若き女性捜査官が暴く雪原の鮮血:映画「Wind River」について

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知らぬ土地、知らぬ顔、協力者は約1名

スリラー映画というのは、登場人物を日常ではあり得ない状況へと押し込む事で、おっかないムードを醸成してくものです。

非日常的、という意味で言うと、自分達の文化を守る保守的なコミュニティに、若手のプロフェショナルを送り込み、その人物に一仕事させるというのも、スリラー向けテンプレートの原型でもあります。

小さな事すべてが障害となり、ろくに協力者も居ない環境で活動するのは、どんな人にとっても苦しく、場合によっては怖い事でもありますからね。

見る人に寄っては、その人物が女性だったらなお嬉しいし、たとえば、エリザベス・オルセンちゃんみたいな人なら最高です。

と言うわけで、この映画「Wind River」は、良いスリラーの題材を一通りそろえた作品、とも言えそう。ここでは、保守的な辺境の地に派遣される事になった、若手FBI捜査官をオルセンが演じています。

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • テイラー・シェリダン
  • 脚本:
    • テイラー・シェリダン
  • 制作:
    • ブレイデン・アフターグッド
    • エリザベス・A・ベル
    • ピーター・バーグ…他
  • 出演:
    • エリザベス・オルセン
    • ジェレミー・レナー
    • グラハム・グリーン
    • タントゥー・カーディナル
    • テオ・ブライワンズ…他

あらすじ

そこは、厳寒の荒野。ワイオミング州の辺境に存在するネイティブアメリカン居留地、「ウィンドリバー」。

雪灯りに照らされたある夜、誰もいない雪原を一人の少女がよろめきながら走っています。まるで、何かから逃げている様に。

翌朝、この場所を通りかかったアメリカ合衆国野生動物庁のレンジャー、コリー・ランバート(ジェレミー・レナー)が、その女性の遺体を発見。当局へ通報しました。

当局と言っても、この広大な土地の治安を守る警察官は、署長のベン(グラハム・グリーン)と6人の部下だけ。普通の都会とはかなり事情が違います。

そんな体制では、異様な殺人事件を取り扱う事も簡単な事ではなさそう。

とにかく遺体を調べたところ、酷い暴行を受けた後に殺された事が判明。この土地が、インディアンの居留地である事から、結局、操作の管轄はFBIになりました。

ですがこれも、FBIにとっては小さすぎる事件。という訳で、捜査の担当に抜擢されたのが、まだ駆け出しの捜査官、ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)。

でも、彼女にとっても、都会とは違う厳しい自然の真っただ中、たった一人で捜査を続けるのは困難。という事で、ジェーンはコリーにガイド役を依頼し、2人の協力体制のもとで犯人捜しが開始されました。

実はコリーの愛娘もまた、3年前に誰かに殺害されています。しかも、今回殺された女の子とは親友同士の間柄。彼にとっては、痛々しい記憶を呼び覚まされると同時に、何か嫌な雰囲気を感じる事件でもあります。

コリーの家庭生活は、3年前の事件がもとで崩壊していて、今では、離婚した妻のウィルマ(ジュリア・ジョーンズ)とは、まともな会話すらできません。

果たして、殺人犯はどこに居る誰なのか?、コリーの娘の事件と今回の事件は関係あるのか?、外の世界と違う独特な風習のあるこの土地で、ジェーン達は少しずつ真相へと近づいてゆくのですが・・・

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演技に理解ある新人監督の描くスリラー、気になるその評価は?

特に人見知りや内向的でない人でも、まったく知らない環境に入って見知らぬ顔に囲まれれば、ある程度以上の緊張を強いられるものです。

観客の殆どが、その状況の不快感を記憶しているからこそ、スリラーやサスペンスのシナリオが機能して、見ている側に不安感を植え付ける事が可能な訳です。

同時に、大抵のスリラー映画というものは小型映画で、工夫や抑制によって出来上がっているのが美点となっているもの。だから、人間が潜在的に抱え込んだ恐れを、上手く刺激する事も必要になるんですね。

