殺人許可証を持つ美女:映画「アトミックブロンド(Atomic Blonde)」について

ヤバい時代こそ、スパイはクールに決めろっ

「世界終末時計」という、シゲキ的な名前のものが存在します。

核戦争が勃発して世界が滅びるリスクを、真夜中0時までの残り時間で表したという、一種のサインがこの時計です。2017年8月現在では、破滅までの残り時間は2分30秒を指しています。

これは、世界が、ソビエト側と欧米側に分かれていがみあっていた、いわゆる東西冷戦の頃に、アメリカの原子力系の科学雑誌が掲載しはじめたもの。でも、現実の核戦争は起こらず、1991年にソビエト連邦が消滅して冷戦も終結。これで一安心という事になった訳です。

確かにそれは素晴らしい事だったと思うのですが、しかし待ってください、世の中が完全に平和になってしまったら、小説やドラマの題材探しは相当困る事になりそうですよね。世界中さがしても、軍や武器どころか争い事も、そしてスパイも無くなってしまう。

まぁ、もしそんな風に理想の世界が生まれたなら、作家達は、冷戦が終わる直前の、最も危険でオイシイ時代に題材を求めて、売れる本を書き続けるのでしょう。

ここで紹介する映画「アトミックブロンド(Atomic Blonde)」も、超シゲキ的だった20世紀終盤の、東西陣営がいがみあう最先端の場所に、超イケてる女スパイを放り込んでみた。という、エキサイティングな一本です。

キャスト&スタッフ

  • 監督:
    • デヴィッド・リーチ
  • 脚本:
    • カート・ジョンスタッド
    • アントニー・ジョンストン(原作)
    • サム・ハート
  • 制作:
    • カート・ジョンスタッド
    • デイビット・ギロッド
    • ニック・マイヤー
    • A・J・ディックス
    • エリック・ギッター…他
  • 出演:
    • シャーリーズ・セロン
    • ジェームズ・マカヴォイ
    • ソフィア・ブテラ
    • サム・ハーグレーヴ
    • エディ・マーサン
    • ジョン・グッドマン
    • トビー・ジョーンズ…他

あらすじ

時は、1989年。ベルリンの壁崩壊、その直前の事。

東西勢力がお互いににらみを利かせる冷戦最前線、ベルリンにおいて、諜報活動に従事していた西側のスパイ、ジェームス・ガスコイン(サム・ハーグレーヴ)、が何者かに殺害されてしまいます。

MI6のエリック・グレイ(トビー・ジョーンズ)と、CIAのエメット・カーツフェルド(ジョン・グッドマン)ら2人の指揮官は、この事件を重要視。犯人のあぶりだしを、敏腕美人スパイのロレイン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)に命じました。

クールで美形のロレインは、同時に情報収集と接近肉弾戦のプロフェッショナル。ヤバい緊張感のあるベルリンへ送り込むには、まさにうってつけ。

同時に彼女には、スパイグラス(エディ・マーサン)と呼ばれている謎の男を追う任務も与えられました。この人物は、西側の諜報部員が全て網羅されているリストを持っているらしいというのです。

さっそく、かの地へと乗り込んだロレイン。現場の活動全体を取り仕切っている、デビッド・バーシバル(ジェームズ・マカヴォイ)と合流して、事件の謎をとき明かそうとします。

そんな中、もう一人の美形スパイ、デルフィーノ(ソフィア・ブテラ)がロレインに接近。どうやら、フランスの諜報部員らしいこの美女、何が目的で行動しているのか、なかなか正体を見せません。

時代はまだ、東西冷戦が進行中。行く先々で、敵側の男達に襲われ、そいつらをぶちのめしてゆくロレイン。

しかし、激しすぎる格闘のため彼女の体のアザが増えるにしがたい、周囲の情勢はより混沌と謎に満ちてゆきます。果たして、事件の真相とはいかに?・・・

クールで熱くて美形な女スパイの活躍、気になるその評価は?

