ジャパンで悪霊にであう恐怖:映画「Temple」について

本当は怖い海外旅行・・・日本編

大抵の人は、エキゾチックな外国の文化に魅力を感じていると思います。

自分のものとは違った生活や行動様式は、どういう訳だかお洒落に見えますし、それ以上に、世界の文化的多様性に触れる事自体が、その人の世界観を間違いなく広げる体験となります。

だけれども、この世には、外国人が安易に触れたり土足で踏み込んだりしてはいけないポイントもあります。例えば、宗教的概念とかその施設などが典型でしょう。

宇宙の真理や人の死についての、神秘的な答えを与えてくれるその場所は、ローカルの人間達から、崇敬と共に、ある種の畏怖をもって接せられているものです。

だから、そこにまつわる‘事情’を知っている人の、真摯なアドバイスを軽視してはいけません。うかつにそのポイントへ踏み込んだら、想像もしていなかった超常的な存在の怒りに触れてしまうかもしれませんから。

まぁ、そんな話、映画のネタとしてはピッタリですけどね。

日本文化のエキゾチシズムに触れようと、そんな曰くつきスポットへと安易に踏み込んだアメリカ人観光客が、闇に潜む悪霊と遭遇してしまうというストーリーが、今回ご紹介する「Temple」というホラー映画です。

あらすじ

ケイト(ナタリア・ワーナー)は、宗教の比較論文みたいなものを書いていて、世界中の寺や神殿を訪ねてまわっている、一種の‘神殿マニア’。

そんな彼女が、いよいよ日本へ行くと決まった時、幼馴染のクリストファー(ローガン・ハフマン)が同行する事になったのも何ら不思議ではない話。なんといっても、日本への旅は彼にとっての長年の夢だったからです。

この2人に、ケイトのボーイフレンドであるジェームズ(ブランドン・スクレナー)も加わり、一行はいよいよ、日本の地へと降り立ちました。彼らがとりあえず向かうのは、オヤマ、という土地です。

3人は、その目的地へ到着、そこに建つ地味な土産屋に立ち寄った時、手書きで文章がつづられた一冊のノートのようなものをクリストファーが見つけ出します。よく調べるとそのノートには、森の奥に眠る古い寺の存在が語られており、その場所は、半分は女で半分はキツネという姿をした妖怪によって、守られているなどと記載されているのです。

もちろんケイトが、是非この寺を訪れたいと主張したのは言うまでもないこと。という訳で、この興味深い建物を目指し歩を進めて行く3人ですが、その途中で出会う人々は、皆、寺に関する良くない噂ばかりを口にします。たとえば、6人の小学生がその場所の近くで行方不明になるという事件が、随分前に起きているとか。

そして、一番大切な事は、日のあるうちに森をでて集落へ戻ってこなければ、本当に身の安全は保障できないという話です。でもまぁ、そんな事にひるむような3人でもなく、山の中へ意気揚々と踏み入ってゆきました。

かなり奥へ入ると、その寺と思しき建物を発見。ケイトのテンションも上がって写真を撮りまくっています。そんな時、建物の中にある仏像を見ようと踏み込んだクリストファーが、床の板を踏み抜いてしまったのです。

落っこちて、それなりに酷い怪我をしたクリストファー。気が付けば時間もかなり過ぎており、この状態では日のある間に山を出る事は完全に無理です。

かくして、この寺で一夜を過ごす事にした3人ですが、まだ本当の事を知ってはいません。闇の中、彼らの背後から忍び寄る、恐ろしい異国の魔物の存在を・・・

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • マイケル・バレット
  • 脚本:
    • サイモン・バレット
  • 制作:
    • エリック・バセット
    • ニール・エデルスタイン
    • 江川 信也…他
  • 出演:
    • ローガン・ハフマン
    • ナタリア・ワーナー
    • ブランドン・スクレナー
    • 竹中 直人
    • 内田朝陽…他

曖昧で危険な境界の向こう側を描くホラー、その評価は?

