体験自体を相当損ねるものだ。クルーズが出る映画は、それだけでアドバンテージがあると言えるが、それだけに観客達は、彼の役が内包する論理性も想定しようとする。しかし、本作でのそれを追いかけようと試みれば、脚本上の書かれ方とクルーズによる演じ方、そのどちらともかみ合っていないように感じられるだけである。まるで、バリー・シールの伝記映画を作りたいが、同時にトム・クルーズのための作品にもしたいという、両立しない意図を制作陣が抱いたかのようなのだ。(SFGate)」

、という評価がありました。

30余年も前の出来事で、リアリティーも薄くなっているとは言え、アメリカの歴史上でも結構ヤバい出来事(イランーコントラ事件)とも絡むのが、この映画の扱う題材です。

そんな事を思うと、脚本を通す時点でも、それなりな配慮が有っただろうと想像させます。

ともあれ、本質的にはハリウッド的娯楽アクション以外の何物でもない訳で、

「(犯罪組織と諜報部が絡むといったような)陰謀の世界は、監督のダグ・リーマンにとっては馴染みの領域と言えよう。そして本作でのリーマン監督は、主演のトム・クルーズに、その売り物である笑顔を歪めさせたり、そのスター性を大いにお披露目する機会を与えるのを、実に好んでいるようにも伺える。この『American Made』は、見ている側が歴史上の事実に拘ったりしないのであれば、気持ちよく飲み込める作品である。そこでは、トム・クルーズが見せる機敏なアクションと、こちらの機嫌をよくするような演技が、作品からすべての角を取り去ってくれるのだ。(The New York Times)」

、という見方もされていますね。

人気ものには、必ず、アンチ的な意見を呈する人が出てくるものですが、最後に、そんな評論をどうぞ。

「本作『American Made』が抱える問題の一つは、やはりトム・クルーズにあるだろう。かつて、『ザ・エージェント』で共演のレニー・ゼルウィガーが、彼の人間味を浮き彫りにしてみせた事もあるが、その他の映画、『ミッション:インポッシブル』、『アウトロー』、『宇宙戦争』、そして『ワルキューレ』においても、彼はいつも同じ、‘トム・クルーズ’でしかないのだ。正直なところ、55歳というその年齢を考えて見ても、彼が発する大電力級のスマイルや、丁寧にブロウされた髪型、そして茶目っ気を出した聖歌隊のような表情などには、もう飽き飽きである。本作でも、サラ・ライトとの共演場面では、彼の人間性が垣間見えるがそれでは十分と言えないだろう。(Boston Herald)」

との事です。

映画は主演俳優のためにあるもの・・・

という訳で、良くも悪くも、「トム・クルーズのための娯楽アクション」であるのが訴求ポイントとなっているのが、本作「バリー・シール/アメリカをはめた男」のようです。

ただ、米国内での劇場映画人気が、やや湿りがちな時期にリリースとなってしまったのが、8,000万ドルを投じて制作された本作。資金の回収率に関して言うと、期待外れという状態かもしれません。

そして、30人以上いるプロデューサー群の中に、何故かクルーズ様の名前が見当たらないのも、何か、意味が感じられる気がするところです。

何の意味?、まぁ、CIAは関係無いと思いますけどね、、、。

それではまたっ!

参照元
Chicago Tribune
The Seattle Times
SFGate
The New York Times
Boston Herald

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ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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