ピーター・ディンクレイジが探す記憶の鍵:映画「Rememory」について

記憶は消すものではなく見直すもの!?

この宇宙に、「記憶」というものほど神秘的なものはないかもしれませんね。

それは、新聞とか辞書のように情報を平面的に並べただけのものではありません。日常的に機能している僕らの意識とは、また別の次元に一種の格納領域があって、その領域には、僕らが生まれてから体験したすべての事象が、相互に連結して登録されているのです。

それは、複雑に絡み合い影響しあって、僕らの人格までも形成しています。だから、人にとって正しい経験を積み重ねる事は、実に大切なのです。

一方、それが過ちの記憶であっても、死ぬまで永遠に消える事がありません。もし、その記憶を物理的に取り出して検証する事ができたら、人間は秘密を持つことも出来なくなり、人生の意味も変わってしまうでしょう。

そんな話をモチーフにして展開するSF系スリラーが、今回ご紹介する「Rememory」。主役を演じるのは、「ゲーム・オブ・スローンズ」のピーター・ディンクレイジです。

あらすじ

精神科医にして科学者のゴードン・ダン(マーティン・ドノヴァン)は、今、人類史上でも最も画期的と言える発明を公表したところです。

それは、人の脳の奥に閉じ込められ、ゆがめられている古い記憶を取り出して、記録し、目に見える形で再生する装置。

これを有効に使えば、人々の行動や人格を汚染している古くて悪い体験の印象を校正して、その人に幸福をもたらす事が可能です。

今まで、何人かの被験者がテスト的に使用しているというこの機械。その発表を受けて強い興味を示した一人が、建築物のモデル制作をしている男性、サム・ブルーム(ピーター・ディンクレイジ)です。

実は彼、弟の命を奪った過去の事故についての、拭いきれないトラウマに苦しんでいる一人なのです。

という訳で、サムがゴードンの施術に申し込もうかと検討している矢先、まったく想像していなかった事態が勃発します。

なんと、ゴードンが何者かに殺害されてしまったのです。

この事件、サムにとっても衝撃でしたが、もっと悲しんでいるのは、ゴードンの妻、キャロリン(ジュリア・オーモンド)。サムは彼女の下を訪れ、ゴードン殺害の真実を供に暴きたいと申し出ます。

幸い、ゴードンの記憶再生装置は一台だけが残されており、その中には、幾人かの被験者の記憶がストアされたまま。これを紐解けば、彼が死に至った経路と理由をつまびらかに出来るかもしれません。

記憶装置を使い事件の真相を探り始めるサム。彼は関係者を訪ねて事情聴取するという、探偵まがいの事までやりはじめました。

そしてこの事件捜査は、いつしか、サム自身の深い傷にも近づいて行くかに思えます。

果たして、ゴードンは誰に、何故、殺害されたのでしょうか・・・

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • マーク・パランスキー
  • 脚本:
    • マーク・パランスキー
    • マイク・ビュカディーノービック
  • 制作:
    • ロバート・ハルミ
    • ジム・リーヴ…他
  • 出演:
    • ピーター・ディンクレイジ
    • アントン・イェルチン
    • ジュリア・オーモンド
    • マーティン・ドノヴァン
    • エヴリーヌ・ブロシュ…他

個性派俳優ピーター・ディンクレイジのミステリー、気になる評価は?

人の意識へダイブするとか、他人の記憶を疑似体験するという事は、ファンタジー好きの大衆にとって長年の夢と言えるもの。

おそらく、それが完成しない間は、人が人の事を真に理解する事は不可能だとも思えます。同時に、その技術を産業化したら、とてつもない利益(そうですね、フェイスブックの1000倍くらい?)が約束されてもいます。

