ホラー映画「フラットライナーズ(Flatliners)」:あっちの世界を垣間見たエレン・ペイジ

全ての終わりの先には何がある?

世の中で、「死」について直接的に言及する事が許されているのは、医者や、一部の学者、そして宗教家くらいのものです。

人が、その人生を終えるという事は、それほどに厳格であり、ある種、絶対的な事象だからです。

そして、この世での命が有効期限を終えた後は、本当に自分という存在は消えてしまうのか?、あるいは、その先にも続きがあるのかは、古くから続く根源的な論争でもあります。

まぁ、死後の世界の実体が誰にも確認できないものなので、諸説紛々とするのは仕方ないところですが、もうちょっとライトに、入り口の部分からこの問題を探求する事もできます。

それが、臨死体験という現象。

世界中で臨床的な事例の報告もあり、かなり現実的な調査・研究が行えそうなのが、人が死ぬ一歩手前で何を体験するかという、このテーマなのです。

同時に、「現実的」で「興味深く」て「ちょっと怖い」、そんな出来事は、そうです、ハリウッド映画の題材としても超ぴったりではありませんか。

と言う訳で、1990年には、この問題が「フラットライナーズ」という娯楽スリラーとして、映画化されました。

今回ご紹介するのは、その21世紀版リメイク作。あっちの世界を覗こうと危険な実験に臨む医学生を、「JUNO/ジュノ」や「X-MEN」でおなじみの、エレン・ペイジが演じています。

あらすじ

コートニー(エレン・ペイジ)は医学生。現在は、とある病院でインターンとして働いています。

彼女には、過去についての消えないトラウマがあります。かつて遭遇した交通事故で、妹だけが命を落としているのです。

そんな体験が、コートニーに死の事を考えさせ、それが彼女の抱く医学への想いに繋がったのは、言うまでもない事。

そんなある日、務める病院の地下室に、奇妙な部屋が有る事を発見したコートニー。その部屋とは、一連の高度な機材が揃えられていながら、誰にも使われていないという妙な空間でした。

彼女は、大学で指導してくれているバリー・ウォルフソン博士(キーファー・サザーランド)のアドバイスも受けながら、とある実験をしようと思いたちます。この地下室を使って、臨死体験の再現実験を試みるのです。

でも、それは一人ではできない実験。コートニーはまず、学友のソフィア(キーアージー・クレモンズ)と、ジェイミー(ジェームス・ノートン)に協力を要請します。

さらに3人は、レイ(ディエゴ・ルナ)、マーロ(ニーナ・ドブレフ)も引き入れ、この5人で臨死実験に臨む事となりました。実験台になるのはもちろん、発案者であるコートニー本人。

最初は1分間の心停止状態を目指した一同、これはなんとか成功します。しかし驚きだったのは、その後コートニーに起こった事です。

どういう訳か彼女は、大昔に呼んだ医学書の内容を簡単に思い出す事ができるようになったばかりか、弾けるはずもないピアノの演奏まで友人達に披露したのです。

コートニーの脳は、臨死体験で再覚醒したに違いない。

同じ力を得ようと、この後5人が、一人ずつ心停止実験の被験者となっていったのは、当然の成り行きです。そればかりか、どんどんと実験の深みにはまって、心停止時間を延長し始めた彼ら。

当初は、それは素晴らしい体験に思えました。拡張された意識の力を感じ、高揚しきった気分で実験をつづける彼らのまえに、ある日突然、身も凍る恐ろしい幻覚が現れるようになるまでは、、、

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • ニールス・アルデン・オプレヴ
  • 脚本:
    • ベン・リプリー
  • 制作:
    • マイケル・ベダーマン
    • デイビット・ブラックマン
    • ロバート・ミタス
    • マイケル・ダグラス…他
  • 出演:
    • エレン・ペイジ
    • キーアージー・クレモンズ
    • ジェームス・ノートン
    • ディエゴ・ルナ
    • ニーナ・ドブレフ
    • キーファー・サザーランド…他

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本当に心臓が止まりそうなストーリー、気になるその評価は?

