切ない死後の世界をゆくケイシー・アフレック:映画「A Ghost Story」について

肉体を奪われた後も永遠に鳴り響く思慕の残響

依然として、科学的に証明されていないとは言うものの、世界中のほぼ全ての文化圏で、おそらく数万件では効かないくらい、幽霊やゴーストの目撃談が有ります。ですので、そこに、何らかのモノが存在する事は認めざるをえないでしょう。

とはいえ、YouTubeにアップされる、それらの幽霊の姿の多くが、「サダコ」の焼き直しバージョンになっているのは、ちょっと安直すぎる気もします。

だいたい、あの姿は、幽霊としては間違いです。本当のゴーストというのは、この映画「A Ghost Story」に出てくるように、白いシーツに身を隠していないといけません。

あらすじ

この幽霊、そうですね、仮に名を(ケイシー・アフレック)と呼ぶことにしましよう。もちろん、彼は最初からこの姿だった訳ではありません。

もともとの彼は1人の作曲家、(ルーニー・マーラ)という美しい奥さんと、郊外に建つ家で仲睦まじく暮らしていました。

そんなに不幸がみまったのは、2人がちょうど引っ越しを考えていた頃の事。は、本当に突然の交通事故により命を落としてしまったのです。

病院の死体安置室で、白いシーツの下に眠るを確認したが、大きな衝撃を受けたのは言うまでもありません。しかしここで、ちょっと不思議な事が起こります。

気が付くと、は、その病院の部屋に立っていたのです、それも、あの白いシーツを頭から被った状態で。そして妙な事に、周りの人間達は、誰一人として彼の存在に気づきません。

は、ゴーストになりました。

いつのまにか、2人が暮らしたあの家で、悲哀にくれるの姿を見つめている。でも、いくら彼女に接近しても、その目にはの姿は入りません。

の出来る事といえば、電灯をちかちかさせたり、ちょっと物音をたてる程度です。

そうこうしているうちに、も徐々に立ち直り、新しい男性とも出会い、そしてこの家を離れて行ってしまいます。そこに、白いシーツのゴーストだけを残して。

そしては、この家に憑依したゴーストとなりました、、、

幽霊話に新次元を与えたストーリー、気になる評価は?

考えてみれば、いつごろから亡霊という存在が、怨念とか呪いとイコールに捉えられるようになったんでしょうね。古代エジプトとかマヤ文明の頃も、同じようだったのかなぁと思ったりします。

想いが、何らかの形で残るという概念は、大抵の人にとって受け入れやすいものなので、ヒトの中でも特に強い、怒りとか恨みの念が、そのヒトを亡霊にするのだというアイディアへ、自然とつながっていったのかもしれません。

さて、そんな風に形式が固まってしまいがちなお化け話に、ある意味で新機軸を与えたかもしれないのが、この作品でして、

「この映画『A Ghost Story』は、いわゆる、お化け話と言い切れないものだ。むしろ、愛情、喪失、記憶、忘却、そして開放や永遠というものの本質などに思いをはせる、一つのアート系映画としては良く出来た一本だろう。もちろん、偉大、という程でもないのかもしれないが、インディー系映画らしく大胆かつ奇妙で、自然な態度の中に誌的な部分もあり、時に、ひょうひょうとしたユーモアを見せもする。1人の孤独なポルターガイストに捧げるバラードである本作は、明らかに、すべての観客ではなく、その一部に向けての映画だと言えるだろう。(Washington Post)」

、という評価や、また、

「デヴィッド・ロウリー監督によるこの映画『A Ghost Story』は、2度目に鑑賞する時こそ最も良く感じさせるだろう。もちろん、初見の段階でもミステリアスな楽しみは感じさせるし、筋書きもシンプルで追いかけやすいものではある。しかし同時に、この監督は、かつて我々が見せられた死後の世界を描く作品群に、わざわざ追従するという事もしていない。観客は、一度めに鑑賞する時は、それなりの解釈をするだろうが、二度目にこそ、その真の姿が分かるのだ。(Chicago Tribune)」

、なんて事も書かれているようです。

強すぎる思いが有るとき、ヒトは死して亡霊となるのだとしたら、この世でとてつもなく幸せに生きた人が、まだ立ち去りがたくてゴーストとなり、その辺をうろうろするって事だって有り得る話になります。

だから、色んなゴースト話も、もうちょっとバリエーションを増やしたほうが、より信憑性を高められるのじゃないでしょうかねぇ。

ともあれ、独特な視線で一人のゴーストを描いたと言う点で、この作品は特異なものとなっているようで、むしろ、ファンタジーの世界に近い印象が伝わります。

「脚本、演出に加えて、自ら編集もたずさわったというロウリー監督は、場面ごとのリズムや移り変わりに合わせて、そのトーンを様々に変容させてみせる。音楽、撮影とあわせて、殆どの要素が効果を見せているとは言うものの、(後から引っ越してくる男役の)ウィル・オールドハムに、存在の脆弱さや無意味さをわざわざ語らせる部分は、やや、やり過ぎの感もあるところだ。物語が世俗的な空想世界へ飛び込む前に、ケイシー・アフレックとルーニー・マーラが見せるムーディな仲の良さは、この『A Ghost Story』の基本設定を語るのに十分であろう。(Chicago Tribune)」

、大きな分類で言えば、おそらく、ラブストーリーでもありますよね、この映画。

最後に、

「ロウリー監督は、幽霊屋敷についての語り口を限界を超えて発展させ、まったくオリジナルで奇抜な、そして、さほど重くはない程度に不安感のある作品を生み出してみせた。(Washington Post)」

、と言うことで、この「A Ghost Story」、制作から演出&編集に至るまで、なかなか個性的な所が評価されている一本のようです。

アート映画によるゴーストの新解釈に期待

最近では、アマチュアレベルでも自分の「超こわい心霊映像」を自宅で編集し、どんどんネットにアップできる時代になっています。でも逆に、昭和の頃に子供達を震え上がらせた、あの幽霊話が持っていた、一種の風情みたいなのは無くなったとも言えるでしょう。

方々で撮影されるお化けさんたちも、あんまり頑張り過ぎない格好で出没してくれたらいいと思います。

この映画「A Ghost Story」は、そのお化けのコスチュームを、昭和どころか中世のフォークロアくらいまでさかのぼって見せました(ちなみに、白いシーツの下にいるのは、主演のケイシー・アフレック本人)。

そんなシンプルな出で立ちでも、様々な背景を背にして見栄え良く映っている所なんかは、アート系作品の真骨頂なのかもしれませんね。

よく有る、どんどん人が死んでゆくゴーストストーリーより、むしろいろんな面で興味をそそる、そんな一本のようであり、個人的には期待度も大です。

それではまたっ!

参照元
Chicago Tribune
Washington Post

ズレ太

Author: ズレ太

いろんな事がズレまくってるズレ太です。 でも、意外とまじめですよっ! (記事の中で引用している映画批評は、米国の電子版メディアから抽出しての大意翻訳です。)

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