そういうスパイスの効いたような小型作品から、時にスマッシュヒットが飛び出すのも、映画の世界の面白い所であるのですが、本作の作りはどうかと言うと、

「本作『Wind River』は、2015年の『ボーダーライン』や2016年の『最後の追跡』で脚本を書いていたテイラー・シェリダンにとって、劇場映画監督としての正式なデビュー作である。そして今回の物語は、以前の作品からは何ステップか後退していながら、それらの延長としても出来上がっていて、強力であり、なかなか見ごたえのある一作である。(Chicago Tribune)」

、という評価や、また、

「この、ワイオミング州の辺境にある、犯罪と野生動物の脅威にさらされたネイティブアメリカン居留地は、これまで一定の名を残してきているテイラー・シェリダンが、さらに上質なスリラーを語るための舞台となった。既に脚本家として実績のある彼は、(撮る側と演じる側で)カメラの両側に立つセンスが光る人物であろう。監督を務めた本作では、そこに並ぶ年期のはいった人々の存在感を、確実な手腕でコントロールしてみせている。(Miami Herald)」

、と書かれていたりして、華美な装飾はされていなくとも良質な一作である印象が伝わります。

まぁ、こういった映画には、設定や描写そして演出の自由度がとても重要なはずで、そういった方面で無理な規制を受けない、R指定となっているのもうなずけるところ。

もともと、おもちゃ箱をひっくり返した様な子供むけアドベンチャーなんて、想定もしていないはずの映画ですが、

「この映画は、半分が腕前により、他の半分は着想によって構築された映画である。物語の中、観客達が抱く大きな不安に決着をつけるための長い回想場面があるが、そこも映画要素のミックスが光る部分だろう。それは、良く錬られた構成でありつつ、見るにもキツい場面で、ドラマ性を強化する事より、むしろ観客をそこから放りだしてしまう位のものとなっている。そして、人のむごさをドラマ化する時に、はたしてどの程度の苦痛を描写したらよいのか?、という疑問をも想起させる。とはいえ、ここでの私的な処罰のありようも、『最後の追跡』で見せたものに比べると、かなり説得力の落ちるものではある。(Chicago Tribune)」

、と言う事で、スリラー&ミステリー好きが期待してよい映画です。

、最後に、

「男女間、そしてインディアンから白人の領域に亘る種族主義についてを、シェリダンは多層的なストーリーとして描いてゆく。そこでは、時に乱暴な物言いにより、別の時には武器さえ振りかざしながら、敵がい心が表面化する。この映画の中は、警官による通常の事情聴取が、あっという間に銃を用いた争いへと発展するという世界である。観客同様、そこで不信感を募らせてゆくエリザベス・オルセンは、キャラクターの存在や時間的流れさえも、予想外の方向へと展開してゆく物語のなかで、我々にとっては完璧な疑似体験者の役割を果たしてくれる。(Miami Herald)」

、との事です。

本質的に、文化的な多様性の維持を国是にしているのがアメリカ合衆国です。そして、このストーリーは、米国内にある仮想の国境を超えた先で展開するもの。

歴史的には色々と遺恨も残っているでしょうが、現代では、異文化が隣り合って存在するシチュエーションこそが、良い映画の題材でもあり、結局、ハリウッド映画発展の原動力となっていると思います。

ハリウッドが世界中から才能を集め続けているのは、その状況がクリエーター達にとって魅力的だからなんですね。

惨殺事件を追う美人捜査官、日本では受ける?

宇宙を揺るがすVFXが炸裂する、夏休み映画祭りの最中にリリースされたのが、映画マニアでない人からみてもマイナーな一本であるこの作品。それも、限定劇場公開ではなく、一応、全米一斉公開です。

まぁ、一応、北米大陸も日本と同じ真夏であり、そんな猛暑の中で極寒の雪原をスクリーンに映し出して、若干の涼を提供するというのも、ビジネス的に良い選択ではあります。

そしてもちろん、監督のテイラー・シェリダンと、エリザベス・オルセンとジェレミー・レナーをはじめとする役者達への信頼感が、この作品を押しているのも間違いないでしょう。

いつも通りに、日本公開があるかどうかは未定(2017年8月中旬現在)。

これも、レンタル版ダイレクトになってしまうのでしょうか・・・

それではまたっ。

参照元
Chicago Tribune
Miami Herald

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ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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