命が終わる瞬間に、人生の出来事が走馬灯のように蘇ってくる、というのも古くから言われる俗説ではあります。

とは言え、本当にそうなるのか、というのも疑わしい気がするところです。でも、フィクションの中で考えるとすると、その描き方が良ければロマンティックな瞬間に、別の意味でもっと上手に書けるのであれば、人生でもっとも厭な瞬間を演出できる素材だとも言えます。

この「Flatliners」は、もちろん、その後者の方を採用したシナリオで、その瞬間の作用が、誰もが持っていながら触れられたくはない、過去に残してきた罪悪感を呼び覚ます、という趣向なのですが、

「このリメイク版『Flatliners』に関して言える最良の事とは、制作にあたった脚本のベン・リプリーと監督のニールス・アルデン・オプレヴらが、オリジナル作(1990年)のメンバー達を、あたかも欠点のないホラーの達人のように感じさせてくれる、という事だけだろう。(メインの)キャラクター達が臨死を体験し始める前段階に、それなりの舞台設定をしているのは悪くない。そして、オリジナルのキャストであるキーファー・サザーランドがマイナーな役で出演し、新旧2作品の間のつながりを匂わせたりもする。とは言え、ここで学生達に起こる出来事は、27年前の作品で起きたのとほぼ同じであり、映画として世界観が拡張された様子は全く感じられないのだ。(Los Angeles Times)」

、と、まぁ、リメイクなりの評価がされています。

とても若い時期にした、人生最悪である決断や行いが、大人になってからバックファイヤーのように蘇り復讐してくるというのは、実際にはとても恐ろしくストレスのある話です。

なので、あんまり厭な映画になってしまうと、誰も劇場に来てくれない訳で、それはそれで、毒を薄めた脚本が必要だと思います。

そんな本作の味わいについて、他の所では、

「特に、愛されているクラシック作をリメイクする場合、敏感な映画ファン達から敬遠されてしまうというリスクを覚悟する必要が有る。そして、コロンビア・ピクチャーズは、この新しい『Flatliners』によって、その問題を大胆かつ革新的な手法で明らかにしてみせたようだ。1990年のオリジナル作が、愛されたとか名作だったとかではなく、大いに冷笑的に見られたという点で記憶に残っている関係上、今回、オリジナルに対し冒涜的だなどと言う抗議が発生する可能性も低いはずではある。ジョエル・シュマッカーが監督した1作目は、ホラーというより変なトーンのポエムにも思えたのに対し、新しい本作は、いわゆるそのままのホラー映画になっている点は、ここで特筆しておくべきだ。(The New York Times)」

、とまぁ、B級ホラーとしては称賛ともとれる論評もあります。

本作が、10月の今の季節に公開された事の意味は、ハロウィーンに向けたデート需要を満たす映画である、という事です。そして、その観客達のマジョリティは、27年前のオリジナル作の事など、まったく知らない人々でしょう。

そういう場合には、いわゆる‘焼き直し映画’も存在価値があるものです。

さて、そんな本作について最後に、、

「1990年のオリジナル作は、ばからしくも奇妙に説得力のある設定と、才能が認められる若手キャストで作らていた、という事以外に語る言葉もない映画だったろう。そして同時に、ニールス・アルデン・オプレヴが演出をしたという、この死ぬほど退屈なリメークにも、さして語る言葉はみあたらない。今回も、上質な俳優を無駄使いしながら、現代ならではの視覚効果で凄みを加えたというのがこの一本だ。とはいえ、長い時間放置されてきたこの素材を、今わざわざ再映画化する理由が、まったく思いつけないのも事実である。俳優陣は、この素材の中でもベストを演じている。そして、オリジナル作が、誰の目にとっても名作ではあり得ない以上、今回、改善できる要素も山ほど有ったはずなのだが、この映画は、頑固にもその作業を拒否しているのだ。(Variety)」

、といった辛い批評も見られます。

この21世紀版「フラットライナーズ」の基本設定は、とても興味深いものです。そしてそれを、質感あるキャスティングと、上手なプロダクションデザインでまとめあげ、現代的ハリウッド作品に仕上げたのが、このリメイク版だとは言えそうな気がします。

罰せられる事なく、最後の瞬間まで罪は残る

殆どの人間が、必ずどこかで罪を犯し、背負いきれない程の罪悪感を心の奥にしまっています。法律に触れるかどうかは関係ありません。

僕らは、その古い記憶に触れないように慎重に注意しながら、日常生活をただ送っているんです。一部の人が暗闇に見たと言うデーモンやゴーストの幻は、その罪悪感が映像となって出現したもの。

犯した罪は絶対に消えません。なんと言っても、僕らの脳がその時の情報を全部ストアしているんですから。そして結局、僕らは自分自身を処罰する事もできません。

だから、その罪悪感に決着がつくのは、現世での時間が終了する瞬間です。多くの宗教で、その時神仏によって審判が下される、と教えているのも、あながち戯言ではないでしょう。

今、僕らにできる事と言えば、審判の日に情状酌量の余地を主張できるように、より良い生き方を追求する事のみ。

そして何よりも、興味本位で変な実験に参加したりして、記憶の裏側に眠っているゴーストを無為に刺激しないよう努めるだけです・・・

参照元
Los Angeles Times
The New York Times
Variety

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ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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