とにかく、多くの人の夢想の対象であるテーマは、映画の題材としてもうってつけで、そんなテーマを採用した本作についてですが、

「英国のSFシリーズ『ブラックミラー』に、人々の記憶を記録するデバイスを脳内にインプラントするという、不快にして訓話的なエピソードがある。この映画『Rememory』も、同様なアイディアを広げたものではあるが、前者程に響き渡る物語ではなく、監督のマーク・パランスキー達は、本来は可能性のあるこの背景設定を、ただセンチメンタルなだけのスープ(のようなストーリー)の中で、ぐちゃぐちゃに混ぜあわせてしまったようだ。うさん臭い殺人の容疑者達を疑似科学の何だかんだの中に放り込んだ本作『Rememory』は、SFとしても、心理ドラマとしても成り立たない体となってしまった。とは言えこの監督に、テクノロジーものを扱わせると光る部分があるのも、事実ではある。(The New York Times)」

、というような評され方も見られます。

人の意識とは多層的なものなので、それを物理的に処理・記録そしてスクリーン上に再生する事は、結局不可能なのかもしれません。せめて、映画の中くらいでは、それを見てみたいと思う訳ですが、その描き方も思ったより難しそうですね。

まぁ、ただ夢想するのと、一応スジの通ったストーリーに仕上げるのでは、話がぜんぜん違うという事でもあります。

「そこそこのSFドラマである、この映画『Rememory』に与えられた興味深いアイディアは、しかし、(映画として)結実してみせる場面も非常に少ない。主演のピーター・ディンクレイジが見せる、ハートのある演技に加え、思慮に富んだテーマ性と感情性を併せ持っていながら、結末には空気が抜けてしまう印象もする本作は、幻惑的な中で観客の心を掴んで行くという、本来めざしていたはずの作風には、まとまり切っていないのが現実である。(Los Angeles Times)」

殺害された人物の周囲の人間関係を、ディンクレイジが解き明かしてゆく様子に主眼が置かれているとすれば、結局この映画は探偵ミステリーだと言えそうです。

だから、例え架空の装置が登場したとしても、全体像はリアリティから離れ過ぎる事はないのです。

とは言え、その発想自体はSF的で面白そうなものだったのが、本作だと思うのですが、

「監督のマーク・パランスキーは、この2作品目の映画において、より大衆受けする方向になびく仕草を見せた。今回の作品は、亡くなったアントン・イェルチンを含めた、いくつかの格式ある演技を含めながらも、財政的な制限をこなして上手くまとまった一本だと言える。しかしながらである、問題は、演出の足取りを大いに邪魔するその脚本にあるのだ。その精神性はシリアスなのだろうが、いくつもの箇所はでっちあげ感が見られ、あまりにも薄っぺらで合理性のために小さく描かれたそれらは、野心的であったはずの着想を支え切れるはずもない。まぁ、公平性のために申すなら、ここでの制作陣は、映画として描写するにはなかなか克服できない課題へと、あえて挑んだとも言えるだろう。(Variety)」

、と、これもちょっと渋めな評価ですねぇ。

古い記憶をほじくるのと違い、映画でもアートでも技術でも、何か新しいものを創造するというのは、やっぱり簡単な事ではないのです。

とは言え、SF好きでなくても興味を引かれそうな一作、ではあるのが、この「Rememory」だと思います。

記憶をいじる技術が登場したら・・・

その方法はともかく、誰かの記憶を上手く調整する事が出来たら、その人が本当に幸福になるのでしょうか?

過去を変える事はできないし、かなり酷い目にあった過去の記憶でさえ、今においては教訓としての役割を持っているものです。そういう部分を全部含めての、自分という人間が出来上がっているんです。

やはり、人の「思い出」というものは、やたらと手出しできない、繊細で神聖な領域なのだろうと思います。

まぁ、誰かの体験をレコードして、娯楽として販売するという技術が実現したら、それはそれで面白いでしょう。近未来の映画のリリース形態は、そういう本当の意味でのVRになったら、世の中を大きく変える事すら出来るかもしれません。

ちょっと怖い気もしますけど、どうでしょう、、、それではまたっ!

参照元
The New York Times
Los Angeles Times
Variety

ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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