海外旅行も何度目かになると、ありきたりの観光ルート巡りと買い物だけでは面白くなくなってくるものです。

そうなると、自国からの観光客のいない場所や、土地ならではの風習などを体験しようなんて、誰もが欲張ってみたくなるのでしょう。

でも、自分にとっての常識が、必ずしも通らないのが海外旅行というもの。未知の場所へ踏み込めば、現実的にも、オカルト的にも、想定外の危険に遭遇する可能性が高まるのです。危ない目に遭いたいから歩き回るんだ、なんておっしゃる方もいるかもしれませんけどね。

リアルなスリルを味わう?、と言っても、限度があります。

さて、そんなスリルを疑似的に体験できるのが、本作のようなホラー映画でありますが、この作品については、

「脚本あるいはプロデューサーの役割で、ホラー映画作家としてのキャリアを構築してくる間に、サイモン・バレットは幾つかの面白い映画にその名を連ねてきた。したがって、実際、話題にも乗っていなかった彼の脚本による映画の公開が決まった時、映画ファンの期待感はかなり高揚したはずである。しかしながら、その映画『Temple』について言えば、(おそらく題材に取り上げている)‘Jホラー映画’に対する敬意を表すより、そのスタイルを利用しただけという感じの、生半可な一作に落ち着いてしまったようだ。多分これは、一部の人しか気づかない程に劇場での上映期間が短く、デジタル配信で鑑賞するしかないような映画である。監督のマイケル・バレット達は、言うに及ばないような疑問や、完璧にポイントを欠いた状況説明などと共に各場面の間を流動してゆき、演じる役者達もそれに混乱しているようである。(The Hollywood Reporter)」

、なんて書かれていたりしますが、まぁ、オカルト的事象自体が、本来、一般常識からは外れていてポイントを欠いているものだし、つまりは、理由にならない理由が理由だったりするんです。

また、色々な事の細部が曖昧のままでも全体が上手く回ってゆく、日本文化の正体というのも、外部の文化圏の人間からみると、不思議なオカルトそのものかもしれません。

つまり、はっきり物事を語らないのも、日本の怖い話の良い所です。

なので、そんな風に曖昧でコワい世界を、映像的な趣向とともに探訪できるのが、こういったホラー映画の魅力そのものではあります。

さて、別のところでは、

「サイモン・バレット脚本の、『サプライズ』と『ザ・ゲスト』は、この十年間でもホラージャンルを代表する2作品だと言って良い。ところが、この『Temple』では、彼の手腕のかけらも見られないのである。それは、今回監督デビューを果たしたマイケル・バレットが、演出上の個性を発揮していない事だけが原因ではない。ここでは、恐怖感を醸成する事にも失敗し、かつ、斬新なツイストも無いまま、使い古された言い回しに固執しつづける点にも問題があるだろう。撮影畑出身の監督は、そこにムードを作り上げるための、一定以上の評価すべき映像を提供してはいる。とは言え、この脚本には、何者が何故、登場人物達を脅かしているのかという中身が足らず、不明瞭な構造しか持ち得ていないのである。(Los Angeles Times)」

、という、映画の作りに関する渋い評価も書かれています。

しかし、山の奥にあるという打ち捨てられた古寺についての、都市伝説のような怖い噂を描くホラー映画に、‘明瞭’な描写が必要かどうかも、やや疑問な気はしますよね。

意外と怖いよ、ニッポン

たとえ書籍の中で、整然とした清潔感やおもてなしが魅力だ、と解説されていても、‘未開の国ニッポン’には、まだまだ、正体がしれない存在の言い伝えや、本当は怖い風習などが残っているのです。

それは誰にとっても興味深い話であり、したがって、この「Temple」という映画を観たアメリカ人は、そこにあるミステリアスなムードを求めて、ますます日本へと足を運ぶことになるでしょう。

でも、本当に怖いのは日本の神々。悪気はなくても禁忌に触れると、どんな怒りをかってしまうか分かりませんよ。

まぁ、とりあえずは、神聖な場所をゴミで汚さないよう、気を付けましょう。日本人の僕らもオナジですよ・・・

それではまたっ!

参照元
The Hollywood Reporter
Los Angeles Times

ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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