チャニング・テイタム発案の細密な強奪計画とその顛末:映画「ローガン・ラッキー(Logan Lucky)」について

どうせやるなら、人生大逆転を賭けて・・・

人生は上手く行かない事が多いですので、そんな時は、いっそのこと全部をひっくり返して、とんでもない行動に出てしまいたい、と、お考えになる方も多いでしょう。

そうですね、例えば、消費者からズル賢く金を巻き上げている通販会社なんかを襲って、汚れたマネーを全部ぶん取ってやる、なんて出来たら、さぞスッキリするんだと思います。

まぁ、どんな行動に出るにしても、あなた自身には一応、正当な理由があるのですからOK。かもしれませんが、それを行った後、30分間くらい逃げ回った挙句、お巡りさんにつかまって手が後ろに、というのでは困りますね。

人生大逆転のギャンブルには、それなりの周到な計画と準備が必要です。

特に、この映画「ローガン・ラッキー(Logan Lucky)」の主人公であるジミー・ローガン(チャニング・テイタム)みたいに、NASCARの一大レースイベントを襲って現金強奪、なんて大それた事をやるなら、なおさら緻密な計画とスキルのある仲間が必要です。

あらすじ

ジミーは、最近、炭鉱夫の仕事を解雇されたばかり。一度結婚していましたが、今は奥さん(ケイティ・ホームズ)も逃げて、そっちはそっちで既に別の男と再婚をしています。

かつては、ハイスクールのフットボール部の花形、クォーターバックをしていたジミーですが、ケガが元で、彼の選手生命はずっと昔に絶たれています。

そのケガの後遺症も祟ってか、なんとか見つけた土木工事の仕事も、この前クビになってしまいました。その上、唯一の心の支えである愛娘、サディー(ファラ・マッケンジー)も、妻とその再婚相手に引き取られる段取りが進行中。

まさに、踏んだり蹴ったりのジミー。

イラクに派兵中、片腕を失ってしまったというジミーの弟、クライド(アダム・ドライバー)は、ローガン家は呪われた一族だ、なんて事をいって自分を納得させていますが、ジミーは、それほど簡単に人生をギブアップする気になれません。

そして彼は思いつきました。自分が先日まで施設の補強工事のため働いていた、その現場、シャーロット・モーター・スピードウェイで、今度開催される「NASCAR コカコーラ600レース」の当日、地下の現金保管庫を襲って、集められた大金を奪う計画を。

コカコーラ600は、全米でも最大級のレースイベント。当日には、それ相当な額の現ナマが集まっている事は確実。しかも、先に従事した土木作業のおかげで、ジミーは内部の構造も、そしてセキュリティシステムの切り方も熟知している・・・

とは言え、一大強奪計画を実行するには、信頼できるメンバーを揃えないといけません。ジミーがまず引き入れたのは、弟のクライド、そして、とてつもないレースマニアでもある、妹のミリー(ライリー・キーオ)です。

さらに、現金保管庫の壁をぶちぬくには爆薬を使のが必須。その役目のためにジミーが白羽の矢を立てたのが、悪名高き爆弾魔のジョー・バン(ダニエル・クレイグ)でした。でも、現在彼は収監中の身です。

でも、ジミーにはその問題も解決する算段がある様子。

およそ、極悪犯罪などとは無縁な緩いムードを醸し出すジミーの一団。果たして彼らは、このリスキーな計画を見事実行し、スピードウェイの現金を頂いて、ローガン家の呪いを払拭する事ができるのでしょうか・・・

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • スティーブン・ソダーバーグ
  • 脚本:
    • レベッカ・ブラント
  • 制作:
    • ダン・フェルマン
    • マイケル・ポレアー
    • ゼーン・ストッダート…他
  • 出演:
    • チャニング・テイタム
    • ダニエル・クレイグ
    • アダム・ドライバー
    • ライリー・キーオ
    • ファラ・マッケンジー…他

アメリカンな格差解消法で笑いを物語、気になるその評価は?

世の中の負け組が計画した、起死回生の一大強奪計画。そんなものが見せてくれる機微がモチーフとなっているのが、この「Logan Lucky」ですね。

まぁ、上手く行かない事が多いとは言え、自分の家系にかけられた呪いのせいだ、なんて愚痴っても、現実には何も改善しません。

とは言え、そんなフレーズも、世の中や、人の心の歪みを皮肉って、笑いに転換するための道具なのだろうと思います。

そうして皮肉らなければいられない程、世の格差は広がっているのかもしれませんが、そんな角度からは、

「アメリカ映画の中では、幸運(ラック)というものは、階層社会の影響を婉曲に表現したり、それを緩和したりする意味合いを持っている。常識外れで、ばからしくも楽しませてくれる、スティーブン・ソダーバーグ監督の新作映画、この『Logan Lucky』は、公平な運を得ようと躍起になっている者達を描く映画だ。しかし、ここにソダーバーグ監督が見せる階層意識は、作られたものではなく、生み出された雰囲気として表れているだろう。この作品内の誰ひとりとして、政治的な言葉を吐いたりはしないのだが、映画自体の基本設定が、重くて明白な政治問題をきちっと表現しているのだ。(The New York Times)」