現実には、潜伏先のほうぼうでスパイが銃をぶっぱなしまくったら目立ちすぎてしまい、諜報活動に支障をきたすはずなんですよね。

まぁでも、フィクションの中では、金をとれるだけの派手な事件が必要ですので、自動小銃の10丁くらいは許されます。

映画の主人公はいつでもそうですが、スパイは特にハンサムで肉体美の持主。鮮烈かつ超派手なアクションを見せてくれる事になってるのは、僕ら凡人の、スパイに対する勝手なあこがれを満足させるためです。

この作品でも、シャーリーズ・セロンは、相当に体を張った格闘シーンを演じてくれている訳ですが、

「映画『ジョン・ウィック』で共同演出を務めていたデヴィッド・リーチは、ここでも、格闘や爆発シーンを見ごたえある映像に収める才能を発揮してみせている。しかしながら、時として誰が味方で誰が敵か見失ってしまう程に複雑な、ここでのプロットとキャラクター性は、映像性に見合うレベルには決して到達しないのが本作でもある。(USA TODAY)」

、という事ですね。まさに、アクション畑の職人と言えそうなリーチ監督。ですが、「ジョン・ウィック」の方では、は明確に名前がクレジットされていないようです。

さて、ともかく複雑なプロットとツイストは、スパイミステリーに欠かせない要素でもあります。

別の所では、

「シャーリーズ・セロンは、見る者の関心をあっと言う間に獲得し、そこに見せる美しくも静かな緊張感の中で釘付けにする。多くの魅力的な人物が、この画面から滑り落ちて消えて行くなか、セロンはしかし、適度なレベルで観客の関心を維持し続け、こちらの共感を欲しがる様子など見せもしない。この距離感は、彼女の存在に更なるミステリーを加え、また、噴出するバイオレンスをより衝撃的にも見せているだろう。(The New York Times)」

、と言ったような評価もあります。

強烈な主役の周囲には、雰囲気をまとめるための個性的わき役が絶対必要ですが、

「炎の激しさを体現する意味で、ここでのシャーリーズ・セロンは、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でのフュリオサ役を上回る出来だろう。そんな中、このロレインという女性は、スタイリッシュに氷風呂から立ち上がる事から、キッチン用品で男達をぶちのめす場面まで、強固なクールさを崩さなないのである。一方、ジェームズ・マカヴォイは、ここち良い程度のひょうきんさを描写してくれるが、ソフィア・ブテラの存在感には負けている所もあるだろう。(USA TODAY)」

、だそうです。

まぁ、ジェームズ・マカヴォイも出ているというのは、この映画の大きなアピールポイントになっているはずですね。ファンの方は必見でしょう。

予告編映像からして、シャーリーズ・セロンの見せるバトルなどが、この映画の大きなテーマで有ることは明らかですが、

「監督のデヴィッド・リーチは、肉弾戦のための表現性について理解の深い人物で、ここでも、それらを適切に映像に収めている。それが意味を成す時は強調して見せつつ、また、時に視点を引いて、振り回される肉体の動作を描き出したりもする。それらのクローズアップは、バトルの密接度合を、引いた映像はパフォーマンスの質をそれぞれ強調するのだ。まるで、美観を持つ殺陣とバイオレンスが、前に後ろにステップを踏むようである。(The New York Times)」

、とまぁ、バイオレンスシーンのスタイル性にも、一定以上の評価があるのがこの映画っぽいです。

冷戦が過ぎ去ってもスパイアクションは死なず

多分、世界中でもアメリカ人映画ファン達が、一番、スパイのストーリーを愛しているのかもしれません。

おとぎ話だとは言え、一人の強烈なキャラクターを構築して世の中のブームに火を付けやすいのが、ミステリアスなスパイの世界という事でしょうか。

そして、核兵器による破滅のボタンに世界中が手をかけていた時代の記憶は、未だにヒリヒリするような緊張感と、同時になんでもありの高揚感も発信しつづけます。だから、アトミックブロンドの活躍する舞台も、更に広大なエリアが残されているはずです。

ふむむ、ロレイン・ブロートンの活躍は、他のアクション映画の様にシリーズ化されるのでしょうか?

その可能性も強く匂ってくるのですが、一方で今でも「世界終末時計」は破滅の2分30秒前にあります。これは「記憶」ではなく、今そこに有る「現実」。

世界中のスパイの皆さんには、ぜひとも、「デタント(緊張緩和)」のために活躍してもらいたいもんですね。

それではまたぁ〜。

参照元
USA TODAY
The New York Times

ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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