、なんて評価も見られるようです。また、映画としての作りこみについては、

「巧妙にしてスマート、そして完璧に作り上げられた本作、『Logan Lucky』は、粗雑な連中が集まって演じる上質な強奪映画という風情である。そして、本作が、自己満足に走るような点が少しぐらい見られたとしても、それは、あなたを楽しませるためのコストだと解釈するべきだ。一般のお笑いもの映画より楽しい出来の本作は、また、スティーブン・ソダーバーグ監督にとっても、いわゆる引退状態からの復帰作という以上の意味を持っているだろう。(Los Angeles Times)」

、なんて評価も受けています。

一応、演出業からは引退していたという、スティーブン・ソダーバーグ監督が、久しぶりに作った犯罪コメディと言う事で、周囲の期待は明らかに高めではあります。

そして、あんまり深く考えずに、演出・脚本・演技の軽妙なコラボレーションと捉えた方が、おそらくより楽しめるはずの一本でしょう。

そして、僕達を笑わせるためには、やはり最終的には演技の力が必要なのですが、

「チャニング・テイタムは、かつてのバート・レイノルズに比べても、10分の1のうぬぼれの隣に10倍のセクシーさを表してくれる。これまでの出演作で、カリスマ性のある身のこなしを見せてくれた彼だが、最近に至っては、明らかに素晴らしい演技力をも感じさせてくれている。今やその魅力は、彼の馴染みやすい存在感から来るというより、誠実さのなかにも皮肉を同時に表現する、その特別な能力から現れていると思うのだ。(The New York Times)」

、なんて、テイタム兄さんが好評価を受けてもいます。

もちろん、突拍子もなければそうである程、こういった映画は楽しめるし笑わせてもくれるのですが、(おそらくオチも含めて)それをいかにまとめ上げるかも重要ですよね。

そんな点でも、最も期待してよい監督の一人が、ソダーバーグさんだと思います。

「およそ悪事など働けなさそうな面々が、NASCARの一大レース会場で強奪を計画する。その恐ろしいくらいに複雑な強奪計画のデティールは、ここでのお気楽な連中に記憶できるとも思えない。とは言え、それもジョークの一部であり、とがめる事もないのだ。洗練された役者達に粗野な役を演じさせる、ソダーバーグ監督が見せる手腕こそが、本作を楽しませる力となっているものだ。そして、話が展開する途中でも我々の目を離させない本作は、監督が、自分の楽しみのためだけに作ったと感じさせもする。だが、彼はそれを、まったく隠そうともしていないのだ。(Los Angeles Times)」

、と言う評価もあります。

それなりの休養を取った後ですので、監督の頭には目いっぱいのアイディアが沸騰していた事でしょう。そして、それを形にしようと言い出せば、いつでもプロジェクトが立ち上がるのが、名監督のネームバリューでもあります。

かくして出来上がった本作は、

「ここでのソダーバーグ監督の演出は、捻りとか仕掛けなどに腐心する事なく、むしろそんな手を緩めてみせる。それは、この登場人物達が、すねたり、もの欲しそうにする様子を、時に笑いを引き起こしながら楽しむ時間を、観客に与えるのだ。古典的な犯罪映画を復活させる目的で、この夏に公開された他の複数の作品では、制作者は、自身の格好良さを熱心に売り込み、作り込みましたと言うような態度や、あえてクラシカルでもあるスタイルを見せつけるのだが、本作の監督は、生真面目さをあえて楽しみ、もちまえの才能をも控えめな姿勢の中に隠している。本作は、そうして生まれた素晴らしい映画だと言える。(The New York Times)」

、そんな一作なのだそうです。

言い忘れていましたが、この映画の脚本家、レベッカ・ブラントさんというのは、多分、架空の人物だと言われています。

映画製作過程では、出演者達はEメールなどを通じてこの人物と話を進めたそう。その相手の人は、UKに住んでいるのではないかと考えられているそうです(ひょっとしたら、複数の人物かもしれませんね)。

そんなミステリーも絡めて、刺激的な映画作りで定評のある監督が描いた、珍妙でアメリカンな格差解消手段が、この「Logan Lucky」という映画です。

いつも思う事ですが、階層や格差(あるいは、戦争も含めて)など、世の中の問題がまったく存在しなかったら、僕達を楽しませる映画の素材も無くなってしまいます。

上手くゆかない事があるから、人生に起伏や刺激があるんです。

格差がひどすぎるのも嫌ですが、やっぱり、完全に平等で平坦な社会は、耐えがたい程に退屈なのじゃないですかねぇ・・・

名監督が一流タレントを集め作った犯罪ドラマ、日本ではどう映る?

その最新作が、常に業界の話題の中心になる個性派監督スティーブン・ソダーバーグ。

その彼が、チャニング・テイタムとダニエル・クレイグという、これまた刺激的な組み合わせを実現したのが本作。

なのですが、いつも通り、日本公開日は未定のようです(2017年8月後半時点)。

これは、間違いなく、絶対に、確実に、日本に紹介される一本だとは思いますが、やはり気になるのは、その時の邦題ですよね。

多分、「ラッキー・ローガン」ですかねぇ・・・

まぁ、どういうプロモーションになるのか、楽しみな所ではあります。

それではまたっ。

参照元
The New York Times
Los Angeles Times

ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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